王道ラブコメってこんなかんじですか?

美玲

ラブコメを目指して

第1話 名無しの手紙


4月25日、俺はこの日初めて告白された。



高校に通い始めて1年が過ぎ、昨日無事2年生になることができた。クラスは変わったものの、ぼっちの俺からしたらそんなことは関係ない。


昨日の始業式、生徒代表として壇上に上がったのは俺の兄、横田健一である。


この兄、ずるいことに顔はイケメン、頭脳明晰、運動神経抜群、そして明るい性格・・・と俺にはない要素をいくつも持っていた。


ちなみに俺はオール普通。

まぁ運動は少しできるかな?


でも人付き合いは苦手で学校ではほとんど喋らない。そして目立つのは嫌いで面倒くさがり、と自称インキャな人間である。


そんな俺は今日(4月16日)、朝学校に行くと下駄箱に手紙があった。

それを見て少し動揺したが冷静に考えてイタズラか何かの間違えだろうと思い、その手紙を捨ててしまった。




次の日の朝、また俺の下駄箱に手紙があった。

これはもしかして本気なのでは!と思ったが、手紙には差出人の名前がなく、内容も告白とは全く異なるものだった。



その日の帰り俺はいつも通り1人で下校していた。が後ろから誰かの視線を感じる。振り返ってみたが誰もいない。


もしや不審者!と思い小走りをする。速くなった足と重なるように後ろから誰かが追ってくるのがわかる。


また振り返る。しかし誰もいない。これはもしかして心霊現象!!全力で走った。足音は先ほどのように重なるようにして聞こえる。とにかく全力で逃げた。そして気づくと俺は家の目の前まで来ていた。



もう大丈夫だ。ホッとため息をしたと同時に体の力が抜けた。先ほどまでの気配もない。この日は無事家に帰ることができた。



家に入ると妹が出迎える。妹の名前は横田聖奈。容姿は普通、勉強はできるが、運動は苦手。


だがこの妹の最大の武器は性格の良さである。


誰がなんと言おうと彼女は優しい!

そしてコミュニケーション能力が高い。羨ましいといつもそう思ってしまう。



だが妹のことは尊敬もしているし、誇りに思っている。

まぁ俺が育てた訳じゃないけど・・・。




「おかえり健二にい」




あぁなんて良い妹なんだ!いつもそう思う。

こんな長所もない俺をいつも妹だけは見捨てずにいてくれる。まぁ妹は誰にでも優しいだけなんだけどね。




「あぁただいま聖奈」




やってしまった、またぶっきらぼうな態度で「ただいま」を言ってしまった。俺に挨拶とかしてくれるの妹だけだから、嬉し過ぎて素直になれない。実は俺ツンデレなんじゃ!?


いやそんなことはない、と言い聞かせ自分の部屋に入った。 そして布団に横になり・・・。




「健二にい、ご飯できてるよー!」




ドア越しに妹の声が聞こえてきた。どうやら寝てしまったらしい。




「今いくよー」




そう返事をしてリビングに向かう。それを待ち構えるように出てきたのは兄だった。




「健一兄さん、帰ってきてたんだ・・・」




「あぁ」




健一兄さんとはどうしても話ができない。


兄弟とはいえ、ステータスが違いすぎる。


1つ上の代とは思えないくらい大人びている。

そんな健一兄さんを見るとどうしても緊張してしまうのだ。




「いただきまーす!」





妹の明るい声が食卓に響いた。


だが俺の隣は健一兄さんだ!これでは妹とも話せない。まぁいつも喋ってないけど・・・。



ところで気になった方も多いだろう、俺の家族について。

俺の家族は計6人、神的なステータスの兄、愛される性格の妹、そしてフリーターでぶらついている姉がいる。


あとは現在旅行中の母と父。基本家にはいないので説明しなくても物語に支障はないと判断する。


以上の6人が横田家の構成である。


ん、ちょっと待て自分を忘れていた。最初にも紹介した通り俺は横田健二現在高2でこの話の主人公である。そんなことはどうでもいいって!?


じゃあ話の続き。





次の日、俺は1人で登校・・・のはずだったが、家を出る時間がまさかの健一兄さんと被ってしまった。わざと遅く歩いて距離を取ろうとしたが、それをさせないような微妙なポジションどり。



いや実に素晴らしい、と感心している場合ではない。

一緒に登校しているのを見られると面倒だ。


なんといっても学校の有名人にして人気者、そんな健一兄さんが俺と登校していたら健一兄さんの人生に関わる。



どうしたら距離をとれるか。

そして1つのアイデアが頭に浮かんだ。



「健一兄さん、悪いけど忘れ物しちゃったみたいだから。と、とりに帰るね。だから先に学校に行ってていいよ。」


「・・・」




えっ!嘘聞こえてなかった!?


少し間を挟み、もう一度言おうと口を開こうとした時




「あぁ、分かった」




と一言だけ口にして歩く速度を上げた。



俺はすぐさま方向転換をし家に帰る素ぶりを見せた。がもちろん帰る気はない。

健一兄さんが見えなくなるまで待ってからゆっくり学校に向けて歩き出した。


ひどく動揺したが、これでうまく切り抜けた!と自分を褒めた。


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