テレパシーボイス
夕霧なずな
第1話
この世界にはテレパシーボイスと言う力を持つ人間が少なからずいる。
テレパシーボイスとは脳に直接訴えかけ、相手の思考、行動を操るものだ。その力を持った人間達の集団『箱庭』は、数十人のメンバーで構成され、警察などの国家機関が遣りたがらない荒事を主としている。その性か様々な分野のエキスパートが箱庭に所属している。
ただ一般市民を巻き込んでしまう事も多々有り、度々問題となっている。
特別な人間は善か悪か。
「ふわぁ~。」
午前10時。夜勤明けの体を引きずって、翔馬は家路についていた。
(あ~、眠ぃ…。流石にバイト入れすぎたか。)
後悔するように頭をポリポリ掻く。
「おい!あれなんだ!」
自分の隣を歩いていた若者の二人組が前方を指差して走り出した。
(ん?)
目で若者達を追い掛けると、その先には人だかりが出来ている。それに釣られて翔も人だかりの元へ集まった。
「うぇ~、ヤバッ。」
「殺人事件?」
野次馬達が騒ぐのも無理はない。見た目は50~60ほどの中年男性だが、頭、首、肩、腕、腹、足。そして心臓に無数のガラス破片が突き刺さっている。
「…昼だと云うのに凄い野次馬ですね。犯人はよほど目立ちたがり屋だと見える。」
翔馬の隣で見物していた青年が『立入禁止』のテープを潜って中に入った。そして刑事と思われる男と話していた青年に近付いた。
「先生。」
「来ていたのか。」
「遺体始末は僕の仕事ですから。」
青年は白い手袋をはめ直した。色素の薄い髪に喪服めいた黒いジャケット、ズボン、ネクタイをきちんと着こなしている。
「神々里は?」
「声は掛けましたが、夜勤明けで寝不足ですから、来ないと考えて良いでしょう。」
青年の問いに答えたのは黒髪で暗い緑のニットの上から黒のジャケットを羽織っている青年だ。
「さてと初めますか。」
黒髪の青年はナイロンの手袋をはめ、遺体の持ち物を漁り始めた。
「会社の社長ですか…。って事は今回も同じですね。」
黒髪の青年は漁るのを止めて、不機嫌丸出しの刑事らしき人間に近付いた。
「刑事さん。」
「何だよ。横取り野郎。」
「横取り野郎は気になりませんが、今回の件、我々が依頼を受けている『社長殺し』と判断したのでこれからは箱庭が捜査を引き継がさせて頂きます。」
その単語を聞くと野次馬は再び騒ぎ出した。
「あの箱庭!?」
「マジか、写真撮らねえと・・・。」
男がスマホを取り出した。
「駄目ですよ。写真を撮っては。」
手袋の青年が発した声はまさしく野次馬に向けられた物だった。するとその当男は動きが止まった。
(すげぇ・・・一体何者なんだ?箱庭は・・・。)
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