第6話 2人の来訪者


朝、目を覚ますと隣に聖奈の寝顔があった。



あー俺まだ夢の中なんだな・・・もう一度目を閉じそして目を開けた。

隣を確認する、紛れもなく聖奈の顔だった。


あれ、俺は確か聖奈がベットで寝てたから床で寝てたはずなんだけどな。


体に当たる硬くて冷たい感触は間違いなく床である。

じぁ聖奈がベットから落ちたのか?

だが俺が寝ていた場所からベットまで5メートルほど、それに俺は聖奈と逆向きに寝ていたはず。


ということは聖奈が自分で俺の隣にきたのか!?


聖奈を起こさないようそっと立ち上がる・・・とその時、聖奈が寝返りをうった。

それにつまずき、聖奈をまたぐように四つん這いになってしまった。


こ、これはラッキースケベというやつなのでは!

いかん俺は妹でなにを考えているんだ!

でもちょっと可愛いな。




「健二にい、何してるんですか?」




そこで聖奈が目を覚ます。四つん這いでまたがってしまっているこの状況で・・・




「い、いやこれには事情がありまして」




必死で言い訳をするが、そのセリフは聖奈には届かなかった。




「まずそこをどいて下さい!それから私とはもう関わらないで下さい!」




嫌われた!最悪だ・・・家族で唯一の俺にとっての本物の家族だった妹に嫌われた。


終わったー、人生終了です・・・。



ひとまずその場所をどいて、肩を落としうつむいた。


聖奈は立ち上がり俺を見て、言い過ぎた。と思ったのか口を開きこう言った。




「す、すみません。少し言い過ぎました。そもそも昨日の夜健二にいの部屋に来たのは私なのに。で、でも健二にいが悪いんですよ!でも言い訳くらいは聞いてあげます。私は健二にいの妹ですから。」




俺はいい妹をもって幸せだ!この妹で本当に良かった。

言い訳を考えるが何も思いつかなかった。

そもそも言い訳を考える必要もない。あったことをそのまま話せばいいのだ。


そして俺が四つん這いになるまでの経緯を話した。




「そ、そういうことでしたか。な、ならしょうがないですね。と言いたいところですけど、きっと健二にいのことですから妹でよくないことを考えたに違いありません!だから許してあげるかわりに、私のいうことを一つなんでも聞いてください!」


「あ、あぁ分かったよ。で何すればいいんだ?エッチなのはダメだぞ!」


「健二にいは、私に何を求めてるんですか!買い物に付き合ってくれればいいです」




買い物くらいで聖奈との関係が悪くならないのであれば安いものだと、そう思って軽く返してしまった。

てかそれって兄妹デートなのでは!そう考えると恥ずかしい・・・。





「あ、今デートなのではとか考えましたよね!?健二にいは変態です」





聖奈はエスパーですか!って前にも俺の心読まれたことがあったな。ってことは俺が単に単純なだけなのか!?




「そ、そんなことを考えるわけないだろ!兄妹なんだし・・・でそのデー、買い物はいつ行くんだ?」


「今絶対デートって言おうとしましたよね!?まぁもういいですけど。明日、日曜日は空いていますか?」




デートでいいのか?そうつっこみを入れたらどうなるのだろう。とか思いながら俺は頷いて明日、日曜日に聖奈とデー、買い物の約束をした。


それから聖奈は少し嬉しそうに、俺の部屋を出て行った。

妹とデートか・・・頬が緩みニヤケが止まらない。って、いかんいかん妹だぞ!そう自分に言い聞かせる。


そういえば今日なんか予定があったような・・・あぁそうだ手紙の件で出かけるんだったな。



でも眠いし、もう少し寝るか・・・そして俺は目を閉じた。





ピーンポーン

チャイムの音で目を覚ました。



ピーンポーン

しばらくしてもう一度チャイムが鳴る。俺以外誰もいないようだ。俺は立ち上がり、玄関へ向かった。



ドアを開けると1人、いや2人の女性が立っていた。

そして大きくため息をついた。




「なんだお前かよ」


「何そのため息は!せっかく休日に会いに来てあげたのにお前とは何よ!もしかしてヨコッチ寝起き!?うけるんですけど!」




いや別にうけねーし!

てかなんで俺の家知ってんだよ!




「で、なんか用か?さ、佐倉さん?」


「なんで名前疑問形?てかさっきお前とか呼んでどいて佐倉さんとか私との距離感遠くなったし」




いや距離感も何も、ついこの間まで佐倉いろりという名前すら知らなかったし、できれば君とは関わりたくないんですけど!




「で、そっちの子は誰?」


「あぁ、この子はね私の友達の長谷川奈帆ちゃん。ほら、こっちおいでよ!」




強引に手を引っ張り彼女を俺の前までやった。




「は、はじめまして 長谷川 奈帆と申します。よ、よろしくお願いします。先輩...」




いやごめん、何をよろしくすればいいんですか!てか友達って、後輩なんですか?




