ラブコメに問題発生
第9話 男からは嫌われる
4月24日、土日をまたぎ久しぶりの学校
朝起きるのはとても辛い、眠いのもそうだがこれから1週間が始まると思うと憂鬱である。
「健二にい!起きてください、遅刻しちゃいますよー!」
ドア越しに聞こえるのは聖奈の声だ。いつもの事だが聖奈が起こしに来てくれると、自然と上体が起きる。
今日は少し寒いなー。そんなことを考えながらリビングに向かった。
「健二にい、わたし今日 日直なので先に出ますね」
日直がなくても聖奈はいつも俺よりも早く家を出る。もちろん健一兄さんも先に家を出る。
「お、おう」
いつもの返事をして、朝食をとりながら昨日のことを考えていた。
鮫島さんの昨日のあれはなんだったのだろうか。でも、もしそうだとしたら・・・。
「行ってきます」
もちろん家には誰もいない。これも俺の日常である。
そしてしばらく昨日のことについてもう一度考えた.。
「なにボッーとしてるのよ!それとも寝ながら歩いてるの!?」
「ご、ごめんなさい」
いきなりだったので、とっさに誤ってしまった。
「別に謝らなくてもいいけど・・・おはようヨコッチ!」
なんかいつもと雰囲気が違うな。調子でも悪いのか?
「おはよう佐倉、てかお前家この辺なのか?」
「あれ、言ってなかったっけ!わたしの家、ヨコッチの家の近くなんだよ!」
「そうなのか?」
「う、うん」
あれやっぱりなんかおかしい。いつもだったら「なんで疑問形!?」とかつっこんできそうなのに、昨日帰った後何かあったのか?
俺と佐倉のその後の会話はなく、無言のまま学校に到着した。
「おはよう横田くん」
教室に着くと鮫島さんの方から挨拶をしてくれた。
嬉しくてついニヤニヤしてしまったがガッツポーズは我慢した。
「おはよう!」
少し大きな声を出してしまった。
周りの視線が集まる。中でも男子の視線が多かった。
これは俺の予想だが、鮫島さんは普段男子とはあまり関わらない。つまり鮫島さんの方から挨拶をされた俺は現在、絶賛嫉妬され中なのである。
「あ、佐倉さんもおはよう」
「う、うんおはよう鮫島さん」
なんか2人とも気まずい様子だった。やっぱり昨日あの後、何かあったに違いない!
「な、なぁ2人ともなにかあったのか?」
「えっ、えっとそれは、特になにもないですよ。ね、ねぇ佐倉さん!?」
「う、うん。な、なにもないよ」
「そうか、ならいいんだけど」
先程から明らかに佐倉の様子がおかしい。
なぜだがどうしても佐倉の様子がおかしい理由が知りたくなった。
「連絡します。文化祭実行委員の人は今すぐ職員室前に集まって下さい!繰り返します、文化祭実行委員の人は今すぐ職員室前に集まって下さい」
珍しく放送が流れた・・・それも文化祭実行委員の招集という、自分に関係のあるものだった。
「横田くん行きましょうか」
「う、うんそうだね。行こっか」
鮫島さんと2人で歩くのは緊張する。なにを話していいのか分からず、そのまま面白いことも言えず、無言のままたどり着いた。
職員室前にはもう人が集まっていた。
「これで全員だな」
聞きなれ慣れたこの声は健一兄さんである。生徒会長として実行委員に話しがあるらしい。
「朝から集まってくれてありがとう、文化祭実行委員に話しがあって集まってもらった。音々、説明を頼む」
「はい!」
そう言われて返事をしたのは、副会長の桜木音々。俺と同じ2年で次期生徒会長になるであろう人物で人当たりも良く成績も優秀それに加え美人で、学校では有名人である。ついでに生徒会長の健一兄さんとこの副会長の桜木音々は付き合っているのでは、と噂されているが本当のところはわからない。
「今回集まってもらったのは、夏休み前に行われる文化祭を成功させるために・・・」
そこから長い話しが続いた。
簡潔にまとめると文化祭実行委員長を今週までに決めて欲しい。また立候補や推薦などもあったらして欲しい、とのことだった。まぁ俺には縁がない話だ。
教室に戻るとホームルームが始まっていた。
「おはよー!実行委員、お疲れ様!」
そう言ってきたのは担任の清水先生だった。
「おはようございます」
