第12話。アルベールの森
街の中は駆け足。街を出てからは全力疾走で来た為、アルベールの森には約15分程で到着した。
早速、気配察知を使ってゴブリンを探す。今回は一瞬だけ。その一瞬で範囲を500mまで広げ、群れになっているゴブリンを見つけた。
「12時の方向に5体。2時の方向に8体、か。取り敢えず、依頼分の5体を終わらせよう」
音をなるべく立てない様、静かに小走りし、5体のゴブリンが集まっている場所に近づく。距離30m程度で止まり、背中の剣を抜いて風属性の魔力を纏わせて構え、一気に振り抜いた。
「
俺の剣から風の刃が飛び、ゴブリンの首を狩る。5つのゴブリンの頭が、宙に舞った。自分が死んだことも気づかなかっただろう。
まず、魔力使用時の媒体は剣。魔法剣士は、剣に魔法を纏わせて戦う。遠距離魔法も一応使えるが、魔力消費が大きい。剣に魔法を
魔法剣士、なかなかにチートである。いや、チートは俺もか。
それら
魔物死体の放置は禁止なので、炎刃で最初から燃やしたかったが、攻撃範囲が広い飛斬でやると、周囲が燃えかねないのだ。
なら別の技でやれよ。って思った、そこのあなた。楽、したいよね?
魔法剣士は接近戦専門。使える遠距離攻撃は飛斬系と、地面に魔力を通して発動出来る、地属性魔法だけなのだ。その地属性魔法ですら、普通は使えない。俺は膨大な魔力でゴリ押ししてるだけだ。たかがゴブリン程度に近接戦闘なんて面倒だし、かといって魔力もそんなに使う気にはならない。
必然的に、腐特性を持つ闇刃と炎刃は封印。それ以外の飛斬を使って、遠距離から一撃。全滅させてからそれぞれ燃やした方が、楽なのだ。
絶命したゴブリン5体に近づき、高火力で一気に燃やす。僅か20秒程で骨も残さず消えた。2時の方向の8体の群れも同じ戦法で殲滅し、燃やす。再度500m気配察知を発動、発見、殲滅。それを時間も忘れてひたすら繰り返す。道中、薬草採取も忘れずに。
ふと、辺りが薄暗くなっているのに気付く。
この森に着いたのが1時半頃だったので、かれこれ3時間半程夢中になっていたようだ。急いで帰らなくては。普通なら1時間程で終わる依頼だ。きっとエイミーさんが心配しているだろう。
来た時と同じように、街まで全力疾走。街に入ってからは、ぶつからない程度に急いでギルドに向かう。
「エイミーさん、只今戻り――――」
「エミル君! よかったぁぁぁ。もう! すっごく心配してたのよ! まさかゴブリンにやられちゃったのかと……」
「うっ……すみません、ホントに。依頼は無事達成して来ました。かなりの数ゴブリン倒したので、確認お願いします」
「あんまり心配させないでよね。カード貸してもらえる? 読み取るから」
「はい、どうぞ」
俺ギルドカードを、エイミーさんがタブレット型端末に翳し、目を見開く。
「っはぁ!? ゴブリン420体討伐!?」
「そんなにやってました? つい夢中になって」
「ねぇ、エミル君。」
「はい? なんでしょうか?」
「ゴブリンは、群れてた?」
「群れてましたよ。多いのは8。少ないのは4でした」
「そう。ありがとう。とっても重要な情報よ。
恐らく、アルベールの森で、ゴブリンの上位個体が発生している可能性があるわ。ゴブリンは基本群れないから、ほぼ確実ね。それに、これだけ数が増えているのを考えると、ゴブリンジェネラル。最悪、キングが居るかも。私はギルドマスターに、この事を伝えないと 悪いんだけどエミル君、報酬とランク試験の話は隣の受付嬢の所に行ってもらえる?」
「急ぎなら仕方ありません。大丈夫です」
「本当にごめんね。また明日」
ゴブリンジェネラル、最悪キングか。これはテンプレ展開来た? 来ちゃった?? っと、ふざけてる場合じゃないな。
ジェネラルがどれくらい強いのかわからないけど、一目見たい。贅沢言うなら闘ってみたい。超レア魔物だし、今回を逃すと、あと十何年かは出現しないかもしれない。キングだったら数十年に1度ペースだ。
「すみません、エイミーさんがギルマスにお話に行ってしまったので、今回の報酬とランク試験について聞きたいんですけど」
「エミル君ですね? 私はアリーゼ。エイミーから情報が送られてきています。依頼報酬の4千5百イル。追加報酬の29万4千イル。合わせて29万8千5百イルですが、預けますか?」
「はい、お願いします」
「かしこまりました。では、試験についてです。
2日後、数名の受験者と一緒に、Bランク冒険者と模擬戦をして頂きます。その結果次第で、Cランク3級に昇格出来ます。合格基準は極秘ですのでお話できません。試験時間は前日にお知らせします」
「説明ありがとうございます。
ところで、ゴブリンジェネラルが居るかもしれないってことは、討伐隊が組まれるんですよね?俺って参加出来ますか?」
「いいえ。大規模討伐に参加できるのは、Cランク1級からです。経験不足の冒険者が参加しても、足手まといですから。諦めてください」
「そう、ですか……」
アリーゼさんは、瓶底メガネをかけたお堅い感じの美人で、淡々とした話し方をする。ちょっと怖い。
これはさっさと退散するに限る。手短に別れの挨拶を済ませ、ギルドの外に出る。
「このまま宿屋に行ってもいいけど、早く弓欲しいなぁ。寄っちゃおっかなぁ。寄っちゃおぉ。おー!」
なんかちょっと急に変なテンションになって、大きな独り言を言ってしまった。近くにいた数人が、俺を微笑ましいものでも見るかのような目で見てきて、スーパー恥ずかしい。ここもさっさと退散しよう。
視線から逃れて走ってきたので、鍛冶屋にはすぐついてしまった。軽く息を整え、鍛冶屋のドアを開く。
「ごめんくだ――――」
「帰れ。ここはガキの居場所じゃねぇ」
鍛冶屋に入らずドアを閉じて、ドアに張り付きながら、鍛冶屋の看板を確認する。
うん。間違ってない。ちゃんと鍛冶屋だ。
再びドアを開く。
厳つい顔をしたドワーフが仁王立ちしている。
再びドアを閉じる。
うん。めっちゃ怖い。入れない。
昨日来た時、カリーナさんが、気難しいドワーフと夫婦で、この鍛冶屋を経営していると言っていた。気難しいという表現では生温い気がするほど気難しい人だが、多分あの人がその夫だろう。今カリーナさんは、不在なのだろうか? とにかく、カリーナさんが居ないと、あの人とは会話ができない気がする。
今日は諦めて宿屋に戻ろうと踵を返した時、遠くの方に今最も求めている女性が目に入った。
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