第7話 妹は俺に厳しい
ドアを開けた聖奈は口を開けて呆然としていた。
「お、お帰り聖奈。こ、この人達はと、友達?い、いやクラスメイトなんだ!」
「ちょっと、ヨコッチひどい!私とヨコッチはれっきとした友達でしょ!」
無駄に俺との距離が近い。これじゃあ友達どころか彼女にも見えるのでは?
「へ、へー健二にいの友達ですか。し、しかも女の」
聖奈の顔がひきずっている。苦笑いで誤魔化しているが、少し不機嫌そうだった。
「でさヨコッチ、この子ヨコッチの妹さん?」
「ヨ、ヨコッチって健二にいとあなたはそんなに仲がいいんですか.......ずるいです。」
最後の方声が小さくなって聞こえずらかったが、なんか嬉しいことを言ってくれたように聞こえた。
「え、えっとこいつは俺の妹の聖奈で、こっちはクラスメイトの佐倉と・・・えーっと、後輩?の長谷川さん」
とりあえず全員の自己紹介的なことをしたが、雰囲気は最悪である。
これもしや修羅場というやつでは!
しばらく無言が続いた。
そして最初に口を開けたのは長谷川だった。
「あ、あの失礼かもしれないんですけど、妹さんは先輩、横田健二さんのことがお好きなんですか?」
おいおい!凄いこと聞いてくれたな、お前!
この雰囲気、この状況でよくそんなこと聞けたな!でも聖奈の答えは少し気になるところではある。
俺は唾を飲み込んで、聖奈を見た。
顔を赤くさせ、持っていた荷物を床に落とし、焦っているようだ。
「え、えっと、その・・・す、好きって!わ、私たちは兄妹なんですよ!そ、そんなわけないじぁないですか!」
少し残念だ。まぁ兄妹なのだから当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
「じぁ私が先輩のこと奪ってもいいですか?」
おい!お前続けてなんてこと言うんだ!てか今日会ったばっかだし、あんまり俺に嬉しいこと言わないでー!
「そ、それはダメです!健二にいは、わ、私の・・・」
聖奈は恥ずかしそうに顔を抑え逃走した。
「ちょっとからかい過ぎちゃいましたね」
この長谷川という女、結構やばいやつかもしれない。その時俺の脳細胞が俺に訴えた。
そして俺はため息をつく・・・
「なぁお前たち、用件が済んだならもう帰ってくれるか?」
「えぇー、いいじゃん!少し遊ぼうよーヨコッチ!」
「ダメだ!俺はこの後用事がある。だからさっさと帰ってくれ!」
「もー、冷たいなヨコッチは・・・まぁ用事があるなら仕方ないけど」
珍しく聞き分けがいいじゃないか!そうだ早く帰ってくれ!
「では先輩、入部届けだけ置いていきますね。月曜日に先輩のクラスに取りに行きますから」
「お、おう」
ようやく2人が帰った・・・と同時に凄い勢いで部屋に戻ってきたのは聖奈だった。
「健二にい!さっきの2人は何ですか!彼女ですか?それとも体の関係ですか!?答えてください!」
「お、落ち着けよ聖奈、そんなんじゃないって!ほんとただのクラスメイトとその後輩だから」
「ほ、本当にそうなんですか?まぁ私には関係のないことですけど、それより健二にい明日10時に練馬駅に来てください!遅刻厳禁ですからね!」
「10時に練馬駅?、家から一緒に行けばいいんじゃないのか?」
「そ、それじゃデー・・・つまらないじぁないですか、それに健二にいと一緒に家を出るところなんて他の人には見られたくないですし!」
まぁ健一兄さんに見られたくないのは俺も同意見だ。
「わかったよ、10時に練馬駅だな」
その約束を交わし、聖奈は嬉しそうに出て行った。
今日は色々と疲れたな、ついこのあいだまでクラスメイトの誰とも喋らなかった俺が、こんなに人と話すなんて。
手紙の件はまた今度にするか。
その日俺はとんでもない失敗をした。もしこの時、手紙の差し出し人のもとに行っていればあんなことは起きなかったのに・・・。
次の日、朝目覚まし時計の音で目を覚ます。
時計を見ると午前9時を指していた。
あと1時間か・・・練馬駅までは徒歩15分ほど、俺は駅まで自転車で行くので7、8分ほどである。もう少し寝てもいいが、2度寝は危険なので起きることにした。
リビングに行くと聖奈の姿はなく代わりに、健一兄さんの姿があった。
「おはよう」
なんとなくいつもしない挨拶をしてみた。
「 ・・・ 」
えー!返してくれないんですか!まぁ期待はしてなかったけど。
「おはよう」
凄い時差があったが、健一兄さんは挨拶を返した。
「お前もこの後用事があるのか?今日は俺も聖奈も用事があるから、家の鍵は持って行けよ」
「う、うん」
すごく気まずい・・・まだ9時半前だったが練馬駅に向かうことにした。
自転車で通る一本道は最高である。
自転車は歩いている人と並ぶことがない。だから一人で自分のペースでこげる。それに風もとても気持ちがいい!
そんなことを考えていると、目の前に車がとびだしてきた。
「あぶねーだろ!、どこ見て運転してんだ!」
窓を開けて怒鳴ってくる男性。
俺と同い年くらいに見えたが、流石にそれはないと思う。
周りからの視線が集まり俺はその場から逃走した。
少しペースを上げる。もう練馬駅はすぐそこだ。
練馬駅に到着し時計を見ると9時40分を指していた。
まぁちょうどいい時間だろう・・・そう思いながら壁に寄りかかり瞑想を始めた。
聖奈とのデート楽しみだなーとか、どんなところに行くのかなーとか・・・。
「あのすみません」
女性の声が聞こえる。聖奈と違う声のようだ。目を開けて辺りを見渡す。綺麗な金色の髪、透き通るような肌、大きな目に、小さくて可愛い唇...そこにいたのは鮫島さんだった。
「あぁ天使だ」
「あ、あのどうかしましたか?横田さん」
「い、いやなんでもないんだ。でもどうしたのこんなところに一人でいるなんて...」
「えっと、それは」
何か言おうとした時、また誰かの声がした。
誰だよ、こんないい時に!
「健二にい、また女ですか!」
またですか。
なんで俺はこんなにタイミングが悪いんだ!と頭をかかえた。
聖奈は笑いながら怒るという、凄い圧をかけてきた。
俺は必死に笑顔を作りその場をやり過ごそうと考えた。
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