新たなる支配者/NEONE_4-5

「どうしてもここを離れるの?」

「……ああ、俺は学都へ行く。知っているかミーコ? 学都にはインナーユニバースと呼ばれる人の夢を視覚化できるネットワークがあるそうだ。そこでなら、この目も見えるようになるらしい」

「そっかー、……よかったね亜門! ようやく目が見えるようになって。これで五体満足、向かうところ敵なしだね! その、元はと言えば私の所為だけど……」

「ミーコ、何度も言っているが、これは俺が勝手に行動して勝手に付いた傷だ。お前が自分を責める必要はない」

「……うん、ありがとう。あーあ、それにしても亜門が大学かー。私も亜門みたいに、飛び級できるくらい優秀だったら一緒に行けるのになー」

「お前も普通に進学すれば行けるだろ。それに飛び級と言っても、たかだか二年だ。羨むほどじゃない」

「簡単に言わないでよ! 学都の大学って倍率めちゃくちゃ高いんだから。普通に私の成績じゃ頑張っても無理だよ。だから美術とか音楽とかで特別推薦もらわなきゃ」

「お前はセンスがあるから大丈夫だろう」

「センスだけで推薦貰えるなら苦労しませーん。私は亜門みたいなインターネットおばけじゃないんですー。それに……二年も会えないんじゃ、やっぱり寂しいよ」

「そうか……そうだな、学都じゃ外とのやり取りも制限される。閉鎖的になるのを恐れるという気持ちはよく分かる」

「いや、全然分かってないよ」

「だが安心しろ。お前が学都を訪れるその日まで、俺は知識を磨く。ちゃんした両目で、お前の姿を見る。だから、ミーコも頑張れ」

「……亜門はズルいよね。そういうこと言われたら、私も頑張るしかないじゃん」

 取り留めのない会話。そんなものすら鮮明に覚えていた、風が涼しい秋の日の出来事。

「ねぇ、何で亜門はそんなに頑張れるの?」

 核心を突く質問だった。答えは決まっていた。しかし少し考えて口を開く。



「……人の役に立ちたかったからだ。俺は」



 少し照れて言う。

 ――お前のように、とは終ぞ言えなかった。

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