Once upon a time...

 …



「…イワビー、もうちょっと抑えて!フルルはもっと丁寧に!ジェーンは少し落ち着いて!コウテイはもっと明るく!わかった?」


「「ああ。」」「はい。」「うん。」


 ここはPPPのレッスン場。

 今日は新しいことに挑戦してみようと、振付けなどを変えてみているところだ。

 新しいとは言っても、もう私たちも慣れてきた。

 もうすぐ完成する、このまま完成まで言ってしまおう。


「じゃあ、もういっk…!?」


 …唐突な頭痛。

 思わず頭を押さえてしまう。


「プリンセスさん!?」


「っ、プリンセスさん大丈夫ですか!?」


 マーゲイとジェーンが近寄ってくる。


「だ、大丈夫…だから…。」


「大丈夫じゃないですよ!」


 絞り出した言葉もジェーンに遮られてしまう。

 だめだ、どんどん痛くなる…。


「…プリンセスさん、一度休んでください。良くなったらでいいですから。」


 マーゲイが私を諭すように言う。

 でも、私がいないと…。


「そうだぞ。それに、そんな体調で無理してやられたらこっちも迷惑だ。」


 イワビーが本心を告げる。

 …それは、そうだろう。

 もう…仕方ないか…。


「ごめん…なさい…。」


 思わず涙が零れる。

 これだけ指示も出していながらこんなことになるなんて…。

 情けない。


「…もー、泣くなよー!」


「気に病むことないんですよ?」


 でも…。


「私たちは大丈夫だ。ゆっくり休んでくれ。」


「できるだけ私も注意指導はしておきますから。」


「ジャパリまんあげる〜。これ食べて休みなよ〜。」


 みんな…。


「あり…がとう…。」


 ジャパリまんを受け取る。


「私達は練習してるから、治ったら来てくださいね。治らなかったら大丈夫ですから。」


「…うん…。」


 きっと、私の顔はクシャクシャだろう。

 こんなこと、前まで無かったのに…。



 …



 楽屋で独り休む。

 なんで、こうなったんだろう…。

 頭痛の中、ぼんやり考える。

 いつもはこんなこともない。

 今日の天気は快晴で、偏頭痛でもないはず。

 昨日夜ふかししてもいない。

 …なんで?


「…っ!?ぅぁぁ…」


 急に更に酷くなった。

 うめき声が漏れる。


「…。」


 声も出ない中、何かが浮かんでくる…。




『私、ロイヤルペンギンのロイヤルっていいます!』


『あっ、ご、ごめんなさい!』


『…皆さんみたいに踊ったり歌ったりできるように頑張ります!』




 …これは、昔の私?

 こんなに初々しく、こんなに新鮮に…。

 でも、PPPは私が呼びかけて作ったグループのはず…。




『いいと思います!最高の演出ができそうですよ!』


『絶対、成功させましょう…!』


『やりましたね、皆さん!』




 あぁ。

 なんでこんなものが浮かんでくるんだろう。

 私は知らないのに。


 すごく、私のことのように感じる。



 …



「…セスさん、プリンセスさん!」


「…ふぇ?」


 …寝ていたようだ。


「大丈夫か?」


 ジェーンとコウテイが私の顔を覗き込んでいる。


「うん…もう大丈夫。」


 そうだ、頭が痛くて休んでたんだ。

 …それだけだっけ?

 何か大切なことを忘れてる気もする…。


「…?どうかしたのか?」


 コウテイが問いかけてくる。


「…ありがとうございます。」


「「…え?」」


「ううん、何でもないっ。」


 なんでこんな事を言ったのか、私にもわからない。

 ただ、言わなければならない気がした。


「大丈夫なのか?」


「まだダメなんじゃないですか?」


「…もう大丈夫よ、練習しましょう?」


 笑顔で答える。


「…じゃあ、信じますからね?」


「うん。…行きましょう?」


「…ああ。」「はい。」


 私は、二人の先を行く。

 もう遅れない。

 きっと今の私は、これでいいから。



 …

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