[カミヒトエ1周年&獣楽20000PV記念]楽園のハロウィン
「っくぅ〜…。」
座ったまま思いっきり伸びをする。
疲れた…。
また徹夜か…。
「お疲れ様。大丈夫?」
「姉さん…。疲れた…。」
机に伏せる。
…もう帰りたい。
「…もう帰っていいわよ。疲れたでしょ?」
「本当…?ありがとう…。」
…眠い。
徹夜したら眠くなくなるなんてことは無い。
早く帰りたい。
…
「…はぁ。」
疲れの溜まった足を動かし、家へと向かう。
周りを見ると、よくわからない服装をしたフレンズや人が沢山いた。
…何だ?
腕のタイプツーを見ると、今日は10/31と表示されている。。
「あ、ハロウィンか。」
…コンビニでクッキーでも買っていこうかな?
実際絡んできそうな人やフレンズは居るしね。
そう思って、コンビニへと入った。
…
「ありがとうございましたー。」
小さい箱だが、クッキーを買った。
これで多少絡まれても…
「あ、シキだー。」
「脳味噌をよこせー!」
「ん?」
…早速か。
「フルルさん、グレープさん。満喫してますね…。」
フンボルトペンギンの二人組、フルルさんとグレープさんだ。
二人とも当然のように仮装している。
二人とも揃ってゾンビだ。
緑の肌や血糊などでいつも以上に何を考えているかわからないフルルさんと、それに合わせたグレープさん。
二人ともよく合っている。
「君は…仕事だったのか?お疲れ様。」
「はは…ありがとうございます。」
「目が笑ってないよ〜?」
笑ってもいられないだろう。
また徹夜、ジェーンさんに会いたいんだ。
「ね…」
「うん。」
なんか二人がやってる。
待て、この感じだと…
「「Trick or Treat!」」
あぁ、やっぱりか。
この為に買ったんだ、むしろ言ってくれなきゃ困ったね。
「はい、コンビニのクッキーですが。」
「わーい!」
「シキ君、お菓子持ってたの?」
「あなた方みたいに絡んでくる人が居るだろうなーって思ったんですよ。」
「読めてたか…。」
どうせ大体イベントの時はこうやって動き出すのがこの二人だ。
読めるも何もほぼ毎回のことだしね。
…まぁ、他にも居そうだけど。
「グレープ君、あっち〜。」
「ちょっと、引っ張らないで。…ごめん、シキ君。また今度ね。」
「はい、さようなら。」
グレープさんはフルルさんに引きずられて行った。
…幸せそうだな。
さて、帰ろう。
…
「おっ?シキ、心臓をよこせー!」
「あーくまーのちーからー!みーにーつーけたー!」
「えぇ…?」
…別の組だ。
くっ、早く帰りたいのに…!
でももう時刻は六時、確かに今は仮装している人もフレンズも多いだろう。
「イワビーさん、烏先さん。こんばんは。」
イワトビペンギンのイワビーさんと、その恋人のイカこと
イワビーさんは尻尾や羽を着けて悪魔の仮装をしているが、烏先さんはスーツだ。
「烏先さん、仮装しないんですか?」
「今日は仕事があって、それで帰る途中に合流してそのままなんすよ。」
「あぁ…。お疲れ様っす。」
「いえいえそちらこそ…。」
…なんだこの空気。
ハロウィンとは思えないくらい平和なサラリーマンの会話だぞ。
「な、トビヤ…。」
「俺も言うの?」
「頼むよ〜。」
「仕方ないなぁ…。」
あぁ、また何か話して…って、これまた来るんじゃないのか?
「「Trick or Treat!」」
…やっぱり。
予想通りだよ…。
「…はい、クッキーでよければですが。」
「お菓子持ってたんすか?」
「買ったんですよ。絡まれたら面倒なので。」
「へへっ、わりーな。…うまっ。」
謝る気は無いみたいだ。
まぁ、これはこれで悪くないとも思ってはいるが…。
早く帰りたい…。
「シキはこの後はどうするんだ?」
「俺は帰りますよ。早く会いたいんです。」
「あぁ…。じゃあ、早く帰ってあげた方がよさそうっすね。」
「では、俺はこの辺で失礼しますね。二人とも楽しんでください。」
それだけ言って立ち去る。
少し無愛想かとも思ってしまうが、早く帰りたい。
まぁ、あの二人なら気にせず楽しめるだろう。
…
「おっターゲット発見ン。」
「行くぞ。」
「…ん?」
…また絡まれただと?
今日はツイてないな。
「…こんばんは、コウテイさんと奥都さん。」
コウテイペンギンのコウテイさんとその恋人、イカと来ればタコな
コウテイさんも奥都さんもフランケンシュタインのような仮装をしている。
継ぎ接ぎのような模様と青い肌、頭に刺さったボルトは人造人間のテンプレだろう。
「いや〜仕事ですか?お疲れ様です。」
「ははっ、休みが欲しいですよ。」
「目が笑ってないが…大丈夫か?」
さっきからずっとこんな感じだ。
目が笑ってないのなんて気にしてられない。
なんで『もしかしたら来るかも』って考えてた人たちが全員来るんだ?
