第5話
この白いページになにを書けば美しくなるだろうか。それを考えている時点ですでにこの文章は美しくない。美しさとは無意識の賜物、無自覚な力量、贅肉のない魂の叫びだと私は思う。
そう
手に入れたいと渇望するほど、それを意識するほどに遠のいていくものに私は振り回されている。それが一体どれだけ苦しいことか。
周りの才能に嫉妬し、好んでいたはずの小説に嫉妬し、架空の人物に嫉妬し、あまつさえ自分の過去の作品に嫉妬する。
このどす黒い感情が指の先を通ってこのページに染み入ればいいのに
そうして墨汁を垂らしたように真っ黒になれば良い
書くことで楽になりたい、浄化されたいと願う弱い心
苦しい苦しいよ
自分という確固たるものがわからない
剥いでも剥いでもやはり仮面で
最後には空っぽ。もうなにもない。
ああ嫌いだ自分自身が嫌になる
嫌いになれるような自己すらないのに
お笑いですね
ああ思春期の恥ずかしい叫びですよそれが何か?
甘酸っぱいで終わらないでください
私は終わらせられないの
恥ずかしいよこんなポエミーで自意識過剰な文を素敵な大人に見られたらと思うと
でも素敵な大人はきっと私をからかわない
この世に正解も不正解もないし
赤ペン先生がいるわけでもないけど
自分の決断がもたらした結果を責任を取らなくちゃいけない
怖いし疲れる眠い
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