第18話 月夜野署長のありがたいご指摘。

「赤城警部? 小宮こみやさんの取り調べ、終了しましたわ。あの様子だと人畜無害な善人ですわね。やはり、この男では?」

祀理まつりちゃんの人柄に問題はねーよ?……だとよ? 御門坊みかどぼう?」

「残念だったね、さつきちゃん。祀理まつりは何も見てないし。はっきり言えば、雑談レベルだったろ? ぷぷぷぷ。お仕事、お疲れちゃんですわー!」


 あからさまに疑われてる。


 エロい姫署長だ! おっと、失礼な姫署長だ!


「ば、馬鹿にしていますの!? 何か微罪で逮捕して差し上げましょうか!」

「落ち着け、さつき。こう言う奴なんだ。いちいち腹を立てたら負けだぞ?」


 初対面で関節技を披露してくれた恨み。


 忘れぬぞ!


多華たかさんの取り調べも、少し拝見はいけんしましたが。問題なさそうですわね。でも時折、何かぶつぶつ『ミカドヲササゲヨ。カナラズイキノネヲ』と」

「嘘だと言ってよ!? さつきちゃん!? たかさき君、殺意がれてるじゃん!? 問題ありだろうが!?」


 ちくしょう! 意外に根にもつ奴め! 


 妖怪たかさき! おふだ準備しないと!? 


 御朱印ごしゅいん集めの旅に出るかな!?


「で? 祀理まつりは帰ったのか? こんな騒動に巻き込まれて、疲れているんじゃないかな?」

「『御門みかど君が終わるまで、帰りません。待っています』との事ですわ。差し出がましいですが、貴方、小宮こみやさんを大切にしないと罰が当たりますわよ? そもそも、貴方に関わらせない方が、よろしいのでは?」


 ほほう。さつきちゃんにしては、まともなご意見だね。


 今後の商品開発の参考にさせていただきます。なんてな。


「ま、また馬鹿にしている感じですわよ!? この殴りたくなる表情をして!?」

「いやいや。月夜野つきよの署長のありがたいご指摘。ありがとう。せっかくだから、たかさき君にも言ってあげてね?」


 俺なんかよりも。


 たかさき君に説教してくれたまえ。お嬢様。


「そんじゃ、もう帰る。小宮こみやさんを待たせる訳にはいかないからね。さっそく、大切に扱わないと」

「なあ!? まだ、取り調べは終了していませんわよ!?」


 説明するべきことは、赤城のおっさんにした。


 これ以上の長居は、無用だな。


「任意の取り調べだろ? 協力すべきことはしたよ。後は、君たちのお仕事だろ? なあ、赤城のおっさん?」

「まあな。捜査を進める以外、活路かつろは無いらしいぜ。さつき」

「ですから、この不遜ふそんな男の証言をしっかりと!?」

「さつきちゃん? 祀理まつりと一緒に家に送ってくれるかい? もしかしたら、その間、なんでも答えちゃうかもよ?」


 答えるとは言ってないが。高い確率で、エサに喰いつくだろうな。


 ともあれ、取り調べ室から退出したのであった。

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