第25話 兄妹混浴劇場2
「わかった、白状するよ。今日新しいゲーム買ってきたから、一秒でも早くやりたいんだよ」
「あ、そうなんだ。じゃあ、楽しんでね」
霧子はそう言ってあっさりとその場を去ろうとし、俺は予想とは違う反応に拍子抜けた。
「なんだ、お前はやらないのか?」
「だって、一人でやりたいんでしょ?」
「まぁ、そのつもりだったけど……」
「私だってそのくらい理解があるんだヨ。お兄ちゃんもお年頃だもんネ」
なんだか話が怪しい方向に転がり始めた。霧子が頻繁に召喚する妖怪、『妖怪ハナシコロガシ』だ。
「待て、お前何を勘違いしてるんだ?」
「だって、お兄ちゃんいつもなら新しいゲームを買ってきたら普通に教えてくれるもん。つまり私に知られたら恥ずかしいようなゲームって事だよね?」
「いや、ちょっと待て、知られたくないのベクトルが……」
「いいの、何も言わないで。私、お兄ちゃんの事観察するの好きだけど、そんなところまで観察したりしないから。なんならしばらく二階に上がらないから、好きなだけ恥ずかしいゲームして? ね?」
こやつ自分の兄を観察するのが好きだと堂々と言いおった。いや、それはもう知っているからいいが、誤解されたままでは兄の股間に……じゃなくて、沽券に関わる。しかも慈母のような優しい眼差しを向けてくるのが非常に腹が立つ。
「霧子、いつも言っているけど、お前は人の話を聞け」
「うん。聞いてるヨ」
「いいか、まず俺が買ってきたのは恥ずかしいゲームではない。わかるか?」
「うん。どこに出しても恥ずかしくないゲームを買ってきたんだね」
「どこに出すつもりもないがそうだ。俺は恥ずかしいゲームではなくて、怖いゲームを買ってきた。恥ずかしいゲームとは真逆の超怖いゲームだ。だから雰囲気を楽しむために一人でやろうと思っていたんだ」
「なるほど……。うん、私怖いのダメだからお兄ちゃん一人で満足するまで楽しんでいいよ。うわー、残念だなぁ、怖いのじゃなければ一緒にやったのになぁ。じゃあ、私はお兄ちゃんの思惑通り、しばらく二階には上がらないからゆっくり楽しんでね。わー、怖いなぁ」
クソ! ダメだこの妹! 脳味噌まで異次元空間に繋がっていやがる! まともに会話ができない事がここまでストレスだった事は初めてだ。
「あー、もう! めんどくさい! ちょっと待ってろ!」
そう言って俺は、部屋からまだ封も開けていないゲームのパッケージを持ってきて霧子に突きつける。それには銃を構えたおっさんと巨大なカマキリが描かれていた。
「見ろ! これが俺が今からやるゲームだ!」
「あれ? 本当に怖いのだったんだ」
「だからそう言っただろうが」
「じゃあ、ゆっくり楽しんでね」
「で、同じ事を聞くけど、お前はやらないのか?」
「うん。私怖いの苦手だし、お兄ちゃん一人で楽しみたいんでしょ? 後でちょっと見に行くかもしれないけど」
霧子はそう言ってさっさと一階へと降りていった。そして取り残された俺には精神的疲労だけが残った。
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