コミュ障吸血鬼、甘える
「
「フフフ、なんて喋ってるかわからないわねぇ!」
……そうでもなかったみたい。
……ん? よく考えたら、今のこの状況を端(はた)から見たら、すごい状況じゃない?
騎士のお姉さん(アンナ)が、女の子(僕)に抱き着かれ、もう一人の女の子|(ルル)に頬を引っ張られて離してもらえない。
しかも、抱き着いてる女の子(僕)も、頬を引っ張ってる女の子|(ルル)も、吸血鬼っていう……。
うん。やっぱり、すごい状況だ。
──それでも僕は、抱き着くのをやめない。
「この際だから、私がお姉様と寝るのを認めるまでやめないわよ!」
「はぁ!?
怒ってるのは分かるけど、頬を引っ張られているせいで、なに言ってるのかさっぱり分からない。
というか、ルルはどういう意味で言ったの?
同じ部屋で一緒に睡眠するって意味だよね?
そうじゃなきゃこっちからお断りするよ?
アンナはどんな意味だろうと反対だろうけど……。
「〜〜〜っもう! さっさと離しなさいよ!」
あっ、抜け出した。
「なっ、なんで夜の吸血鬼より力強いのよ! この化け物!」
「本物の化け物に言われたくないわよ! この化け物!」
「……どっちもどっち……」
『えっ……?』
しばらく無言の時間が流れる。
──あれ? 僕、何か変なこと言った?
「……話を戻すけれど、外で何かあったの?」
ようやく口を開いたと思ったら話を戻された。
結局、今の無言の時間はなんだったのか……。
「私とお姉様を性的に弄ぼうとする輩がいたから血を吸っただけよ」
なんでもないことのように話すルル。
それが僕にとってトラウマ級に衝撃的なことだったとは夢にも思っていないみたいだ。
それを聞いたアンナは、話と僕の現状から察したのか核心を突いた質問をした。
「……あなた……それ、もしかしてティアナの目の前でやったりしてないでしょうね?」
「したわよ。それがどうかしたの?」
「……口から、血、垂れてた……」
これまたなんでもないことのように話すルル。
そして、僕の呟きを聞いたアンナは、特大の溜息を吐いた。
「あのね……ティアナは今でこそ吸血鬼だけど、元は人間なのよ? そんなティアナの目の前でそんなもの見せたらトラウマになってもおかしくないわよ……」
「!? そ、そうだったわ……! お、お姉様! すみませんでした! 許してください!」
「……イヤ……」
ムリ。絶対にムリ。
漫画とかだと見られるレベルだけど、現実だと血の見た目と匂いも相まってグロテスク極まりないレベルだもん。
絶対に許せない。
「そんな……っ。ど、どうしたら許してくれますか!?」
「ティアナが何かされて許したことはないわ。諦めることね」
「そうだった……」
経験者は語る。
でも、なんでそんなに誇り高い感じなの?
べつに誇れることじゃないよ?
まさか、僕に最初に許されなかったことでマウント取ろうとしてる……?
べつに誇れることじゃないよ?(大事なことなので二回目)
まぁ、思っただけだからアンナには届いてないけど。
「怖かったわね……大丈夫よ」
そう言って僕を優しくギュッと抱き締める。
アンナが、珍しくお姉さんっぽいことしてくれてる……!
──今のうちに、甘えられるだけ甘えよう!
そう思った僕は、アンナにこう言った。
「……頭、撫でて……」
そう言った後、なぜか再び無言の時間が流れた。
不思議に思った僕は、恐る恐る顔を上げてアンナの顔を見る。
そこには、喜びが湧き上がっている最中のニヨニヨしたアンナの顔があった。
──あっ、これ、確実に間違えた……。
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