ニート呪詛使いと関わりたくない彼女達！？

第59話 些細な事が、事件を解決する糸口になるかもしれませんし！

「がるるる！　ばうばう！」

「さつきちゃん！？　日本語を忘れないで！？」

「さつき君、俺、ネコ派なんです。にゃんにゃん！」

　何たる惨状（さんじょう）。

　ネットでは、わたくしは『もっちり姫』等と称（しょう）され。

　あまつさえ、わたくしの病状までも。情報流出ですわ！

「もう！　御門（みかど）君は！　さつきちゃんに謝って！」

「……小宮（こみや）さん、貴方も内縁の妻にされてますわよ？」

『タマムラさんはどういった経緯で病院に居るんですか？』

『女神で保育士みたいな優しい人のお見舞いで。私は、その人と内縁関係でして』

　タブレット端末（たんまつ）から。

　例のインタビューニュースを表示させた。

　数秒、ぼんやりと視聴していた彼女。しかし――

「これ君の発言かな？　祓（はらえ）君！　ぶっころ！」

「だ、だから、さっき言ったじゃないか！？　内縁の妻だって発表した――おなかに正拳突き、やめてよおお！？」

　普段の様子から想像出来ない。

　直接的な制裁を加えたのだった。

　ざまあと言っておきましょう！　おーほほほ！

　あら？　またもや、来客でしょうか？　部屋のチャイム音が響いていますわ。

「はい？　合言葉は？　または、どちら様でしょう？」

『……あの、娘の。浅間（あさま）　麗（うらら）の母親です』

「この度（たび）は、娘の命を救って頂き、誠にありがとうございます」

「頭を上げてくださいませ。……警察官として、当然の事をしただけですわ」

　深々と頭を下げる、浅間（あさま）　雪（ゆき）さん。

　病室の雰囲気が一気に張りつめる。

「娘さんの医療費等は、心配いりませんわ！　月夜野（つきよの）家がサポートいたしますし。と、とにかく金銭的な負担は、心配無くてよ！　おーほほほ！？」

「……そこまでして頂くのは、心苦しいですけど。娘の事を考えると、断る事が出来無い現実が。申し訳ありません」

　会話のきっかけを探そうと善処（ぜんしょ）したのですが。

　これでは、保険会社の手口と変わりませんわ！？

　ああ、どうしましょう！？　困りましたわ！？

「娘さんも意識が戻らないと、退院も不可能。金銭的な余裕も無いとね。母親一人で大変でしょう？」

「……えっ？」

「こ、こら！　不規則発言は、しないの！　すいません、すいません。気にしないで下さい。ごめんなさい。御門（みかど）君！」

　気（け）だるい様子で漫画雑誌を読んでいた問題児が！？　口出（くちだ）し！？

　小宮（こみや）さん、貴方の担当ですわ！　黙らせて！

「失礼ですが、こちらの方々は？」

「わ、私は、さつきやんの！？　いえ、月夜野（つきよの）署長さんのメイド！？　じゃなくて、付き添いで！？　ケースワーカーをしています小宮（こみや）　祀理（まつり）です！」

　しどろもどろに自己紹介をしていますわね。

　最後の名前だけは、しっかり伝わりましわ。

「そして、彼女の内縁の夫。御門（みかど）と申します。以後お見知りおきを。一度は言ってみたかったセリフ！　えへへへ！」

　お見知りおきしなくて良いですわ！

　記憶から完全に消去して構いません！

「こ、こら！？　嘘を吹き込むな！　ただの友人です！」

「……ふふっ。ごめんなさい。まるで、学生みたいに仲がよろしいので」

　微笑を見せる浅間さん。

　多少の緊張がほぐれましたか？

「それで、なぜ私の事をシングルマザーだと？」

「娘さんが搬送（はんそう）されてから、そこそこの時間が経過したけど。関係者は、君一人しか居ない。また、夫が仕事中でも何らかの連絡があっても良いだろ？　さつき君に謝意を表明するなら、電話口でも可能。なのに、君がこの病室に直接——」

「プライバシーの侵害だぞ！　ほんと、申し訳ありません。御門（みかど）の奴が、気に障る事を」

　長々と無神経に発言するのを遮（さえぎ）る。

　小宮（こみや）さんも、また体調を崩さないか心配ですわ！

「……いえ。見知らぬ人に、看破（かんぱ）されたのは初めてで。署長さんのお知り合いですから。プロファイラーですか？　捜査にも協力を？」

「詐欺師に、霊媒師。超能力者と続いてプロファイラーか。少しは、まともな称号（しょうごう）だね。うんうん」

　浅間さんの疑問に、一人で悦（えつ）に入（い）っていますわ。

「ついでに、事情聴取みたいな事をしようか？　野獣みたいな警察官がするのは、浅間君が怯えちゃうから」

　十中八九（じゅっちゅうはっく）、赤城警部の事ですわ！

　あからさまに、部下を批判しないでくださいませ！

「結構ですわ！　そのくらい、わたくしがやります！　貴方は黙って雑誌でも読んでいなさい！」

「事情聴取ですか？　娘について？」

　やや心配そうな表情を見せた。

　一般の方ですからね。不安を取り除かないと。

「簡単な事実確認ですわ。娘さんの登下校の時間帯等の。世間話と思って構いません」

「そうですか。私が分かる範囲でしたら、答えさせて頂きます」

　予定には無かった事情聴取。

　でも、後々（のちのち）やる事には変わりは無いだろう。

　ならば、時間が空（あ）いている内に。

　やれる事をしないとですわ！

　些細な事が、事件を解決する糸口になるかもしれませんし！