俺と妹のこれからについて

第51話 俺と妹のこれからについて

 阿佐ヶ谷霧子。

 俺——阿佐ヶ谷本介の義理の妹だ。

 霧子には異次元空間を操りあらゆる場所を自由に出入りしたり、人や物を転移させる事ができる特別で誰もが羨むような凄い能力がある。

 だけど、俺にとって霧子はただの妹で、ただの家族で、普通の女の子だ。


 俺が小学五年生の時に、霧子は俺の妹になった。

 俺はそれからずっと霧子の事を見てきた。


 最初はなんだか不思議な子だと思っていた。

 照れ屋のようで人の事を黒目の大きな眼でジーッと見てくるし、あんまり喋らないくせにフクロウのぬいぐるみにはよく話しかけていたし、ボーッとしているようで意外と気が利いてテキパキ動くからだ。霧子は俺が初めて出会うタイプの女の子だった。


 やがて俺は霧子を生意気だと思うようになった。

 別に嫉妬とかではなく、霧子が新しい生活に慣れるにつれて俺にイタズラを仕掛けるようになったからだ。俺はあの頃、はっきり言って霧子が嫌いだった。ただでさえよくわからないタイプの人間にイタズラや意地悪な事をされれば、人は拒絶したくもなるだろう。

 でも、今になってみればあれはあれで霧子なりの親愛の表現だったのだと思う。

 霧子は俺が霧子に対して一線を引いているのに気付き、仲の良い兄妹になるために俺の心を開こうとしてくれていたのだ。でも、俺はそれに気付かずに冷たく接してしまっていた。


 それから、公園での一件を境に俺と霧子は仲良くなった。

 あの時俺はトンデモ能力を持つミステリアスモンスター的な存在だった霧子が内面は普通の女の子である事を知り、守ってやらねばならない妹だと認識した。そして霧子も俺が霧子を家族として認めた事を理解したのだろう。

 別に特別仲の良い兄妹ではなく、むしろ俺は素っ気なく霧子に接していたとは思うが、それが逆によそよそしさが消えたという証明になっていた。


 そして、その時には既に霧子の胸には淡い恋心が芽生えていたのだろう。

 普通の少女が抱く、普通の恋心。

 ただ、その少女には特別な能力があって、その恋愛対象は義理の兄だった。

 そういう話だ。


 最初はやけに俺にくっついてきたり、年甲斐もなく手を繋ぎたがるとかその程度だった。それが一緒に寝たがったり、やがて風呂に背中を流しにくるようにまでなった。そして思春期を迎え、霧子は俺への恋心を隠す事もなくなっていった。


 俺が徐々にエスカレートしていく霧子の求愛に戸惑ったように、霧子もきっと悩み続けていたはずだ。どうすれば俺に振り向いてもらえるのか、妹ではなく女の子として見てもらえるのか、本当に義理の兄を好きでい続けていいのだろうか。

 そんな事を、俺よりもずっと考え続けていたはずだ。


 そして、俺に振られた今も————


 これは、そんな俺と妹の恋愛の物語だ。

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