コミュ障吸血鬼、売り込みを受ける
屋敷に入り、僕の部屋に向かう。
部屋に入ると、僕はベッドにダイブした。
体力的にはまったく元気なんだけど、精神的にはものすごく疲れた。
主に、あの二人のせいで。
「はぁ……」
「お姉様。お疲れでしょうから、私の血を吸ってください」
「……うん、ありがとう………………えっ!?」
飛び起きる。
思考が回ってなくてさらっと返事しちゃったけど、今とんでもないこと言ったよね!?
「吸血鬼同士であれば契約を結ばなくて済みますし、飲めば精神的な疲れも取れますよ」
そんなニッコリしながら言われても……ちょっと抵抗がある。
「さぁ、どうぞ? 今回のお姉様の疲れの原因は私にありますし、お姉様からの罰を受けていないので」
もっともらしい理由を言ってきた……!
だ、だとしても、べつにそこまでして回復させたいわけじゃないし……。
「お姉様。さぁ」
――あぁ、もうっ、首筋を差し出さないでよ!
わざわざ髪をどけて首筋を見せてくるルルに向けて心の中で叫ぶ。
僕は、血を吸うなんて蚊みたいなことをしたくて吸血鬼になったんじゃない。
食事不要で不老不死だから吸血鬼になったんだ。
不老不死には欠点とかあるけど、灰にならなければ欠点はあってないようなもの。
って、今はそこじゃない。
とにかく、血を吸うなんてことは絶対にしたくない。
けど、当然ながらそんな気持ちをルルが知っているはずはなく、今もドンと来いと言いたげに首筋を晒している。
「……いらない……」
「な、なんでですか!? 疲れが取れますよ? 私の血、クルーミーで美味しいですよ? どうですか!」
まるで売り込みをするように自分の血を勧めてくる。
いや、どうですか! って言われても……。
嫌なものは嫌なので、
「……いらない……」
とだけ言う。
というか、クルーミーって……自分の血、舐めたことあるの?
「な、なら、手首を切ってカップに入れれば飲んでくれますか? それならいいですよね?」
「……生々しいから、やだ……」
そもそも、そういう問題じゃない。
「見せないようにやります! それに、今なら肩揉みもしますし、今後のお姉様の身の回りのお世話だってします。お願いします、飲んでください!」
どんどん売り込みをしてくるなぁ。
どんだけ自分の血を僕に飲ませたいんだ……。
「……いらない……」
「う、うぅ、なんでですか? なにがいけないんですか? 私はお姉様に疲れを取ってもらいたいだけなのに……」
うわっ、泣き落としまで使ってきた……。
ちょっとだけ、飲んでもいいかな? って思っちゃったじゃないか。
そこまでして飲ませたい理由はなんなんだろう。
今言ったことが本当の理由なのか、それとも建前でべつの理由があるのか……。
「……なんで、そんなに、飲んでほしいの……?」
「なんでって、それはもちろん、お姉様に元気になってほしいからです! 罰を与えてほしいというのもありますけど、お姉様に元気になってほしい方が本音です!」
フンスフンスと鼻を鳴らしながらそう断言した。
それは、まぁ、有り難いけど……。
やっぱり、血を飲むっていうのはしたくない。
他になにか、ルルが満足しそうな方法は……
――あっ! これだ!
閃いた僕は、
「……じゃあ――して……?」
そうルルにお願いした。
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