03 ウルベスの場合
(ウルベスの場合)
「ふむ、それで私の所に話が来たと」
「そうなんです、ウルベス様。何か良い案はありませんか?」
「私ならば彼の漆黒の毛並みを見て、ダークと名付けるが……」
「ダーク! 素敵な名前ですわね。これならアリオの言う通り格好良くて、とても強そうに聞こえます」
「ただ……」
「何か問題がおありですの」
「アリシャ殿達は、一番大事な事を忘れていないだろうか」
「一番大事な事?」
「当人の意思だ」
「!」
「こういうものは、周囲があれこれ考えて押し付けるよりも、彼が一番気に入るものを選ばせた方が良いと思うのだが? 違うかね?」
「いいえ、ウルベス様のおっしゃる通りですわ。私、少しはしゃぎすぎたようです。ご注意ありがとうございました」
「気にするな、別に君の言動を不快に思ったわけではない。純粋な好意からくる提案だったのだろう?」
「ええ、少しでもミュートレス様と仲良くなれたら、と思いまして」
「取り返しがつく過ちをいつまでも根に持つほど、私は心の狭い男ではないよ。名前の候補がまとまったのなら、彼の元に行ってきなさい」
「はい、そうしますわ。ウルベス様、本日はありがとうございます」
「やれやれ、あまり仲良くされるのも、競争相手が増えそうで困りものなのだが……」
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