第2話
「おい、まだそうと決まった訳じゃないだろ!いくら箱庭だろうと手は引けねぇ。」
「刑事さん、それは困るなぁ。」
黒髪の青年でも手袋の青年でもない新たな声が後ろから会話を割って入ってきた。
思わず後ろを振り向く。
「
黒髪の青年は顔に手を押さえて溜息交じりにそう言った。
「溜息とは酷いなぁ。呼ばれたから来てやったのに。」
神々里は野次馬を割って、立ち入り禁止のテープを潜った。
160cm程の赤髪の低身長に黒革のレザージャケットを着て、首にはチョーカーを巻いているがそれより気になるのは左目の眼帯だ。
「誰だお前、中学生か?」
「誰が中学生だ!神々里景、箱庭の一員だ!」
「そう怒らないで下さい。大体、入るタイミングが悪いんです。」
「悪い?良いの間違いじゃないか~?な、
神々里は真面目に仕事をしていた理人という手袋の青年に声を掛けた。
「僕に話を振るな。どちらかと言うとタイミングは悪い。」
「チェッ、仲間は無しか。・・・それより刑事さん。あ、お前ら今から話すこと聞くんじゃねーぞ。」
神々里は翔馬達に視線を移すと、不敵な笑みを浮かべた。すると翔馬の耳は無音に包まれた。
(・・・どう、なってんだ?音が、聞こえない。)
周りを見回すと、他の野次馬も混乱したような泣きそうな表情を見せてパニック状態に陥っていた。音が聞こえない中で唯一分かるのは神々里という男が翔馬達に何か仕掛けたという事だけだった。
数分の静寂の末、再び翔馬の耳に音が戻ってきた。刑事たちは話を終えた様だ。刑事は何かブツブツ小言を言っていたが、警官らを連れ現場から去って行った。
神々里は翔馬達の前に立ち、顔の前で手を合わせた。
「野次馬達ごめんなぁ~。箱庭は色々秘密が多くてなぁ~。ま、警察だったら現場長々見られないし、許してくれ。」
「チェッ、つまんねえの。興ざめだ。」
野次馬はぞろぞろと現場を去る。
(にしてもこの人達すげぇ・・・。写真撮ろうとした人は動けなくなったし、耳は聞こえなくなった。)
本当は混乱や箱庭の活動を非難すべきなのだが、翔馬には尊敬しかなかった。
「さて、警察なだめてるうちに遺体の片づけも終わったし、帰るか。」
神々里の後ろを見ると遺体が消えている。
「せんせーい。帰ろ~。」
神々里が車の近くで先生と呼ばれる黒髪の青年を呼んだ。
「ああ、分か・・・。」
「あの!」
翔馬は思わず黒髪の青年の腕を掴むと、驚いたように目を見開いた。
「あーあ。まだ持ってる奴が残ってたか。やっぱ警察も宛てになんないなぁ・・・先生、どうすんの?」
「神々里のは聞いたんですよね。」
「あれは明確な命令だったからね。」
「例外者ですか・・・。」
黒髪の青年は考え込むような素振りを見せて、口を開いた。
「着いて来て下さい。」
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