第16話。討伐作戦、開始
集合時間20分前。
手紙を書き終えた俺は、魔力が50%しか使えない今でも、違和感なく魔力を使えるように練習し、装備を身につけて宿を出た。
ルーシィはまだ起きていなかったので、『討伐戦に参加してきます。大人しく宿で待っていてください』と書いた手紙を置いてきた。
ゆっくり歩いて5分前にギルド前に到着したのだが、そこには既にそこそこの人数が居た。Cランク1級って、そんなに人数が居るのだろうか? Bランク昇格試験に合格出来てないだけなのかもしれないが。
胸当てとバトルアックスを背負ったウォーレンが前に立ち、話し始める。
「だいぶ集まってるようだから、少し早いが始めるぜ。今回の大討伐だが、敵はアルベールの森のゴブリン約5000体! それに、今回はゴブリンジェネラル、もしくはキングが居る!」
5000体も居るのか。俺が1人で、周囲の被害に気を遣いながら地道にやれば、1日以上かかってしまう程の数だ。まぁ、周囲全部吹き飛ばしていいなら、2属性大威力の
うーん、やっぱりダンジョン行こっかなぁ。生まれてこの方、本気で何かを攻撃したことなんて殆どない。
俺が本気を出そうと魔力を高めただけで、その膨大な魔力が、軽く地割れを引き起こすのだ。そんな迷惑なことをする訳にはいかない。
つまり、ずっと力を抑え続けていて、ストレスが結構溜まっている。何をしても壊れないダンジョンで、思いっきりやって、ここいらでスッキリしたい。
「Cランクは森の外で待機。出てくるゴブリンを1匹たりとも逃すな。Bランクは森の中で均等に散らばり、
……俺は、どこ? まだDランクなんですが。
「いつも通り、死体の処理は後回しだ、どんどん狩れ! それと、上位個体は何をするかわからねぇ!
総員、気を引き締めろ! 以上!」
「「「うぉぉおおお!!!」」」
ウォーレンの話が終わると同時に、冒険者達が気合いの声を張り上げた。凄まじい熱気である。
そのすぐあとに、聞き覚えのある声が。
「おいおい、なんで大討伐にガキがいんだぁ? てめぇまだDランクだろ。どういうことだぁ?」
デーミン。一瞬思い出せなかったが、ギルドに初めて来た時、俺に絡んできた冒険者だ。
「俺が役に立つだろうからってことで、参加を許可されたんです。文句はギルマスにどうぞ」
「はぁ!? お前みたいなガキが役に立つわけねぇだろ! 足手まといにしかならねぇ。ギルマスは何考えてんだ」
ついこの間、Cランク1級の己が、俺に軽くあしらわれた事を覚えていないのだろうか? 都合の悪い事は忘れる、実に頭がお花畑なやつだな。だが、次騒ぎを起こしたらブラックリスト入りというのは、どうやら覚えているようだ。俺に攻撃してくるような様子はない。
デーミンの睨みつけるような視線を
「ウォーレンさん、俺は何ランクのグループに参加すればいいんですか?」
「エミルはBランクの手が足りないところを、遊撃としてフォローしてくれ。お前、気配察知使えんだろ?それで状況確認して、自分で判断しろ」
「何故それを……あ、ウォーレンさん魔眼持ちでしたね。わかりました。頑張ります」
「あぁ、お互いにな」
アルベールの森。
昨日来た時はちょっとゴブリンが多いだけで、ごく普通の森であった筈だが、今日は何か雰囲気が違う。
奥の方から強烈な威圧感を感じる。
それと、近くの冒険者達が殺気立っているのも、雰囲気が違う印象を受ける一因だろう。
「気配察知……5km。これじゃ全部入らないな。10km……よし、入った。意外とこの森広いのか」
気配察知を、例のごとく一瞬だけ範囲拡大する。
5kmで足りるかと思っていたんだけど、全然足りなかった。10kmにした時にやっと、森のど真ん中にボスと思われる巨大な魔力を感知した。
既に森の中の冒険者達はゴブリン狩りを始めているようだ。今現在、手が足りない所はないようだ。俺も、近くにいるやつらを手当り次第に斬っていくか。
20分後。
何度目かの気配察知を発動した時、不自然にボスへと向かっていく気配を見つけた。
なんだろう? 追ってみるか。雑魚ゴブリン共もある程度片付いたし、近くの冒険者も余裕そうだ。
早速、ボスに近づく気配を追う。気配の主は急いでいないのか、すぐに追いついた。
「デーミン……? なんでここに」
気配の主はデーミンであった。彼はCランク。
森の中への侵入は許可されていないはずだ。
取り敢えず、理由を聞いてみようか。
「デーミンさん、何故ここに居るんですか? Cランクは森の中には入っちゃいけないはずですけど」
「あぁん? ……ちっ、またお前か。森の外にいたって大して手柄が稼げねぇじゃねぇか。こんなD級になったばかりのガキは、森の中に居るって言うのによぅ。ジェネラルだかキングだか知らねぇが、いっちょこの俺が討伐してやろうと思ってなぁ? 邪魔すんじゃねーぞ」
この人は一体何を言っているんだろうか?
ゴブリンジェネラルは、一度発生して対応が遅れれば、小さな町が1つ2つ地図から消える、上位危険指定の魔物だ。そんなやつに、たかがC級
「何言ってるんですか。A級が束になってかかる相手ですよ。C級が太刀打ち出来るわけないです」
「うるせぇ! 俺は強いんだよ! そんなのギルドの査定がおかしいだけだ! 付いてくんじゃねぇ!」
そう告げると、デーミンは走り出した。数瞬遅れて、俺も走り出す。デーミンは身体強化で速度を上げているようで、なかなか追いつけない。俺が本気を出せばすぐにでも追いつけるが、そんなことをすれば、軽く地面が陥没する。
それに、地面を通してその衝撃が周囲に伝わる。そうなったら、今の落ち着いた状況を一気に狂わせてしまうかもしれず、下手なことは出来ない。
結果、追いつけないままボスとAランク達が戦闘を行っている場所まで来てしまった。
俺たちの足音を聞いたのか、ウォーレンさんがこっちへと意識を向けた。
「デーミンとエミル!? なぜこ……ぐぁっ!」
「ギルマス!」
「ウォーレンさん!?」
俺たちに気を取られたウォーレンのスキを突き、ゴブリンの上位種がウォーレンさんを投げ飛ばしてきた。俺とデーミンの間を弾丸のような速度で吹っ飛び、背後10m程まで木に何度もぶつかり、
そこには、完全にターゲットを俺たちに定めた、身長5mくらいのゴブリン
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