第2話 転入生はお決まりの金髪
学校に着くと、またあの手紙が俺の下駄箱に入っていた。
少しため息をついてその手紙を手に取った。
「・・・ん!、えぇー!」
少し大きな声が出た。周りの生徒の視線を感じ、
手紙をポケットに隠しその場から逃走した。
逃げ込んだのは男子トイレの個室。
さっき声を出してしまったのには理由がある。
なんと表紙に差出人の名前が書いてあったのだ。
トイレの個室でそっと先ほどの手紙をポケットから出そうとした、が手紙がない!
あれっ、どこだ確かポケットにしまったはずなのに、まさか途中で落とした!
慌てて個室から出て下駄箱へ向かった。
だが下駄箱で何か人の群れができている。
なんなんだよ、こんな忙しい時に!よく見るとそこに健一兄さんがいた。周りの群れは女子のようだ。手紙を探したいが人が邪魔で難しい。
てかなんで先に行ったはずの健一兄さんが今来てるんだよ!
そんなことを考えていると健一兄さんと目が合ってしまった。
健一兄さんは俺を見つけるとゆっくりとこちらに近づいてきた。
逃げようとしたが、残念なことに先に声をかけられた。
「健二、お前忘れ物を取りに帰ったんじゃなかったのか?随分と速かったんだな」
「えっとそれは、その......てか健一兄さんはどうしてこんなに遅かったの?」
「あぁ、それは途中で道に迷った外人がいたから案内をしていたんだ」
「が、外人ですか」
「あぁそうだ、金髪で.......あれは多分イギリス人だな」
「そ、そうですか」
早くどっかいってくれー!そう思いながら返事を返す。
「外国の人と話せるなんてすごーい!」「さすが生徒会長!」「さすが横田健一!」
今の話を聞いてきた周りの群れが歓声をあげる。
「健二、俺は教室にいく。お前も早く自分の教室に行けよ」
そう言うと周りの群れと一緒に教室へ向かっていった。
あれじゃまるでどっかの貴族だな、と少しため息をつく。
教室に戻るか・・・ってそうじゃない!俺は手紙を探しに来たんだ。
下駄箱付近を探したもののその手紙が出てくることはなかった。
くそっ!差出人の名前なんだったっけな。
確か、す、鈴木......なんだっけー!
なんでよくある苗字なんだよ!この学校に何人いると思ってる!
名前覚えとくんだったー。
1人で頭を抱えているとチャイムが鳴った。
あ、遅刻だ!
やばい、今日は不幸続きだ!
教室ではホームルームが始まっている。
やはり遅れて入るのは注目を浴びて入りづらい。
なのでホームルームが終わるのを廊下で待つことにした。
すると教室の中がやけにうるさくなった。壁越しだったが、何を騒いでいるのか聞こえた。
転入生が来たようだ。
しかも女子らしい。男子生徒が歓喜に満ちているのが伝わってくる。
ホームルームが終わり担任の先生が前のドアから出て行く・・・俺はそれと同時に後ろのドアから入った。
生徒はその転入生に興味津々なようで、その席に人が集まっている。
てかそこ俺の席の隣じゃん・・・。
他の人にバレないようそっと席に着き、必殺技!寝たフリを使う。
腕を枕にしうつ伏せになる。この状況で話しかけてくるやつはよっぽど仲が良くなければ話しかけてこない。
そして自慢じゃないが俺には友達がいない。よってこの技は最強と化するのである。
だが寝たフリとはいえ、周りの話し声は入ってくる。
「どこから来たの?」「なに人なの?」
そんなようなことを尋ねている。ってそれ両方同じ意味なのでは!とか思いながらも寝たフリを続けた。
「その髪、凄くいい色だね!その髪の毛もともとなの?」
質問は続いている。早くどっかいってくれー!
せめて席変えてやってくれ!
そう思っていると1限のチャイムが鳴った。と同時に周りの生徒が自分の席に戻っていく。これでやっと顔を上げられる。
そして隣を見た。
そこにいたのは金髪の多分イギリス人の生徒だった。
これもしや、朝健一兄さんが言っていた人なんじゃ!てか普通に可愛いんですけど。
俺の目が勝手にそっちへ向いてしまう・・・くらい可愛い。これでは授業に集中できない。
けどこの美女の隣で授業が受けられるのか。神さまありがと!
そんなことを思いながら天に顔を向け手を組んだ。
「横田くん!」
先生の声が俺を正気に戻した。危ないもう少しで天に昇るとこだった。
そっと隣見る。すると金髪の美女はこちらを見て手で顔を抑えクスクスと笑っていた。俺はそれを苦笑いで返した。
今日一日、授業をまともに受けることができなかった。
あんな美女が隣にいたら黒板なんて見てる場合じゃないよ!
それに休み時間も俺の周り、転入生の周りに集まって騒いで、まったく羨まし・・・うるさくて休憩にならなかった。
そんなことを思いながら下校する。
家に帰ると妹が出迎えてくれた。この瞬間が一番幸せだと感じる。
いつものごとくぶっきらぼうな返事をし、またやってしまった!と後悔する。
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