コミュ障吸血鬼、帰宅する
二人の間に入った僕は、
「……大人が、取っ組み合いする、なんて、みっともない……」
とだけ言った。
すると、ルルが僕にくっ付きながら
「そうよ、みっともない。お姉様が笑ってるところを見られた。それでいいじゃない。ね、お姉様?」
と言った。
僕はそれに頷く。
僕が頷いたのを見た二人は、気まずそうにしながら
「すみませんでした……」
と謝った。
ところがアンナはすぐに表情を怒りに変えた。
「なんであなたが偉そうにしてるのよ? 燃やすわよ?」
「ヒィッ!?」
アンナにトラウマを抉られ怯えた様子で、ルルは僕の背後に隠れた。
そんなアンナに向けて僕はジト目を送る。
「てぃ、ティアナ? なんでそんなジトッとした目で私を見るの?」
「……みっともなく、喧嘩してた、人が、お利口にしてたルルに、とやかく言わない……」
「うっ……はい、すみません……」
僕の言葉を聞いたアンナが叱られた犬のようにしょげた。
垂れ下がった耳や尻尾を幻視するくらいに。
一瞬、可愛そうかな、と思ったけど、アンナの自業自得だったと思い直した。
「……もう、帰っても、いい……?」
ルネリアに尋ねる。
「あ、はい。用はもう終わってるので、どうぞ」
ルネリアの許可を得た僕は、ルルを伴ってルネリアの部屋を出た。
アンナを置いて。
だって、付いてこなかったんだから、仕方ない。
それに、ちゃんと反省してほしいし。
というわけで、僕とルルだけでアンナの屋敷に向かった。
◆
アンナの屋敷の門の前まで来たところで、はたと気づいた。
――このままルルを連れてって、大丈夫かな?
と。
なにせ、知らない吸血鬼と一緒に帰ってきたのだから、門番のあの人が勘違いしかねない。
そんな不安を抱えながら門に近づく。
「お帰りなさいませ、ティアナ様。そちらの吸血鬼は……」
ルルを訝しげに見る門番の人。
どう答えようかと迷った矢先にルルが答えた。
「私はルル。ティアナさんの妹としてこちらでお世話になることになりました。人間に危害を加えることはティアナさんに誓ってありません」
えっ、それで納得するの?
「そうですか。でしたら安心です。どうぞお入りください」
あっさりと納得した門番の人が門を開けてしまった。
――えっ、納得しちゃうの?
そう思わずにはいられないくらいあっさりで驚いた。
これでいいんだろうか? と思いながら門をくぐった。
「お姉様、勝手にお名前を使ってしまって、すみませんでした」
「……それは、いいけど……あの、門番の人、僕に信頼、寄せ過ぎ、じゃない……?」
「お姉様は世界一可愛いですから、あの人間の男もお姉様のことをお慕いしているんですよ、きっと」
鏡で見れないからなんとも言えないけど、世界一可愛いってそんなことあるだろうか。
過大評価な気がするんだけど……。
でも、今のところ、会った女性全員から可愛いと言われてるから、まだ決めつけるのは早い、かな……?
それでも世界一は言いすぎだと思うけど。
そんなことを思いながら、屋敷の中に入った。
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