第03話 替え玉

 駅の無料自転車置き場に自転車をおいて、徒歩10分。


 「ついたわ!ここよ」


 「ここ?」


 年期の入っている小奇麗な白い看板に茶色の屋根のラーメン屋。


 「ラーメンはつみどりよ!」


 「並んでるね。有名なの?」


 「ええ!替え玉無料で有名なのよ!」


 「そ、そうなんだ」


 「並んでいる間に作戦会議よ!迷惑にならないように小声で話すわね!」


 ――――――――――

 ラーメン770円

 ――――――――――

 (内訳)

  麺100円

  スープ200円

  チャーシュー100円

  調理料100円

  合計 

   500円

 ――――――――――


 「わかった。770円-500円=270円 替え玉を3玉頼むんだね」


 「そうよ!私たちって、もう阿吽の呼吸ね!」


 券売機の前に立ち、ラーメンのボタンを押そうとすると。


 「待って。式部さん」


 「な、何?」


 「ラーメン屋の券売機って、一番左上がおススメだって聞いたことがあるんだ」


 スッと左上のボタン、ラーメンの左隣のボタンを見る。


 味玉ラーメン880円


 「くっ・・・。ラーメン屋の味玉なんて、美味しすぎるに決まってるじゃない!しかもおススメってことよね。ど、どうしよう・・・」


 「落ち着いて、まだ席はあいてないから、ゆっくりで大丈夫だから」


 「わかったわ」


 ピッ


 「押しちゃったわ!味玉の魅力に負けて!無意識に押しちゃったわ!」


 「僕も味玉ラーメンにするよ。食べずに後悔するより、食べて後悔したいから!あ、丁度、隣同士の席が空いたね」


 「そうよね食べないと後悔するわよね!じゃ、注文がくるまで計画を整理するわね」


 ――――――――――

 味玉ラーメン880円

 ――――――――――

 (内訳)

  味玉60円

  麺100円

  スープ200円

  チャーシュー100円

  調理料100円

  合計 

   560円

 ――――――――――


 「うん。880円-560円=320円 20円微妙だけど替え玉を3玉でいいよね?」


 「そうね!それでいきましょ!」


 「ひとつ聞いていいかな?」


 何かしら?


 「ええ。なんでも聞いて」


 「調理料って・・・何?」


 さすが宣孝のぶたか君!いいところに気づくわ!


 「調理してくれる代金よ」


 「どうして100円なの?」


 「美容院に月1度行くでしょ?それが3000円なの。だから日割りして1日100円よ。料理に対する技術料ね」


 フフフ。完璧でしょ!


 「へい、おまち!味玉ラーメン」


 「来たわ!食べましょ!」


 「「いただきます」」


 ヘアゴムで髪をとめる。


 まずはスープ。濃厚な豚骨。うまい!次に麺。濃厚な豚骨スープを絡みつかせ広がる味わい。美味しい!!


 レンゲに味玉をのせる。


 わざわざ、あなたを頼んだのよ。期待を裏切らないでね!


 箸で二つに割って半分を口に入れる。


 ・・・おいひぃ。


 そして、麺!スープ!チャーシュー!麺!スープ!


 「待って。式部さん」


 「何?味玉の感想がほしいの?当たりよ!大当たりよ!」


 「味玉当たりだけど、そうじゃなくて、替え玉頼むならスープ飲み過ぎると」


 「そ、そうだったわ!ま、まだ大丈夫よね」


 「うん!大丈夫だよ。食べ終わってから替え玉頼むとスープが冷めちゃうから、そろそろ替え玉も頼んどく?」


 「そ、そうね!」


 「おじさん!僕と彼女に替え玉お願い!」


 「あいよ!」


 早くしないと替え玉きちゃうわ!


 麺!チャーシュー!麺!のりぃぃぃ


 「おまち!」


 替え玉がきたわ!まだまだいけるわ!


 麺!チャーシュー!残りの味玉!


 おいひぃぃぃ。


 麺!麺!麺!麺・・・


 あれ、まだ、1回しか替え玉頼んでないのに・・・。


 「先に2玉目頼むね」


 「ええ。そうして・・・直ぐに追いつくから」


 思ったより、お腹がはるわ。これが麺の威力・・・。


 「僕は2玉目で限界だなー。2玉でもいいよね?」


 「ええ。もちろんよ。戦略的撤退は必要よ」


 「おじさん!替え玉!」


 「あいよ!」


 「僕の知ってるラーメン屋は替え玉が30円なんだよね」


 後で教えて!そこに行きたいわ!今は無理だけど!


 「きっと赤字ね。それは店主の心意気に感謝しないとね」


 「おまち!」


 「ありがと!」


 さぁ!私も残りの麺を食べるわよ!美味しいものこれくらい平気よ!


