想定外の化物 その陸

第60話 やはり、わたくしには――この方の思惑が全く理解できません。

「娘さん――うららさんは、夕方まで部活動を?」

「……そうだと思います」


 被害者の母親。


 浅間あさまさんから事情を把握はあくする。


 自身も学生時代から体操をしていたらしい。


 現在、市内の体操教室につとめているとの事だ。


「他に一緒に活動している友人等は? 一人で帰宅していたとの事ですが?」


 もちろん、複数人で帰宅したとしても。


 犯罪に巻き込まれる場合もありますけど。


 一人よりは、格段に防犯効果は高いですから。


 やまれますわ。


「娘のうららは、私から見ても体操選手として有望ゆうぼうで。将来は、日本を代表する選手になれると感じています」

「なるほど。レベルが違い過ぎて、他の友人よりも長く個人練習をやっていたんだね」


 また、貴方ですの!? 


 ま、まあ、解説してくださるなら、よろしいですわ!


「ええ。御門みかどさんの言う通りで。だからと言って、友人が居ない訳でも無く。体操で分からない所があると、優しくアドバイスする子でした」

「ほうほう。心優しい娘さんで」


 完全に世間話ですわ!? こんな感じでよろしいのでしょうか!?


「もちろん、練習が遅くなる時は、私が車で迎えに行く事になっていました。ただ、最近は物騒な事件が報道されていましたから。これでも、普段よりは早い時間に練習を切り上げた方です」


 それなのに、犯罪に巻き込まれてしまった。無念ですわ。


榛名はるな中学って、小学生もかよってるらしいね。小中一貫校しょうちゅういっかんこうを導入する為に試験的に」

「何で貴方が知っていますの? 小宮こみやさんの情報?」


 今までの被害者は、小学生。


 今回は、中学生。


 小学生も同じ敷地に存在していたとなると。


 標的を変える理由は? 


 いえ、考えても分かりませんわね。


 捜査あるのみですわ!


「まあ、榛名はるな中学校は一般的な学校とは違うらしい。不登校や病気の生徒を積極的に受け入れるとの事だ」

「ええ。一般の生徒さんも在籍してますが。特殊な事情の生徒に対して、何かとサポート体制が整っていまして」


 特殊な事情? 浅間さんの娘さんも? 何でしょうか?


 いえ、気軽に聞いてよろしいのでしょうか? 


 き、聞きにくいですわ。


うららっちは、どうして榛名はるな中に?」

「フレンドリー過ぎますわよ!? 同級生ですの!?」

御門みかど君! 失礼だよ! もう! ぷんぷん!」


 人がためらう事を平気でしますわね。


 無神経と言っても過言ではありませんわ!


「当然の疑問だと思います。……むしろ、率直に質問して頂いた方が」


 あれやこれやと詮索せんさくされる方が。


 苦痛らしいですわね。


 またもや、この男に会話の主導権を握られていますわ。ぐぬぬぬ。


「……娘のうららは、男性恐怖症で」

「男性が恐怖の対象ですの?」

「……ふーん。男性が。そうなんだ」


 いまいち、要領を得ないですわ。


 専門的な知識を有している訳でもありませんし。


 対して、謎のプロファイラー? は無感情でつぶやく始末。


 興味は別の所にありますの?


「具体的な症状を教えてもらえるかい? 浅間あさま君」


 更なる追加の質問に。


 啞然あぜんとしてしまいましたわ。


 完全に失礼な質問ですわ!


 やはり、わたくしには――この方の思惑が全く理解できません。


 事件と関係ある事なのでしょうか?


 


 


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