コミュ障吸血鬼、関係性を考える
このくだらない話はいつ終わるんだろうかと呆れていると、ルルが入ってきた。
「さっきから聞いていれば……お姉様の意見も聞かず勝手に話を進めてるんじゃないわよ!」
お、おぉ、ルルって意外とまとも……
「誰が一番好きなのか、聞けば良いのよ!」
じゃなかった。
そんな限定的な質問じゃなくて、どうしたいかを聞くべきなんじゃないの?
僕が言うことじゃないけど。
「なるほど! で、ティアナさんはこの中で誰が一番好き?」
「誰なの、ティアナ?」
「誰ですか、お姉様?」
3人に一斉に詰め寄られる。
全然わかってない。
僕はべつに誰のことも好きじゃないし嫌いでもない。
話の流れからして恋愛感情の好きなんだろうけど、誰にも恋愛感情は抱いてない。
そもそも今の僕は、女の子、だし。
僕にそっち系の性癖はない。
それに、男性との結婚すらも考えてないしするつもりも無い。
それでも、強いて言うなら……
「……友達、お姉ちゃん、妹……としてなら好き……」
かな。
「お姉ちゃん……それはそれでありだわ!」
「お姉様……! これからは妹として傍にいさせていただきます!」
「……えっ、ちょっと、ティアナさん!? なんで私だけただの友達!? 家族ポジションないの!?」
「……友達、じゃ、ないの……?」
前世も含めて人生初の友達ができたと思ったのに……。
「友達です! 私、ルネリアは、ティアナさんの友達です! だからそんな暗い顔しないで!」
「……よかった」
『!? ティアナ(さん)(お姉様)が、笑った!?』
えっ? 安堵はしたけど、笑ったつもりは全くなかったんだけど?
「んぁー! スマホがあったら今の表情を永久保存できたのに……! 無念!」
「ティアナの笑顔をまた見れるなんて……! グッジョブですよ、陛下!」
「アンナ、今、またって言ったよね!? またって! どういうことなの!?」
「陛下に教える義理はありません。あなたはただの〝友達〟なのでしょう?」
「〜〜〜〜〜〜ッ!? ……私を、怒らせたな……?」
「陛下が怒ったところでたかが知れてますので、どうぞ勝手に怒ってください」
アンナとルネリアが喧嘩(?)を始めてしまったけど、僕にはどうでもいいことで止める気にならない。
「こ、こんな破壊力のある笑顔をするお姉様を、私は……。お姉様! 私、一生……いえ、永遠に、お姉様に付いていきます! 妹として! それから、悪いことも二度としません! お姉様に危険が及んだなら、たとえ日の中聖水の中、胸に杭を打たれようとも、どんな状況になっても、お姉様を守ります!」
ルルはルルで面倒くさいことを言い出した。
「……え、えっと……ありがとう……?」
「はい!」
いや、こんな返事でいいんだろうか?
そう思ったけど、もう言ってしまったしルルはものすごく良い返事をしてしまったから、時すでに遅しだ。
今更気づいたんだけど、なんで僕の周りには変わった人が集まるんだろうか……。(しかも女)
異世界物でハーレムとかあるけど、今の僕は女の子だから、女の子ばかり集まってくるのは、なんか違う気がする。
普通なら逆ハーレムが妥当だと思う。
まぁ、男が集まったら集まったらで、十中八九〝中身男なんだけど〟って思うから、この状況でよかった……はず。
言い切れないのは、この3人がどこかしらおかしいから。
アンナは言わずもがな、ルネリアは百合が大好き、ルルは可愛い子好き。
……あとはリオナか。
リオナは……あれ? リオナのおかしいところって、どこ?
強いて言うなら、告白紛いな言葉を言ったこと?
最初会ったときは、男口調で僕を殺そうとしたりしたけど、今は普通の女の子だし変わった性癖はなかったはず。
やっぱり、リオナが一番常識人だ。
かと言って好きかと言われれば、3人に対して答えたのと同じ答えを返す。
リオナは……アンナと同じでお姉ちゃん、かな?
リオナが一番上で、次がアンナ、その次が僕で、最後がルル。
年齢で言えば一番上はリオナじゃなくてアンナだけど、性格の問題でリオナが一番上。
性癖的な意味で言えば、リオナが一番安心できる。
なにせ、僕に見せていないから。
「……様? ……姉様? お姉様っ!」
ルルの呼び声で我に返る。
「……な、なに……?」
「そろそろ、止めたほうがいいのでは……?」
そう言ってルルが指差す方を見ると、アンナとルネリアの喧嘩(?)が取っ組み合いに進化していた。
はぁ……。
僕は、ため息をつきつつ、二人の間に入った。
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