エロ少年の名前探し

昼夜

名前探しの少年

 少年はふと思い浮かべた。

 自分の名前を親から貰ったかどうかを。

 村の中で完結している生活で、名前がなくても今まで困った事はなかった。

 おい、お前、君、あんた。

 何も不自由はない。

 鼻をほじくって悪友とスカート目配り巡りの日々。

「すけべのえろ」

 少年には姉がいる。

 姉の名前もそういえば知らない。

 少年は姉に聞いた。名前は何だと。

 ビンタが飛んできた。三つも年上の姉の一撃は、スカート目配り巡りで鍛えた俊足も形無しだ。

「自分の名前は、嫌いだ」

 姉に聞いた。キライダが名前かと。

 鼻で笑われた。しかしそれの方が良かったと言って去っていった。

 少年は姉だけでなく家族にも名前を呼ばれた事がない。

 少年は気になった。

 おとっちゃんに聞こう。

「ガハハ。忘れた。そんなことより筋肉だ」

 少年の名前を忘れたらしい。

 少年の向こう見ずな性格は父親譲りだ。

 おとっちゃんは筋肉を見せびらかして、名前のことはマザーに聞けと言って去っていった。

 おとっちゃんのマザー、少年のお婆ちゃんだ。

 隠居したお婆ちゃんの家に向かう。


 お婆ちゃんは昔は森に住んでいたらしく、お婆ちゃんなのに見た目は少年と変わらない。違うと言えば耳ぐらいだ。

「お婆ちゃん、オレの名前教えて」

 お婆ちゃんは遂にこの時が来てしまったと上を見た。

 少年はお婆ちゃんの名前だけは知っている。エルという。

 森の民の安直でありきたりな名前だという。

 お婆ちゃんは森の民だからか、難しい事を言う。

 少年は親譲りのお馬鹿さん。

 遠回しの言葉を察することは苦手だ。

 だけどお婆ちゃんは森の民。言葉が回りくどい。


 お婆ちゃんは森を出て人里に降りてきて結ばれた。一目惚れでお付き合いして結婚して。

 今の村みたいに名前は二の次だったから、今はもういないお爺ちゃんの家名を知らなかった。

 その時後悔したって言っている。

 まるでギャグだって。

 お婆ちゃんはこれで分かったかという。

 少年は鼻をほじくっていた。

 今の話に名前の答えがあるなんて、考えもしなかった。

 さすがエナシの息子だとお婆ちゃんはため息を吐いた。

 お婆ちゃんはもっと簡単な話をする。


 大馬鹿息子が子をこさえた時、名前を付けてくれとお婆ちゃんに言ってきた。

 だけどお婆ちゃんは最愛の旦那を失くしたばかりで意気消沈。

 だけどしつこく名前を聞かれて思わず怒鳴ったら、大馬鹿息子はそれは良いと喜んで名前を付けた。

 孫に申し訳ないと少し冷静になったという。


 これで分かったかとお婆ちゃんは少年を見るが、少年には分からなかった。

 お婆ちゃんは少年にも謝る。

 少年の名前は大馬鹿息子に自分で子の名前を決めろと怒鳴ったせいで変な名前になってしまったらしい。


「全ての元凶は私の旦那の名字が原因だろうね」


 旦那はカンガイイ爺さんだったよと何処を見るでもなく呟いた。




────

2019/09/24 修正しました。

2019/09/25 修正しました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エロ少年の名前探し 昼夜 @purunpurun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