エピローグ

 彼女はそうして、再び彼の愛を受けた。

 私は彼に「子供は産ませないでください」

 そう告げただけ。これからも続く仮面生活に、彼の不貞など必要ではないしましてやその象徴の子供など論外だ。

 彼が苦々しく笑って「ごめん」と言ったきり、私達の間にその話題は消えた。


 彼女の視線で書けばこの物語はハッピーエンドなのだと思う。

 降家した元恋人を追いかけるために、1年間で必死に勉強をして、その家のメイドとなった。再び出会った彼らは私の事などなかったかのように愛を育むの。

 なんて素敵な物語なのだろうか。


 私は1人、物語の役者気分に酔うことにした。

 悪役ってこんなに、寂しいのね。私は物語の彼らと違って彼女をいじめる事などしない。それは有り体に言えば彼らが好きだから。ただ、思い合う彼らを1度引き裂いた私は悪役でしかない。

 好きな人には幸せでいてほしい。あとは、彼女にも申し訳なかったから。平民と元々結婚するのは無理だとして、こうして離れた地まで彼を呼び寄せてしまったのは一重に私の責任だ。

 もちろん彼が私とのお見合い話を断ってればよかったという考えはあるが、それはなかなか難しい話し。


 生まれた赤ん坊を抱きしめる。

 貴方には、幸せな恋愛は無理かもしれないけれどしっかりしたお嫁さんを連れてくると誓いましょう。こんな苦しい思いは私1人でいいの。

 どうか思い合う相手と幸せな家庭をこの子が築けますように。






 どの物語にも綴られなかった、小さな悪役のお話

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恋は手に入らない れい @waiter-rei

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