第5話 咲さん、やっほー!

「今日もお仕事お疲れちゃん! ブラック企業顔負けじゃないか?」

「なんで御門みかど君に労働環境のあれこれを言われるの!? ニートだよね!?」


 時刻は午後8時前。


 これでも普段よりも早い方なのだ。


 大体、午後9時頃帰宅だからね。


 福祉事務は。やることが多いのだよ。えっへん!


「おいおい、ニートには基本的人権が無いのかい? 働いている人と気軽に会話しちゃ駄目なの?……週刊誌の電話番号知ってる? 祀理まつりちゃん?」

「そんな事、言ってないよ!? こ、こら! 私を週刊誌に売るな!」


 彼なら、やりかねない。


 俺には何も恐いもんねーよ! 無敵状態だぜ! やほー!


 とか思ってる節が。


 犯罪者の同級生で。取材を受ける未来だけは、やめてよね? 


 卒業アルバムと写真を提供するのは、嫌だよ?


「なるべく普通の写真をマスコミに提供してくれよ? あまりにも幼いのは恥ずかしいです。えへへへ!」

「その考え方が幼稚だからね!?」


 いつもこんな調子です。


 何も知らない人だと。面を食らってしまうけれども。


 良い意味では素直なのかな?……と言うか、私の思考を把握されてます!?


「そうだ。夕食は? 食べたの?」

「いや、食べてない。昼間は、ハンバーガーセットだったから。カロリー的にも問題ないだろうさ」


 御門みかど君は朝食を抜くことが多々ある。


 となると、今日の食事は昼食のみ? 


 いや、カロリー足りないと思うけど。


「はい、指導です。ちゃんと三食きっちり食べましょう! コンビニに行きますよ!」

「ええー? 大切な保護費を使いたくないよ? 支給されたばっかりだし」


 変な所で真面目か! とツッコミをしたくなる。


 いや、生活の為の保護費だから。


 必要な時に使ってください。




「ほら、御門みかど君、コンビニで求人してるよ? 人手不足を解消しようかな?」

「君は鬼畜かい? コンビニで働けるなら、大抵の所に働ける能力を有しているじゃないか? そもそも、俺は全く使い物にならない人材だぜ? 他の人間を雇った方が、店の為にもなるだろうさ」


 言われてみれば。


 店の接客、掃除、商品の陳列。


 今では、ネット通販の荷物を受け渡し。


 さらに、公共料金の支払い、電子マネー払い等々。

 

 マニュアルも相当数あるんじゃないかな? 


 いきなりコンビニで働かせるのは。


 ハードルが高すぎたみたいだね。


「それに、人手不足解消には無人レジだろ? これからどんどんが、人間の働くを奪っていくのか。ダジャレだぜ!」

「うーん、人間にしか出来ない仕事もあると思うけどなあ。ほら、心のつながりとか、コミュニケーションを必要とする仕事とか? 優しさとか? 感情面?」


 それもバーチャルリアリティーでカバーです! とか言われそう。


 人の力、頑張って!


「……君は、相変わらずだな」

「それって褒めてるの? 馬鹿にしてるの?」


 少しだけ頬がふくらんでしまった。


 意図的に言葉を濁して。


 気になる言い方禁止だよ?


「さてね。君自身が言葉の意味を選択したまえ。どうとらえるかは、自由だよ」

「いやいや、御門みかど君の真意を聞いてるのに。置いていかないでよ!?」


 一足早くコンビニ店内に向かう御門みかど君。


 だけど、真っ先に出て来たよ?


祀理まつり。ここは危険だ! やべー奴がコンビニを占拠してる。他のコンビニにしよう!」

「何!? 強盗でもいたの!?……普通の店内だよ?」


 特に異常はないと思うけど。


 うん? 店員さんと話してる女性は――


「咲さん、やっほー! ほら、御門みかど君? 多華たか さき弁護士だよ? ちゃんと知人には、ご挨拶して!」

「ちっ。ご挨拶が『やっほー!』で大音量で言われる方が迷惑だろ。……余計な真似をしやがって。ふん!」

 

 

 

 

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