第31話 とにかく、何を思いついたか聞かせろ!?
「……そんなに、ふてくされるなよ。日頃から小銭も用意しておけ」
「今時、紙幣が使えない前時代的な自販機がありますの! 最新型を設置する計画を進めなければ!」
結局、さつきが金を払う事は無かった。
理由は述べた通り。
小銭を持ち合わせていねーんだとよ。
そもそもだ。
俺だって、おごられっぱなしは勘弁だ。
金持ちだからって。金を配り回る義務は
「……金銭感覚を養う寄付金だと考えれば、お釣りが返って来そうだぜ」
「ばうばう! がるるる!」
警察犬みたいな
ハンバーガにありつく
いや、さつきだったな。
思わず犬の名前を付けそうになったぜ。
「人間である事を放棄すんな!? どうどう!?」
「ぐるるる! あら? わたくし、またもや一体何を?」
あっという間に
同時に、理性も戻ったらしいな。
「だから言ったじゃねーか。休息も立派な仕事だぜ? 部下に上司の心配をさせるってーのは、どうなんだ?」
「ぐぬぬぬ! わ、分かりましたわよ! これ以上、
一応、自分の事を客観視出来てる……のか?
部下の忠告を無下にしない上司で助かるぜ。
「その前に、カロリー不足ですわね。赤城警部、お! か! わ! り! ですの!」
「へいへい。暴飲暴食にならねーように、さっぱりしたうどんで良いよな?」
管理栄養士の真似事なんて柄じゃねーんだがよ。
うどんの自販機に金を入れようとすると――
「そこに小銭を入れるのですか? そもそも、どうやってうどんが出来上がるのでしょうか? 自販機の中に職人が入っているのでしょうか?」
「怖えーよ!? ホラー自販機だろうが!? ほら、自分で購入してみるか?」
不思議そうに。レトロ自販機を眺めている。
察するに、自分の手で購入ボタンを押したいらしい。
これも社会科見学の一種だ。
小銭をさつきに手渡す。
「では、小銭を投入ですわー! あらあら? お金を入れる音が響いてクセになりそうですわね。そして、このボタンをぽちっと! やりましたわ! 赤城警部!」
ドヤ顔で部下に報告をしてくる。
まさか、授業参観の気分を味わうことになるとは。
「うどんの容器も熱いからな、やけどに注意しろ。
「こ、子ども扱い禁止令ですわ!? 減俸処分を覚悟していますの!?」
俺の財布を人質に取るなよ!
安月給に拍車をかけて、たまるかよ。
「あっという間に、うどんが。旧時代の自販機もやりますわね。それでは、赤城警部に感謝して。いただきます」
「おう。今度は、まともに礼を言えるんだな」
普段通りの育ちの良い娘の
「それで?
「……赤城警部。貴方こそ疲れているのでは無くて? ぽんぽこってwww タヌキの真似事でしょうか?」
完全にぶん殴っていただろうな。
「と言うのは冗談ですわ。一度、この様な軽口を言ってみたかったので」
「……うぜえな、おい! 無理してそんな発言しなくていいからな!」
厳重注意しておかねーと。
俺の精神が持ちこたえられねーからな。
「もう少しで答えが出てきそうなのですが。どうにも――」
うどんをすする動きが止まる。
石像みたいに、微動だにしない。
「赤城警部、
「おいおいおい!? 嫌な予感しかしねーぞ!? とにかく、何を思いついたか聞かせろ!?」
不敵に笑うお前が。何かをやらかしそうで。
いや、ぜってーやらかすぞ、こいつ。
有給休暇でも取らせた方が、いいんじゃねーのか?
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