俺と鮫島さんは反射的にほぼ同じタイミングで挨拶を返した。
「全く、仲がいい2人だなー!」
清水先生は笑いながらおちょくってきた、が周りの男子の視線が痛い。
ホームルームが終わり先生が教室を出ると、男子たちは一斉に騒ぎ始めた。
「まじなんなんだよなあいつ」「ほんとそれな、まじうざくねインキャのクセにな!」
ヒソヒソ話をわざと大きな声で言っているのだろう、こちらまで聞こえてきた。
女の嫉妬も怖いが、男の嫉妬も怖い。
すると1人の男子がこちらに向かってきた。
「なぁお前、鮫島さんとはどういう関係なの?弱みでも握ってんのか!?」
「鮫島さんとはただの席が隣で、委員会が同じで、それだけの関係だし、それに弱みなんか握らなくても鮫島さんの方から話しかけてくれるんでね」
あえて挑発するようにニヤリとしながら言ってみた。
全く最近の若者は俺みたいなのが美人と一緒にいるだけでこうだもんな。
きっとこれが俺じぁなくイケメンの・・・健一兄さんだったらなにも言わないだろうな。ひどい世の中だ。
「そうか!なら一つだけ忠告しといてやるよ!お前みたいな調子乗ったインキャがクラスにいるとこっちまで雰囲気悪くなるんだよ!お前あんまり調子にのるなよ!」
俺にそう告げると自分の席に戻り近くの男子と話し始めた。
なんの権限があって俺に忠告しているのだろうか。
それに調子乗ったインキャって・・・お前、インキャのことなんもわかってないな!インキャってのはな、やっぱりやめておこう。
それにインキャがいるとなんで雰囲気悪くなるんだよ。空気みたいなもんなんだから雰囲気とか関係ないでしょ!仕方ない、しばらくはおとなしくしておこう。
鮫島さんとも話すのは極力避けておこう。残念だけど.・・・。
「どうかしたんですか?」
一連の流れを見ていた鮫島さんが俺を心配してなのか、尋ねてきた。
「いや、なんでもないよ」
不思議そうな顔で首をかしげる鮫島さんに対し、俺に今にも飛びかかってきそうな殺気を放っている先程の男子。今のは俺のせいでもなんでもないだろ!
その日、俺はクラスの男子を敵にまわしたらしい。休み時間が俺の悪口でうまった。それにしてもみんなやることないんだな・・・せっかくの休み時間みんな無駄にしてたな。俺はもちろん寝たフリをしてたけど。
帰り道、歩いていた俺を早歩きで抜き去ったのは佐倉だった。
いつもみたいに絡まれると思ったが、やはり元気がないのだろうか、絡んでは来なかった。
それどころか何も喋らず、どんどんスピードをあげ背中が見えなくなった。そういえば今日、朝の会話以外一度も佐倉と話してないな。まぁ俺的にはいいことだけど。
「おかえりなさい健二にい、ちょっとこれ見てください!大変なことになってます!」
いつもとは異なり焦った様子を見せる聖奈・・・手に持っていた、スマートフォンを俺に見せる。そこに写っていたのは俺と聖奈のデー、買い物の日の写真だった。
「健二にい、こんな写真がSNSで拡散されてるんです!何か心当たりはありませんか!」
もう一度よく画面を見た。写真の下に文字が書いてある。
このインキャはロリコンです!この男を見たら速通報!
「これは」
文頭にある「このインキャ」というのでなんとなく犯人は想像できた。がこれはやばい!外にも出られないじぁないか!
「健二にい、どうしましょう!?」
聖奈がかなり慌てているのがわかる。
「落ち着け聖奈、大丈夫だから!」
「す、すみません健二にい」
少しきつく言ったが、お陰で聖奈は正気に戻ったようだ。
「別にお前が謝ることでもないだろう。お前が何かしたわけじゃないんだから」
「は、はい」
一旦、聖奈を部屋に戻させ俺も自分の部屋に入った。そして冷静にこの状況をどう打開するかを考えることにした。
つまりこれは先制攻撃だ。
この状況でまず考えるのは聖奈の事。聖奈と俺が兄妹だと証明できれば、このSNSは矛盾されることになる。まぁシスコンとか言われそうだけど・・・まだその方がいい。
さて、どうするかな・・・俺は一日中真剣に考え、最善策を見出した。
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