「で、さっきも聞いたが何か用があるのか?あとなんで俺の家を知ってるんだ?」


「全く、ヨコッチはせっかちだな。こんな美女が2人も家に来てあげたのに、質問ぜめは減点だよ!」





いや初めから採点とかあったんですか?それと俺の質問ちゃんと答えてね!




「用がないなら閉めるぞ」




玄関を閉めるそぶりを見せた。




「ちょ、ちょっと待って!ちゃんと用はあるんだから!それに今閉めたら後で後悔するよ!」




多分後悔はしないだろう。だが長谷川という女子はちょっと可愛かったので、ドアを閉めるのをやめることにした。




「話聞いてくれる気になった?じぁお邪魔しまーす!」




そう言って佐倉は長谷川の手を引っ張り、勢いよくドアに突っ込んできた。



ドアを閉める間も無く2人は俺の家に侵入した。


佐倉はドヤ顔を決めていた。


いや全然凄いことじゃないし、不法侵入ですからね普通に。




「ねぇ!ヨコッチの部屋で話そうよ!」




勝手に家に上がり込んで本当にこいついい性格してる!もちろん悪い意味で。




「ちょっと待ってろ」




ー2分後ー



「ほらこっちだ」


「ヨコッチ、部屋戻って何してたの?も、もしかしてエッチな本でも隠してた?」


「そんなわけないだろ!ほらついてこい」




もちろん、エッチな本を隠していた訳じゃない。普通に片付けをしていただけである。そう普通に....。


2人を部屋まで案内し、お茶を出した。




「ヨコッチ親切なんだね。なんか意外!」




この女の中で俺は一体どんな扱いをされてるんだろあか。

まだ会ってからそんなに経ってないよね君!




「で、用ってなんなんだ?」


「あーそうそう、それは奈帆ちゃんに聞いてあげて!私はただの付き添いみたいなもんだから」




そして俺は長谷川の方を見る。少し目があったが、長谷川はすぐに目をそらした。

その後、少しうつむいて恥ずかしそうな顔をした。


この子俺と同じ系なのか!もしや人と話すのが苦手的な!

この時俺は運命を感じた。



すると長谷川は口を開け話を始めた。




「そ、その私先輩のこと・・・








やっぱりなんでもありません!」







えーそこまで言って終わりかよ!

今絶対告白だったでしょ!ちゃんと告白してよ!


もちろんオッケーするから!





「もう、奈帆ちゃんしっかりしてよ!相手はこの、ヨコッチなんだよ。この!」




このってなんだよ!お前は俺をなんだと思ってるんだよ!




「そ、そうだね、この先輩だもんね」




だからこのってなんだよ!長谷川さんまで影響されなくていいから。




「わ、私先輩のこと す、すき・・・









スキー部に勧誘しにきたんです!」






「そっか分かった!もちろんオッケーだぞ!」





ん!?ちょっと待て今流れで返事したけど、これってただの部活の勧誘じゃねぇかー!




「ほ、本当ですか!?うちの部活に入ってくれるんですか!?人数少なくて廃部になりそうだったんです!ありがとうございます!」




え、この子こんなに明るい子なの!?

さっきの運命感返してー!




「え、えーっと......今のは流れっていうか、なんというか」


「先輩入ってくれないんですか?」




長谷川は笑顔から悲しい顔に変わった。

喜怒哀楽が激しいやつだ。


そんな顔されたら入るしかないじゃん!




「わかった。でも練習とか行かないからな!めんどいし」


「はい!名前だけでいいんです!ありがとうございます!」




名前だけでいいのかよ!そこはもうちょいオブラートに包んでよ!




「ヨコッチ、スキー部へようこそ!」


「ってお前スキー部なのか?」


「そうだけど何か?」


「あぁ、じゃあやめとくわ!今の話なかったことにしておく」


「なにそれ!今入るって言ったじゃん!ひどい、ほんと最低!」





お前はなんなんだ本当にコロコロ態度変えやがって、俺は長谷川のために入ってあげようとしてるのに。




「冗談だよ」




ため息をつきながらそう呟いた。




「ため息つきながらとかまじ最低なんですけど、ほんとヨコッチ最低!」


「いや、入ってやるって言ってるんですけど」


「あ、そっか。一応冗談とか言ったもんね、じゃあいいのか!」





少し考えながら佐倉は呟いてまた口を開こうとした。




ガチャン!


その時、ドアが開く音がした。

誰か帰ってきた!こんな状況見せるわけにいかない。俺の部屋に女子が2人もいるなんて!



トントン!ドアを叩く音がした。




「健二にい!いるんですか?お昼買ってきましたよ!」




聖奈だった。

あぁもう終わった!



そしてそっと部屋のドアが開かれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る