第4話

あの話をしよう、そう思うといつもわたしは泣きそうになる。何かを思い出すのが怖いのではない。そんな怖さを遥かに越えたところにわたしの怖がるものはある。それは、混沌としているということだ。わたしの物語は編集された映像ではない。例えるならアルバムから引き剥がして時系列をぐちゃぐちゃにした写真の集合。瞬間であり、誰かの表情であり、なにがどう関係しているのか自分でもはっきりしないもの達。


憶測は飛ぶ。みんな勝手に好きな写真を選んで(彼らには見えないだろうものもあるはずなのに)編集して映像にしてわたしのことをわかったことにしている。


そんな彼らのことも、怖い。それが彼らの正しさなのだと知って尚怖い。わたしが編集しようとわたしにも見えなかった写真があることを推測して怖い。何もできない。


この世に真実がないことをわからせられて怖い


譲れない物があるのが若さ?

こんなにつらい、つらくてもはじめての青臭さと戦っていること。それを笑う人のことをわたしは信じられない。あなたも通った道でしょう?


わかってるわかってるんだって時間が経てば何もかも変わる、かもしれないでもその言葉が今の私を癒すことはない


ああ引っ張られてしまった。つらいんだって


人に心臓を握られているかのような、寂しさ

馬鹿にしていたありきたりな言葉達が復讐しにくる

「死にたい」「終わりにしたい」「助けて」「寂しい」「つらい」

言葉の意味をはじめて知ったなんて、そんな言葉もありきたりで


何をしようと馬鹿みたいででもそれが本心で


心に穴が開いたようなんです


でも、中身なんて本当はなかったんでしょ?


嫌悪するほどの自己なんてなかったんでしょ?


わたしを傷つけるのは鏡に写った自分自身


あの話を1ミリもしていないのにこんなに疲弊している


もし仮に本質という物があるならば


それは木の根のような物でびっしり覆われていて


少しでもたどる道をずれれば関係のある関係ない話になる


あなたもそう?いや、全然違うのね。


それでもいいから少しだけ


一緒に居させてくれますか


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