想定外の化物 その肆

第37話 呪われるとは、ひどい誹謗中傷じゃないか。

「あははは! 盛大にヘッドスライディングするとはね! 甲子園出場、おめでとう!」

「お姉さんを傷物きずものにして、喜ぶな! 女神様、痛いです!?」

玉村たまむらさんも、取材だったら普通にだよ! 策士策さくしさくおぼれる! それに、私は女神様じゃないからね!」


 陸上選手みたいに。


 見事なフォームで走って来た玉村たまむら記者。


 が、勢い余って。俺達の目の前で転倒した。


 その為、体中がすり傷と打撲だぼくだろうな。


 現在、自室アパートにて。


 祀理まつりが彼女を治療中。


 お人良しめ。


 自業自得のやからに温情とは。


 ……そんなまつりちゃん。


 大好き! えへへへ!


「泣きっつらはち状態でお疲れちゃん! そうそう! チャラ君に、報酬上乗せを勝手に約束しちゃった💓 !」


 正確には「ポニテ姉さんから伝言『任務終了。見事な働きだったので、数万円プラス』だって」とチャラに告げた。


 それで、彼を追い払った訳だ。


 当の本人は。こちらの意図なんか知らんけど。


「ぬあんだと!? あ、悪魔め!? 協力者と金銭で揉めると厄介なんだからさ!? あーもう最悪!」

「ごにょ、ごにょ耳打ちしてたのは、その事だったの? それは、喜んで退散しちゃうよね」


 恨めしそうな表情を見せる。


 ボロ雑巾ぞうきん状態の記者。


「おいおい? に対して、だまし討ちをするのが悪いんだぜ?」

「やあん!? 全面的に、あたしが悪いので!? 見放さないでぇ、女神様!?」


 やれやれ。祀理まつり懺悔ざんげをし始めたか。


 また、信者を増やして。


 ケースワーカの間でも『女神』としょうされてるからな。


 なんでも、祀理まつりが担当者になると。


 社会復帰を果たす人が多いらしい。


 ま、俺は例外だけど。


 てへっ💓 からかった方が面白いし💓


「だ、だから!? 女神様じゃないし!? なんで、みんな私の事をそう言うのかな!?」


 当の本人が、この反応だからな。たちが悪い。


 無自覚ちゃんめ!


「さて。自分は、それなりに礼儀をわきまえてるからね。玉村君の取材に付き合ってやるよ?」


 祀理まつりの奴が『嘘つくな!』とジト目で主張してくる。


 あえて、見ない振りをしておこう。


「ほ、ほんとに!? みか君、愛してる!」


 地獄から天国に移り住んだ心境かな? 


 ほう。愛しているならそれなりに、ぐふふふ!


「みか君!? 玉村たまむらさん、安易に御門みかどさんと親しくならない様に! 呪われますからね!」

「おい!? 君が俺の新しい人間関係を壊してるよ!? まつりちゃん、おこなの!?」


 呪われるとは、ひどい誹謗中傷ひぼうちゅうしょうじゃないか。


 あることない事、き込んで!


 あ、やきもちなの? 


 もちもち、もっちーですわー! おーほほほ!






 




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