コミュ障吸血鬼、安心感を得る
あまりの急展開に、思考が追い付かない。
やっぱりルルは吸血鬼なんだ、としか思えない。
「さ、お姉様、散歩の続きをしましょう」
そう言って振り向いたルルの口元には血が垂れている。
しかも笑顔で。
元人間の僕には刺激が強すぎて、大丈夫だと分かってはいてもこれ以上一緒にいると倫理的に危ないと思った僕は、首を横に振った。
「……帰る……」
そう告げた。
「そ、そうですか? わかりました。戻りましょう」
そんな感じで、家に戻ることになった。
◆
家に戻ってきた。
なんとなくリビングに行くと、アンナがいた。
僕に気づいたアンナが話しかけてきた。
「お、おかえり、ティアナ」
僕の機嫌をうかがっているようだ。
そんなことはお構いなしに、僕は足早にアンナに近づいていく。
目の前まで来たところでアンナに抱き着く。
「えっ? えっ? えっ? ティアナ?」
困惑するアンナを無視(スルー)して、アンナのお腹に顔を埋(うず)める。
すると、不思議と気持ちが安らいでいった。
やっぱり、なんだかんだでアンナの傍が一番落ち着く。
「ティ、ティアナが私に抱き着いて……! 可愛い! 尊い! 萌える! 神のような三拍子を兼ね備えるなんて、ティアナは超絶天使だわ……!」
そう。コレさえなければ。
そう思った矢先、奇跡が起こった。
「ハッ! ……コホン。ティアナ、どうしたの? 外で何かあったの?」
あ、あのアンナが、欲望を抑えた……!?
もしや、僕の扱いが酷すぎて風邪でも引いたのでは!?
「貴女、風邪でも引いたの?」
ルルも同じことを思ったみたいだ。
「引いてないわよ! これ以上ティアナに嫌われたくないからに決まってるでしょう!? ティアナに嫌われるくらいなら死んでやるわ!」
それを言ったら台無しだよ……。
でも、そっか。
ルルが言いたかったことが、今わかった。
アンナが僕のことを嫌いにならないと断言した理由が。
帰ってきてからのアンナの言動は、僕を嫌いになったものじゃなくて、僕に嫌われないようにするものだった。
僕の中のモヤモヤが一気に晴れ、今までに無い安心感が押し寄せてきた。
そして、無性に嬉しくなった僕は、抱き着く力を強めた。
「ティアナ? 本当にどうしたの?」
「……アンナのこと……嫌いにならないよ……。だから……元気、出して……?」
そう言いながら、アンナの目を見つめる。
それから少しの間、誰も何も喋らなかった。
ようやく喋った最初の一人は、アンナだった。
「……ちょっと、頬つねってもらえない?」
「わかったわ。──どお?」
「
この二人、変なところで団結力高いよね。
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