第3話 名前が分かりません
4月19日、朝窓の外を見ると雨が降っていた。今日は気分が良い。なぜなら俺は雨が好きだからである。傘をさすと顔が見えずらくなる。
つまり俺という人間をいつも以上に認識しづらくなる。だから雨は素晴らしいのだ・・・と一人で話を完結していると妹の声が聞こえた。
「健ニにい!起きてますか?朝食もうできてますよ!」
俺は何も言わなかったが、心の中で
「分かったよー」と元気な声で叫んだ。
リビングに行くと聖奈がいる。
「もう、健二にい遅いです!健一兄さん先に行っちゃっいましたよ!」
俺は縦に一回頷いて、食事を始めた。
少し怒ったような顔をしていたが、それが聖奈だと逆に元気がでる。勘違いしないでよ、元気がでるとか言ってるけど変態じゃないからね!・・・ツンデレ要素を交えて心のなかで呟く。
「ご馳走さま・・・じゃ先、私行くからね!」
「おう、気をつけろよ」
「全く、健二にいはなんでこうもっと元気よく、送り出せないんですか!」
「それが俺なんだよ」
聖奈は諦めたようにため息をつき、家を出た。
さて俺も学校に行くかね・・・。
サボりたい気持ちはあるが、休むと健一兄さんが怖いので、休むことはできない。それに昨日の転入生を見に行くと思えば学校も大して悪くない。
そして俺は家を出て学校へ向かった。
学校に着き、下駄箱を開ける・・・あっ!忘れてた、そこには毎度のように置かれている手紙があった。
転入生のことで完全に忘れていた。今日は名前が、書いてないだとー!
名前がないのを確認し内容は読まずをそっと手紙を下駄箱に戻した。
手紙のこととか、転入生のこととかもう頭がいっぱいだぁぁあ!!っと叫びたかったが心の中にしまっておいた。
教室に入ると昨日同様、転入生の周りに人だかりが出来ていた。それに俺の席に女子が座ってる・・・顔は見たことがある。多分同じクラスだろう。名前は、えっと・・・少し考えたが思い出せなかった。
そっと席に近寄り、どいてくれ!とアピールするが気付いてもらえない。とその女子が振り返りこっちを見る。
彼女はなぜか驚いたような表情を見せた。
「え、えっとあの、そこ俺の席なんですけど・・・」
やばっ!女子と話すとか無理なんですけど。まじ恥ずかしいんですけど・・・。
「あーごめんごめん、えっと名前なんだっけ?」
笑ってごまかしたがその女子は俺の名前すら覚えていないらしい。
まゃ俺も人のこと言えないけど・・・。
「よ、横田だよ・・・お、おはよう?」
「あー横田くんか!・・・ってなんで挨拶疑問形!」
なぜか爆笑してくれた。でそっちの名前なんだよ!と言いたいところだが、この女子とはこの先話すこともなさそうなので聞かなかった。てか早くどいてくれます!?と目で訴えた。
それからしばらくしてようやくその女子は席を立った。
「私、佐倉 いろり!よろしくね!」
丁寧で明るい自己紹介だった。
少し可愛いとか思ったが、のちに単にこいつがあざとい女だと知ることになる。
そして今日も授業に集中できないまま1日が終わった。
そして帰り道俺はあることに気づいた。
そういえば!金髪美女の名前知らねー!
どうでもいいようでとても大事なことを聞きそびれた。
まぁ明日名前聞ければいいか・・・。
そうため息をつき、名前を聞くという試練に向けて、よしっ!と気合を入れた。
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