「ええ、大丈夫ですよ。」
「あ〜…呼び止めといてあれですけど、辛いなら早く帰った方がいいですよ。」
「はい…。ありがとうございます。」
このタコ…優しいッ!
まぁそもそもここで会わなければこうはなっていないということは置いておこう。
「なぁ…。」
「多分持ってないんじゃない?」
「一応言うだけ言ってみないか?」
「ん、了解。」
…さて、こんな感じの会話。
聡明な読者の皆さんは次に何が来るか、もうお分かりだろう。
そう、
「「Trick or Treat!」」
こいつだ。
コンビニクッキーはそこまで入ってないので、もうすぐ無くなってしまう。
「はい、クッキーどうぞ。」
「持ってた!?あ、ありがとうございます。」
「ほら、言ってみるものだろう?ありがとう、シキ。」
「コウちゃんお手柄〜…。」
まぁ普通はこんなの想定してお菓子買ったりしないよね。
…俺何やってんのかな。
はぁ、早く帰ろう。
「じゃあ、俺はこの辺で失礼しますね。」
「あっはい、さようなら。」
「ああ、またな。」
二人と別れて帰路につく。
さて、家まではそこまで遠くない。
さっさと帰ってしまおう。
…
来る予感はしていた。
「あら?シキじゃない!」
「節来さん、こんばんは。」
「…プリンセスさん、紅学さん。こんばんは。」
ロイヤルペンギンのプリンセスさんと、その恋人の
プリンセスさんは…名前の通りのプリンセスといった黒いドレスを着ていて、近くにいる紅学さんは…吸血鬼っぽいマントや牙を着けているが、王冠などで少し王族っぽい雰囲気を出している。
姫と王子のセットかな?
「仕事終わりですか?お疲れ様です。」
「ありがとうございます…。」
「元気無いわね…。」
もう七時だぞ?
これじゃあ姉さんに代わってもらった意味が無い。
「時間も時間ですし…。」
「あー…いや、もしかしなくても僕ら邪魔ですかね?」
「あら、そうだった…?」
「いや、別に大丈夫ですよ。」
…まぁ、ジェーンさんに早く会いたいが、ここで関係を悪化させる方がダメだろう。
「じゃあ、手短に済ませちゃおうか。」
「そうね…行゛く゛わ゛よ゛っ!」
「「Trick or Treat!」」
本当に手短に済ませてきた。
ありがたいな。
「はい、クッキーです。」
「「って、お菓子持って
「イタズラされたくなかったので買ったんですよ。」
「あぁ…あぁ?」
凄く反応が大きいな。
…いや、普通か?
…もうわかんないね。
「とりあえず、ありがとうございます。」
「いえ、気にしなくていいですよ。じゃあ、俺はこの辺で失礼しますね。」
「ええ、またね。」
「はい、さようなら。」
…なんか疲れた。
元から疲れてたのに更に疲れた。
早く帰ろう…って、これ何回目だっけ。
はぁ…。
…
やっと、やっと帰ってこられた。
凄く長かった気がする。
いつもはここまで時間も掛からないのに、今日は長かった。
でも、楽しかったからいいかな…。
そんな事を考えながらドアを開ける。
「ただいま帰りました〜。」
「もう!遅いです!魂ください!」
「おぉっ?」
俺を出迎えたのは、黒いローブに全身を包んだ死神…の仮装をしたジェーンさんだった。
「ジェーンさん…。」
「もう、今日は早く帰ってくるって義姉さんから連絡があったから待ってたのに…。」
「ごめんなさい…。」
俺も早く帰りたかった…。
玄関先に嗚咽が響く。
「もう…。」
「あぁ、泣かないでください…。」
「わたし…すごく…こわくって…。もう…もどって…こないのかと…おもって…」
俺に抱きつき、泣きながら彼女は言う。
申し訳ない…。
「ごめんなさい…。」
「…許しません。」
うーん…困ったな。
「どうしたら許してくれますか?」
「…ck…ea…」
「…はい?」
「Trick or Treatです!」
…なるほどね。
お菓子をくれるか、いたずらさせろと。
そうすれば許してくれるのか。
じゃあ、クッキーを…。
「あ。」
「ふぇ?」
クッキーがない!
あげすぎた!
「…ジェーンさん。」
「はい…。」
「…いたずらして、いいですよ。」
「…!」
彼女が顔を上げる。
希望に満ちた顔になっている。
「…じゃあ、お風呂浴びたりとか、いろいろ済ませてください。」
「…はい。」
「その後は…わかってますね?」
「…はい。」
途端に上機嫌になった。
満面の笑みをこちらに向けている。
どうやら、俺はもう魂を奪われてしまったようだ。
………
昨夜は非常に熱い夜だった。
今日は寝坊してしまったりして、朝…というか、午前がかなり大変になったが、それでもまだ日常は回っている。
この平和な生活がいつまでも続く事を祈って、ここにこの収穫祭の出来事を綴っておこう。
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