 ◇ ◇ ◇ 宣孝視点

 

 駅の無料自転車置き場に自転車をおいて、街をデート。


 「ついたわ!ここよ」


 「ここ?」


 年期の入っている小奇麗な白い看板に茶色の屋根のラーメン屋。


 うん。こうなると知ってた。


 「ラーメンはつみどりよ!」


 「並んでるね。有名なの?」


 「ええ!替え玉無料で有名なのよ!」


 「そ、そうなんだ」


 「並んでいる間に作戦会議よ!迷惑にならないように小声で話すわね!」


 ――――――――――

 ラーメン770円

 ――――――――――

 (内訳)

  麺100円

  スープ200円

  チャーシュー100円

  調理料100円

  合計 

   500円

 ――――――――――


 「わかった。770円-500円=270円 替え玉を3玉頼むんだね」


 「そうよ!私たちって、もう阿吽の呼吸ね!」


 パッと輝く式部さんの笑顔がまぶしい。


 券売機の前に立ち、式部さんがラーメンのボタンを押そうとする。そのボタンの配置を見て僕はとっさに式部さんの行動を止めてしまった。


 「待って。式部さん」


 「な、何?」


 「ラーメン屋の券売機って、一番左上がおススメだって聞いたことがあるんだ」


 スッと左上のボタン、ラーメンの左隣のボタンを見る。


 味玉ラーメン880円


 「くっ・・・。ラーメン屋の味玉なんて、美味しすぎるに決まってるじゃない!しかもおススメってことよね。ど、どうしよう・・・」


 「落ち着いて、まだ席はあいてないから、ゆっくりで大丈夫だから」


 「わかったわ」


 ピッ


 「押しちゃったわ!味玉の魅力に負けて!無意識に押しちゃったわ!」


 おちゃめ!おちゃめ可愛い!!!


 「僕も味玉ラーメンにするよ。食べずに後悔するより、食べて後悔したいから!あ、丁度、隣同士の席が空いたね」


 「そうよね食べないと後悔するわよね!じゃ、注文がくるまで計画を整理するわね」


 ――――――――――

 味玉ラーメン880円

 ――――――――――

 (内訳)

  味玉60円

  麺100円

  スープ200円

  チャーシュー100円

  調理料100円

  合計 

   560円

 ――――――――――


 「うん。880円-560円=320円 20円微妙だけど替え玉を3玉でいいよね?」


 「そうね!それでいきましょ!」


 「ひとつ聞いていいかな?」


 「ええ。なんでも聞いて」


 な、なんでもって女子に言われるとドキッとするよ!


 「調理料って・・・何?」


 調料じゃないんだよね?


 「調理してくれる代金よ」


 「どうして100円なの?」


 「美容院に月1度行くでしょ?それが3000円なの。だから日割りして1日100円よ。料理に対する技術料ね」


 以外に考えてるんだ。でも100円じゃ食べていけないよ!880円-材料費(場所代含む)=調理料だと思うな。言わないけど!


 「へい、おまち!味玉ラーメン」


 「来たわ!食べましょ!」


 「「いただきます」」


 髪をかき上げヘアゴムで髪をポニーテールにする式部さんに目が釘付けになり、心臓が飛び跳ねる。


 いけないけない見入ってしまった。まずはスープ。濃厚な豚骨。麺!麺!麺!


 味玉にかぶりつく。


 うまっ?!


 そして、式部さんのどんぶりを見るとスープがだいぶ減っている。


 「待って。式部さん」


 「何?味玉の感想がほしいの?当たりよ!大当たりよ!」


 「味玉当たりだけど、そうじゃなくて、替え玉頼むならスープ飲み過ぎると」


 「そ、そうだったわ!ま、まだ大丈夫よね」


 あきらかに3玉はいけないけど、今までの式部さんが食べる量を考えれば問題ない。


 「うん!大丈夫だよ。食べ終わってから替え玉頼むとスープが冷めちゃうから、そろそろ替え玉も頼んどく?」


 「そ、そうね!」


 「おじさん!僕と彼女に替え玉お願い!」


 さりげなく。そう!さりげなく彼女アピール!!


 「あいよ!」


 式部さんが麺をすすりだす。僕も目の前の麺を平らげるためにすする。


 麺!麺!麺!チャーシュー!


 1枚のチャーシューをまるまる口に入れるのが好きだ。


 もぐもぐ


 「おまち!」


 替え玉がきた!


 それにしても美味しいなドンドン腹におさまっていく。


 「先に2玉目頼むね」


 「ええ。そうして・・・直ぐに追いつくから」


 式部さんのいつものセリフ。


 「僕は2玉目で限界だなー。2玉でもいいよね?」


 そして僕のいつものセリフ。


 「ええ。もちろんよ。戦略的撤退は必要よ」


 「おじさん!替え玉!」


 「あいよ!」


 「僕の知ってるラーメン屋は替え玉が30円なんだよね」


 「きっと赤字ね。それは店主の心意気に感謝しないとね」


 式部さんの言う通りだ。こんなに美味しい料理をこの値段で提供してくれるんだから感謝しないと。


 「おまち!」


 「ありがと!」


 僕が食べ終わるころ、彼女も食べ終わったよ。


 その後?


 真っ直ぐ家に帰りましたがなにか?

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