第47話 俺と妹の恋愛について10
霧子と俺が『普通の兄妹』になってから四日が過ぎた。
普通の兄妹になったとはいえ、俺達の生活が大きく変わったという事は特にない。ただ少し変わったのは、霧子が俺に過剰に甘えてくる事が無くなった事くらいだろうか。それから、霧子が能力を使って俺を『観察』してくる事もなくなった。
あとは、霧子が少し明るくなったような気がする。
普段よく見せていた、無表情で目を爛々と輝かせる顔をする事がなくなり、年相応の女の子らしく明るい表情を見せる事が増えた。
ただ、霧子自身『普通の妹』というものがどういうものなのかまだ掴めていないのか、時折あからさまに戸惑っている様子を見せる事もあるが、結果的に俺はこれでよかったのだと思う。
こうして俺達はお互いに『普通の兄妹』に慣れてゆき、やがては本当に『普通の兄妹』なれるのだろう。
その事について俺は少し寂しく思わない事もないが、そこは俺が言い出した事なのだから、文句を言う事はできない。
「阿佐ヶ谷。おい、阿佐ヶ谷」
名前を呼ばれてそちらを見ると、水属性ゴリラこと金田が、俺の机の横に立っていた。
「何ボーッとしてんだよ。昼飯いくぞ」
どうやら俺が物思いにふけっているうちに四時間目が終わり、昼休みに突入していたらしい。俺は鞄から弁当を取り出して、食堂へと向かうことにする。
「どうした阿佐ヶ谷、お前最近ボーッとしてること多くないか? もしかしてまだ霧子ちゃんと喧嘩してるのか?」
「とっくに仲直りしたよ。じゃないと弁当なんて作ってもらえないだろ」
俺はそう言って、手にした弁当袋をぶらぶらと金田に見せびらかした。そういえば、あの日から弁当にハートマークが混入している事もなくなった。
「ならいいんだけどよ。お前最近なんか変だぞ」
「人間、生活に変化があると良かれ悪かれ戸惑いを感じるものなんだ」
「はぁ?」
そんな事を話しながら歩いていると、俺は背後から凄まじい殺気を感じて振り返った。
すると、廊下の奥から髪の毛を逆立てた小動物————否、静電気により怒髪天となった桜庭がこちらに向かってズンズンと歩いて来ている。
「先輩ぃぃぃぃぃぃい!!!!!!」
俺は身の危険を感じてその場から走り出そうとしたが遅かった。
桜庭の手から放たれた電撃が俺の背中に命中し、俺はスタンガンを喰らったかのような衝撃を感じてその場に倒れ込む。すると桜庭は、倒れた俺の首根っこを掴むと、見かけによらぬ腕力でズルズルと俺をどこかに引きずってゆく。
金田はただポカンとして、俺が桜庭に拉致されてゆくのを眺めていた。全く、友達がいの無い奴である。
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