第46話 お花畑みたいな事を期待している方が、不謹慎だぜ?

「ちょ、ちょっと、はだかじゃないよね!?」

「失礼な! ちゃんと下は穿いてます! いやん💓 まつりちゃんに視認されちゃう」


 部屋は就寝用のオレンジ電灯で薄暗い。


 目が暗さに慣れていなければ。


 ぼんやりとしか御門みかどの姿は確認出来ないだろう。


 まったく、風呂上りだと言うのにうざい奴よね。


 祀理まつりさんも。こんな奴の世話をけるなんて。


 ……女神めがみ様と言われるのも納得。


「もう! ちゃんと寝間着ねまきを用意してよ! 風邪をひくよ!」

「そもそも、君達がまねかれざる客だぜ? 自分の部屋ではだかだろうが構わないだろう? なあ? たくわさきぃ!」

「大根のけ物みたいな発音しないでくれる?」


 強引にこの部屋に居座ってる事に対して。


 あからさまに不満らしい。


「たくわんは美味しいから許すけど。何が美人弁護士だ。性格が悪いムチムチ娘じゃないか! けしからん!」


 冷蔵庫を乱暴にけ。


 飲み物を取り出す。


 ぐちぐち文句を言いながら。


「けしからんのは君の発言だよ!……何を飲んでいるの?」

「ぷはー。五臓六腑ごぞうろっぷにエナジードリンクがわたるー!」


 祀理まつりさんの顔がくもる。


 不健康を体現している奴だから。御門みかどは。


「お風呂上りは牛乳かお水にしなよ! 百歩譲ってスポーツドリンク!」

「はいはい。まつりお母さん、血圧が上がっちゃうからね。……そこのヨガインストラクターはアルコール飲料をがぶ飲みしてたけど。どっちが不健康かな?」


 何よ! 文句があるのかしら! 


 ちゃんとアルコールの量は計算してます!


「誰がお母さんだ! 咲さんはちゃんと運動してます! 君は運動不足で不規則な生活習慣――」

「これ以上、祀理まつりの説教を聞いてると寝不足になりそうだよ。うっかり、まつりちゃんの寝床に寝ぼけて突入しちゃうかも💓」


 犯行予告ともとらえられる発言。


 そのせいで、祀理まつりさんは絶句している。


「ひいいい!? さ、咲さん!? 私と一緒に寝てくれますか!? こ、こいつ寝込みを襲う気だから!?」

「……こんな凶悪な犯行声明は久しく聞いてないわね。大丈夫、私が守ってあげるから」





「そもそも、私を標的にする意味が分かんない! 絶対、咲さんを狙うよ! 私が男の立場なら!」

「うーん、祀理まつりさんは自分に対して過小評価しているのかも。……だからと言って、御門みかどに狙われる理由になってないわね」


 彼女を御門みかど毒牙どくがから救う為。


 祀理まつりさんのボディーガードをする。


 とは言っても。同じ布団ふとんで寝るだけ。


 それだけでも。


 不届ふとどき者に対して。抑制効果が期待出来ると思う。


 何か異常を察知すれば。


 すぐに格闘術を決めてやるわよ!


「そりゃあ、十人十色じゅうにんといろだからね。人の趣向しゅこうだって様々さ。……好みのタイプも」


 急に意味ありげに押し黙った。


 こういう時は。


 事件について考察している時だと。


 最近分かった。


「まだ、犯人の標的になる人物について考えてるの? 現時点で小学生の女の子が狙われてるって分かってるじゃない?」

「低学年と高学年。差があり過ぎなんだよ。第一の被害者と第二の被害者は。同じ小学生と言うグループに所属しているけど」


 全然、理解が追いつかない。


 年齢なんて。


 そんなに離れていないでしょうに。


「犯人だって標的の好みのタイプもあるって話さ。……まあ、次で。はっきりと分かるか」

御門みかど、あんた更なる犯行を期待してる――」

「ふあ? さきさん? はらえくんの相手をしないで寝ますよ?」


 まどろみかけている祀理まつりさんに。


 就寝をうながされる。


 うっかり御門みかどの名前を呼んでいる事から。


 疲れ気味なのだろう。


「たかさき君、急に捜査が進展して犯人を逮捕。そんなお花畑みたいな事を期待している方が、不謹慎ふきんしんだぜ? もっと、現実的に――おやすみ」

「な!? 急に話を切り上げたわね!? 私の事を面倒な奴だと思ってるんでしょ!」


 私のいにも無反応。


 やっぱり、こいつとは相性最悪ね。


 ふん!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る