第26話 兄妹混浴劇場3
ジョー「クソ! ここも奴等の支配下か!」
ナタリー「カマキリだけにキリがないわね」
ジョー「まだジョークを言う気力は残っているようだな! ここをなんとかキリ抜けるぞ! カマキリだけにな!」
ナタリー「全く、この村に来てからキリキリマイね。カマキリだけにね」
ジョー「なぁに、明日の今頃にはワインを飲みながらカマンベールでもかじってるさ!」
ナタリー「カマキリだけに、でしょう?」
ジョー「そういう事だ! 行くぞ!」
救援信号を受けて二人が辿り着いた教会は、既に巨大なカマキリ達に占拠されていた……。ゲイルの残した手帳を手に入れた二人は、研究所へ向かうために教会からの脱出を試みる。果たして二人はこの窮地を脱する事ができるのか……▶︎▶︎▶︎Next Chapter
「ふーっ」
ふと時計を見ると、時刻はちょうど深夜0時を回ったところであった。
霧子のせいでモヤモヤした状態でゲームを始める事になってしまったが、流石は期待していた人気シリーズというだけあってゲーム自体は面白かった。敵が狂った村人とカマキリばかりなのに面白いのは、やはり主人公のジョーとナタリーの洋画のような軽快な掛け合いのおかげだろう。
すっかり遅くなってしまったが、俺は風呂に入る事にした。
寝巻きを持って一階に降りると電気が消えていたので、霧子は多分自分の部屋にいるのだろう。俺はジョーのように辺りを警戒しながら脱衣所へと向かった。そして薄暗い廊下は正直ちょっと怖かった。
風呂の追い焚きボタンを押して脱衣所で服を脱いだ俺は、風呂場に入りシャワーで軽く汗を流す。そして椅子に座り、俺専用のトニックシャンプーで髪を洗い始めた。因みに霧子用のシャンプーは俺のより結構高い。まぁ、こればかりは女の子である霧子に不満を言ったりはしない。
しかし、ホラーゲームをしたり怖い映画を観た後のシャンプーというのは、なぜか背後に気配を感じてやけに不安になる。今俺の背後に巨大カマキリがいたとしても目を開ける事すらできないというシチュエーションはかなり怖い。
ワシワシと急ぎ目にシャンプーを終えた俺は、手探りで蛇口を捻り、シャワーで泡を洗い流す。視界さえ確保できればもう怖くな————
「オニイチャン」
「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!??」
突然背後から声を掛けられ、俺は風呂椅子から転がり落ちた。蛇口で頭を打ってかなり痛かったがそれどころではない。咄嗟に掴んだシャンプーボトルを構えて背後を確認すると、そこにはスクール水着を着た霧子が正座していた。
「お、おま、おま、お前……ふざけんな!!」
俺は基本的に他人に暴言は吐かないが、今だけは許して欲しい。本当に死ぬ程驚いたのだ。
「どうした!? なんだ!? どうしましたか!?」
俺がパニックになりながら問うと、霧子は上目遣いにおずおずと答える。
「一人でいるのが怖くて……」
「何が怖い!?」
「お兄ちゃんのゲーム見てたら怖くなっちゃって……」
「え? いや、お前部屋に来なかっただろ」
そうだ、先程霧子は「後で覗きに行くかも」とは言っていたが、結局俺の部屋に来る事はなかった。
「ううん。9時くらいからずっと見てたよ。邪魔したら悪いから後ろで」
なるほど。どうやら霧子は俺の背後に異次元空間を開けてそこからゲームを見ていたらしい。気配を完璧に消して。そっちの方が怖い。
「だからって風呂にまで入ってくるなよ……お前、最近は乱入してこなくなったじゃないか」
「だって一緒に入ろうとするとお兄ちゃん怒るんだもん。でも、今日は怖かったから……」
そりゃあ怒るだろう。年頃も年頃の妹が目を血走らせてタオル一枚で背中を流しに風呂に乱入してきたら兄として怒らない筈がない。しかし、霧子が今水着を着ているという事は多少俺に対する配慮をしてくれたという事だろう。
「仕方ないな……じゃあ、俺は体洗うから、湯船に入ってろ」
「背中流そうか? 脅かしちゃったお詫びに……」
「……ん、頼む」
「やったぁ。……でも、あの、お兄ちゃん……ジョーが」
「ジョー? あっ!?」
そう、ひっくり返ったままの俺は、ジョーが丸見えだったのだ。幸か不幸か俺のジョーは先程の恐怖で収縮し、リトルジョーだった。
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