第38話 攻略対象に閉じ込められました



 それからも、騒動は何度か起こった。


 窓の近くで涼んでいると突き落とされそうになったり、大掃除の物置の近くを通ったら背丈以上もあるクローゼットに押しつぶされそうになったり、他にも建物沿いに中庭で歩いていたら上から花瓶が降ってきたり、お客様を出迎えに馬車の近くまで行けば馬に蹴られそうになったり……。


 この短期間で、色々なバリエーションとシチュエーションで身の危険を感じていた。

 考えるのにも一苦労し多様さだ。


 一周目は初めてだった事もありとにかく必死だったのだが、二周目になると少しだけ余裕が出てきたらしく、周りを観察できるようになっていた。


 分かった事は、それらの騒動があった時は、必ず現場の周囲に黒猫の姿があったという事。


 それも当然だろう。

 その猫の正体は最後の隠し攻略キャラで、最初から……ウルベス様のイベントの時から、自分の目的の為にヒロインを殺そうとしていたのだから。


 そして、そんな事が続けば過保護なトールがどうなるか。






 ??? 小屋内部


 ……。


 こうなった。


 私は小さな小屋に押し込められてしまっていた。


 木造の、しかし頑丈な小屋の中に、inアリシャしてしまっている。


 そんな私の目の前には、陰りのある表情の男性。


「お嬢様、大丈夫ですよ。ここなら絶対に安全ですから」


 遠回りに言うと、我が家の使用人の真面目な男性。

 端的に言うと、ヤンデレになったトール・ぜルティアスだ。


 私はそんなトールの声に、不満の声と表情で抗議する。


「こんな所に閉じ込めてこれからどうするつもり? こっちの方が危険なように見えるのだけど」


 刺激しないいう冷静に言ってみたが、その努力はこの状況に貢献しているのか、していないのか。


「私はお嬢様には手出ししません、だから安心してください」

「そう……」


 トールは優しい表情でそんな事を述べるのみ。


 屋敷内にいる使用人が犯人だと思い込んだトールは、私を監禁する様になってしまった。


 ヤンデレ具合でいけば、最後のキャラの次にヤバイのがこのトールだ。


 注意深く、しかし早期に解決しないと自分の身が危ない。

 ゲームのバッドエンドを見るに、このイベントをうまくクリアできなければ、一生監禁されたままになってしまうのだから。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る