第3話
突如として私の家に訪れたのは、可愛らしい女の子。
ピンク色の髪に彼と同じ翠の目をした少女は私にお願いがあると言ってわざわざ遠い子爵様の土地から来たようだ。
ここまで話せばわかるでしょうけれど、彼女は彼の彼女だ。もちろんそこには“元”という一文字がつくし、なぜ急にきたのかわからない。
だってもう、一年経ったのだ。
彼と私が結婚して、仮面で表面を取り繕った苦しい日々を過ごして、一年経ったのだ。私ももう懐妊して3、4ヶ月後には息子は生まれるし、お腹は膨らんでいる。
最初の数ヶ月に来るならまだしも、今頃何をしにきたというのだ。
そうして来た彼女は私のお腹を見ても何も気付く様子はない。当たり前だ、わかりやすくお腹が大きくなるまであと数ヶ月かかる。
彼女はその美しいそ瞳を潤ませ、両手を握りしめてこういった。
「私をメイドとしてこの家で雇ってください!」
意味がわかった人はいるだろうか?
彼女は「彼の隣にいたい」「許されなくてもそばにいたい」そんな思いだけで、一年勉強して、働いてここに来たのだろう。
なんと健気で可愛らしいことだろうか。
私のお腹には、この家の後継がいる。彼女たちが恋愛をしても子供を産まなければなんの問題もない。ましてやメイドだ。そして彼にこの子についてはまだ何も話していない。ただ、経歴を見た私がこれは元彼女だろうと判断しただけ。
下手すれば元ですらない可能性があった。
なんだかやりきれない気持ちは飲み下して私は、彼女のメイド入りを許した。
ただ私の食事を触らないことが条件だった。嫉妬に狂った女は何をするのかわからないから、いつの時代も気をつけなければいけないのだ。この子がそんなことをするような子には見えなかったのだけれどね。
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