第2話 火だね
その騒動は、ある人間の何気ない遊びからはじまった。
ある人間は、発見した。それは現代の化学では”摩擦熱”と呼ばれている現象だ。
彼は、石や木を接触させ何度も摩擦させると熱を帯びてくることに気づいた。
その日は少し肌寒かった。もしかしてこの摩擦熱を得ることで暖をとれたりしないか。
彼はとりあえず板状の木片に太めの木の枝の先を回転させながら擦りつけ、その動作を連続させてみた。
その様子を帝国のゴリラたちもみていた。
きほんゴリラたちは道具を使うということがない。決して知能が劣っているわけではないが、ゴリラたちは、集団の維持のために使える力を使っていた。
人間が、簡単な道具を使って遊ぶのをみるのはいい暇潰しになる。
たまに木の棒で高いところに成ったフルーツをおとしてくれることもあるからだ。
ゴリラたちは人間のことを知恵のある猿という意味で知恵猿と呼んでいた。
何時間経っただろうか?
人間が摩擦し続けたその木片からは徐々に煙が上がってきた。
俄然テンションが上がってきたのは人間だ。
彼は摩擦のスピードを早めた。
やばい脳汁がでてくるようだ。
ボゥ!
彼が木片に与え続けた運動エネルギーは熱エネルギーに変換され、やがて発火するほどに大きなエネルギーになった。
「ウホ?ギャー!」
「火だ!知恵猿が遊んでいた木から火が上がったぞ!」
ゴリラを含めあらゆる動物にとって火は恐怖だ。稲妻より生じる火は山を焼き、火山から生じる火はすべてを焼き尽くす。
彼らがもっともおそれるべきそれを、知恵を持ち始めた猿たちは、平気な顔で扱い始めたのだ。
はじめて自分の手で火を起こした人間はゴリラたちの動揺も気にせず暖を取り始めた。
めらめら燃える小さな炎は、ゴリラ帝国の不協和音をもたらすことになる。
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