第30話 警察批判一色の展開にならなくて良かったぜ。
「ご苦労だったな、さつき。ほらよ、飲み物」
「……わたくし、途中からの記憶がありませんわ。あら? これは、おいくらでしょうか? 倍の値段で買い取りますわよ?」
記者会見を終えて。
魂の抜け殻となった署長様を。署内の休憩スペースに誘う。
ここには、飲み物や。
今では絶滅寸前のうどんの自販機等が設置されている。
レトロ自販機って奴だな。
「いらねえよ。おごりだ。……ペットボトルのレモンティーにいくらの値をつけるつもりだ!?」
きょとんとした表情で。
こちらを見つめてくる。
相変わらず。金銭感覚が
「じょ、上司を買収ですの!? い、いけません!? 妙な気を回さないでくださいませ!?」
「う、うるせー奴だな!? お前だって、ポケットマネーで部下を世話してんだろうが!?」
完全に自分の事を棚に上げる発言。
「正しい金の使い方だろ? 世話になってる上司様に対して。第一、こんな額じゃあ交際費にもなってねーよ?」
「……正しいお金の使い方ですの? あらあら? 何か
相当、精神をやられてるな。
訳の分からない事まで口走っている。
ポンと
タヌキかよ!?
「……確かに、あのオタク記者の質問には驚いたけどよ。いや、要望か。馬鹿正直に答える方も、どうかと思うぜ?」
「よく要領を得ませんでしたが。わたくしに似せた、人形制作の許可でしたか?」
さつきの姿にインスピレーションが、なんちゃら。
ホビーショーに売り出す為に。当人の許可が必要だとか。
完全に場違いな質問しやがった。
だが、思わぬ反響がネットで起こった。
神対応ならぬ、姫対応だと騒がれている。
さつきが、公序良俗に反しない表現活動を条件に。許可を与えたのだ。
しかも、完成形を
警察の広報活動の意味合いも。あると言えば、あるのだろうが。
……絶対、そんな事は考えてねーよな。
こっちも、クソ真面目かよ!?
「……まあ、警察批判一色の展開にならなくて良かったぜ」
「甘いですわよ! 赤城警部! 捜査の進展が無ければ、いずれ風向きが変化します! 常に矛先は我々に向いている事を――ハンバーガーの自販機ですの!? 何ですのこれ!? こちらは、スナック菓子も!?」
ようやく本調子に戻ったと思えば。
目の前のレトロ自販機に。やっと気付きやがった。
それによ、子供の様に目を輝かせて。はしゃいでやがる。
世俗に
「……さつき、お前、少し休んだらどうだ? 昨夜も、夜の街をパトロールしてただろ? 帰って寝ろ」
「じょ、上司に向かって、な、なんたる屈辱発言!? これが、くっころの心境ですの!?」
令嬢キャラクターって奴か!?
お前は、署長だろうが!?
「今のお前のテンションを考えれば、妥当な判断だろうが!? 俺に慣れないツッコミをさせるのも
「で、ですが。上司たるもの、部下を差し置いて休むべからず! ですわ! それよりも、捜査活動に集中――」
上司の
ぐうーと腹の音が響いた。
俺は、飯だけは抜かない主義だ。時間が空いた時には、必ず喰う。
捜査に集中する為にもだ。
となると。
腹の音を立ててるのは、上司様で。
指摘すると、腹を立てそうだぜ。腹だけに。
「っうう!? は、はしたない音を。か、
急に、しおらしく両手で顔を隠した。
指の隙間から。
ちらちら様子を伺うのも禁止だ!?
反応に苦慮するだろーが!
「しょうがねーなあ。とりあえず、何か喰っとけ。テリヤキバーガーで良いか?」
さつきの返答を聞かずに。
レトロ自販機に小銭を投入しボタンを押す。
「ふえ!? お、お金は自分が払います。えーと、
ツッコミを入れたら負けだ。
金の心配よりも。
ポンコツ具合を不安視してくれ。部下より。
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