ハッサム

僕がアンカと談笑をしていると、背後から大袈裟に扉を開ける音が聞こえた。その音につられるように視線は一斉に扉の前にオスライオンのように立つ男へと注がれる。男は短い金髪の頭と、角張ったどこかがっしりとした丈夫そうな輪郭にキリッと鋭く決して細すぎない鋭い目があり、そのすぐ上に細くけれども、存在感のある眉毛が右目の右上から左下に斜めに引かれている。屈強な男というのに相応しい体つきをした、気配がクマのような男は、厚い胸板の前で筋肉で丸太のように膨らんだ腕を組んでいた。

「ここに勇者がいると聞いたんだが。どいつだ?」

男は低い大声で酒場にいる連中に尋ねた。その声はさながらクジラの鳴き声のようであった。

男の話を聞くと酒場のほとんどの客は僕の方にくるりと振り返った。その目には微かに怯えた感情が混在していて、まるで僕が責任をおわされているような気分になった。僕はおもむろに立ち上がり、アンカに少し待つように伝えて、男の元まで歩んだ。歩く度に今にも抜けそうな酒場の床がギシギシと軋む。男の前まで行くと男の身長の方が僕より二三センチ高く僕のことを軽く見下げながら言った。

「お前が勇者?信じ難いね。どうだ、ひとつ俺と戦ってみないか?」

男の急な申し出に多少動揺するが、決闘を受けること自体にはさして問題はなかった。酒場ののんだくれの視線は未だに背中をさしている。

酒場の外に出ると、嫌なベタついた熱気が僕の生じろい肌を包んだ。空に浮かぶ光が砂をジリジリと焦がし、この身さえもやき尽くしてしまおうと目論んでるようにさえ思える。

男と対峙すると男はまた、バカでかい声で叫んだ。「俺の名前はハッサム。お前の名はなんという?」男にとってこの程度の声量は日常らしい。僕は男に向かって自分の名前を叫んだ。「僕の名前はロット。勇者だ。」僕とハッサムが拳を構えると辺りの空気はツンと立ち込め、周囲にいた人々は二三歩後ろに後退した。

「ふっ、面白いやつだ。」ハッサムは言う。

「ハッサム、負けたら、仲間になれよ。」僕は微かに笑いながらそういった。

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僕の冒険が純文学風に書かれていてなかなか冒険が進まない Lie街 @keionrenmaro

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