第21話 ……あいつ!? ドジっ子属性なのかな!?

「……事件に関わると、良い事なんてねーのにさ」


 見よ! この無様ぶざまな格好を! 


 まるで、保健室で過ごしているみたいだな。


「……たかさき君の気が知れないね。厄介事は、警察の領分りょうぶんなのに」


 犯人を逮捕して、新たな被害者を出さない様にする。


 まあ、理解するよ?


 ただ、前にも言ったけど。


 日本の警察は優秀だ。


 明らかな捜査ミスをしなければ。


 おのずと犯人にたどり着くだろう。


 よって、一般人が首を突っ込む必要も無い。


 目撃証言ぐらいの協力で、十分だ。


「……なのに、死体を自ら発見しに行くとは。愚かな行為をしたものだ」


 たかさき君に向けて言ったのか。自分に向けて言ったのか。


 多分、両方だろう。


「……簡単に事件を整理してみるか」


 次の犯行まで時間的余裕は? 


 最初の事件から、二週間ぐらい経過している?


 いや、これからは犯行の間隔かんかくが短くなるだろうな。


 快楽殺人は、自分の欲求が段々と大きくなりがちだ。


 簡単に言えば、欲求を解消した所で。


 もっと解消したくなる。更なる快楽の追求。


 暴走した列車。ブレーキが効かず、やがて大惨事だいさんじに。


 ただ、このパターンだと。


 理性が働かず暴走状態なので。犯行も雑に。


 逮捕するのも、比較的に楽だろう。


 これも、赤城のおっさんにも話をした内容。


 被害者の人数は、現在は二人か。


 少なく見積もって、あと数人犠牲になる可能性。


 今の所、目撃証言が全く無いのが不可思議。


 その一点が、この事件の想定外。


「……どちらにせよ、頑張れ警察! たかさき君、引っ込んでろ! だな」


 こんな事をいちいち考えていたら。


 精神が壊れちゃうもんね! 休息大事!


「ね、ねえ? み、御門みかど君? こ、困ったなあ?」

「……なーに? 祀理まつり? 入浴終了したの?」


 風呂場の方から、祀理まつりの困惑した声が。


 長湯で、のぼせちゃったの?


「いつもの習慣で、着替えを用意するのを忘れちゃってさ!? ど、どうしよう!?」

「ああ、なるほど。気楽な一人暮らしだもんね」


 人目が存在していないからな。どこで着替えようが、自由。


 うっかり、習慣が出てしまったのか。


「別に全裸じゃないのだろう? バスタオルでも巻いて、着替えを取りに来れば?」

「そ、それは、そうだけど!? み、御門みかど君が居るからだよ!?」


 うわ、地味に傷ついちゃうな。


 いくら俺でも、そんな卑劣な事しないさ!


「大丈夫。瞑想めいそうして精神を整えているからさ!」

「ぜ、絶対嘘だ!? 常日頃から瞑想めいそうしている人間じゃないでしょ!?」


 ちぃ!? こしゃくな! 素直にバスタオル姿を視認させて! 


 きっと、体調も回復しそうだから!


「じゃあ、どうするの? うーん。体調悪いけどなあ。祀理まつりには看病してもらってるし。よし! 祀理まつりの下着をあさっちゃ。こほん。着替えを届けようか? そのぐらいの余力はあるからね! 吐きそうだけど!」

「だ、だめだめ!? な、何を考えてるのよ!? 絶対、あさるなよ! ほんと、大人しく静養してて!」


 わがままな奴め! 気をかせたのに。やれやれ。


「選べ! 俺に下着を運ばせるか! 自分から取りに来るのかをな! ぐふふふ!」

「どこの小悪党のセリフ!? 内容が最低だね!? こんな奴、射殺許可当然だよ!? スナイパーライフルで仕留めたい!?」


 おっと、海外ドラマの影響が出てしまったかな? 


 地元警察とFBIが来るまで。


 やりたい放題してやるぜえ!


「ほら? 早く着替えたら? 風邪ひくぞ? 両手で顔をおおっているから」

「も、もし違っていたら、腹にパンチする! そして、追い出すから!」


 やっと決心したのか。


 ……普通に出てきたら。俺の方から視線をそらしたのに。


「……む。ちゃんと両手でふさいでる様だね。最初から、そうしてよね!」

「あのさあ、体調悪い人をなじって楽しいの? 急に『だるまさんが転んだ!』をやりたくなって来たかも? やる? ねえ? やっちゃう?」


 なぜか悪人扱い。


 健全な男の子だと思えば、笑って許してくれるだろ? うんうん。


「やらんでいい! 手早く持って行こう!」


 やっと自分の着替えを入手したらしい。


 祀理まつりの気配がしなくなった。


 ふふふふ。指の隙間から、少しのぞかせてもらったぜ!


 祀理まつりには秘密だ。『バスタオルのヴィーナス』の称号を与えよう!


「……あいつ!? ドジっ子属性なのかな!? 床に下着が、落下してるじゃん!?」


 慌てて多めに下着を持ち出してしまったのだろう。


 ばっちり、白の下着だね!? 寝たふりをしなければ!?


 ぶ、ぶん殴られるかも!?


「……どうも、お騒がせしました。あれ? 寝ちゃったのかな?……な!?」


 自分の失態に赤面しているだろうな、今頃。


 た、狸寝入たぬきねいりじゃないから!?


「……見たのかな!? ねえ、御門みかど君、見ただろ!? 正直に吐け!」

「どちらの意味で吐けと!? 無実だ!? たかさき君!? 肝心な時にいない弁護士だな!? ちくしょー!?」

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