#35 Missionary
「じゃあまずは私から演説を開始するね」
アニオタ教の最初の布教演説(?)には、愛歌が名乗りを上げた。
「一言にアニメと言えど、ジャンルは様々。涙腺崩壊レベルの泣けるアニメもあれば、胃酸激流レベルで胸糞悪いアニメもある。その中でも、初心者であり尚且つ現代っ子の唯と吹雪におすすめするアニメはこちら!」
愛歌はスマートフォンの画像検索アプリを起動し、紹介するアニメの画像を見せた。
「ソウルイーター!」
愛歌が人におすすめし、尚且つ自身が最も愛している作品。それは「ソウルイーター」。
原作漫画は2004年に連載が開始され、アニメは2008年から1年間放送されていた。
「唯知ってる?」
「……ごめん、知らないや」
「っ!? な、嘆かわしい……私的には神作なんだけど……まあとにかく面白いし、私がアニメにハマった原因だから、是非見てみて! はい、次は焔!」
続いて焔にバトンタッチされ、焔は急いで画像検索を始めた。
「私がおすすめするアニメは……頭文字D!」
「あー知ってる。ちょっとしか知らないけど」
「私も。豆腐屋のハチロクくらいの知識しかない」
1995年から連載が開始され、1998年からアニメされた「頭文字D」は、焔の最も愛するアニメである。
未だに根強いファンも多く、アニメの知識はあまり無い唯と吹雪も僅かな情報だけだが知っている。
「車のこと詳しくなくても楽しめるし……とにかくキャストが豪華! OVAとか劇場版とか含めれば結構な時間が必要になるけど、おすすめだよ。じゃあ次は緤那よろしく!」
焔からバトンタッチされた緤那は、既に画像検索を終えていたスマートフォンを唯と吹雪の前に差し出した。
「私のおすすめは妖狐×僕SS! 絵も綺麗でキャストも豪華……尚且つアニメ初心者の2人でも楽しめる……はず」
2009年から連載が始まった「妖狐×僕SS」は、2012年にアニメ化。豪華なキャスト陣と美麗な作画、加えてメインキャストが歌うエンディングに衝撃を受け、緤那の中では最も愛するべき作品として確立している。
「じゃあ次は文乃!」
次に呼ばれることを察していた文乃は、緤那同様に検索を終えた画面を唯と吹雪の前に差し出した。
「私は魔法科高校の劣等生をおすすめします。美しい映像も然る事乍ら、主題歌やサントラも最高です。あくまでも個人の感想であることをお忘れなく」
2014年から放送されていた「魔法科高校の劣等生」は、文乃の最も愛する作品であると同時に、まだ純粋だった文乃をアニメ好きへと豹変させた作品である。
「じゃあ最後はエリちゃん、お願い」
大トリを任されたエリザは、文乃と位置を代わりながらスマートフォンを差し出した。
「私のおすすめはラブライブ! ストーリー、キャラ設定、作画、曲……全てにおいて完璧! ラブライブ嫌いな人がいればその人は私の敵!」
「そんなに!?」
エリザの愛する「ラブライブ!」は、説明不要の超人気アニメである。
エリザはこれまで数々のアニメを見てきたが、現時点ではラブライブを超える作品は(エリザ的には)現れていない。それ程「ラブライブ!」はエリザにとって大きな存在であると言える。
「ラブライブは知ってるけど、話自体は見てない」
「私は見たよ。妹がラブライブ大好きで、見ろ見ろってうるさくて……まあ、面白かったけど」
妹の光は吹雪とは違いアニメ好きで、中でも「ラブライブ!」をこよなく愛している。愛しすぎた結果、無関心だった吹雪に視聴を強要させた。
「吹雪は誰が一番好き!?」
「花陽ちゃん」
エリザの問いに、吹雪は一切悩むことなく推しの名を答えた。
迷いのない吹雪の発言を受け、エリザは一瞬で喜びのボルテージが最大に達した。
「嬉しい! 私達もっと仲良くなれる! 吹雪の妹とも仲良くなれる!」
「そ、そう? 妹がいたら喜んだだろうに……因みに、妹の推しはにこちゃんらしいよ」
「~! 私もにこにー推し! 絶対友達になれる!!」
もし貸切でなければ退店させられるのではないかと思われる程の大声で、エリザはすぐ近くに同志がいた事を喜んだ。
「アニメはいいよ……実写じゃ再現できない、完璧を見せてくれる。笑えて、泣けて、心の底から満足できる。2人がアニメ好きになってくれたら、私も嬉しいな」
心做しかエリザに後光が差したように見え、純粋にアニメを心から愛しているエリザの笑顔に唯と吹雪は心を動かされた。
アニメを薦めるだけでなく、アニメを見ることによって互いに仲も深まる。エリザの思考は唯や吹雪の上を行っており、既にアニメ好きである緤那達にもエリザが天使のように見えた。
「エリザちゃんがそこまで言うなら……私、頑張ってアニメ好きになるよ。唯も一緒に!」
「……だね。こんな可愛い子に言われたら断れないよ」
唯と吹雪はエリザを抱き寄せ、2人の胸でエリザの顔は少しプレスされた。どうやら緤那だけでなく、唯と吹雪もエリザを好きになってしまったらしい。
(これで少しは唯との距離、縮まったかな?)
エリザは唯と吹雪の胸に埋もれながら、本来の目的である唯とのお近づきが成功に近付いたと実感した。
「さて、じゃあ私はお先にお会計を……」
その後緤那達は順番に会計を済ませ、最後に愛歌が会計を済ませた後に退店。綺羅家へ戻った。
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