コミュ障吸血鬼、打ち明けられる
話がまとまり解散となったため、僕は言われた通りに女王の執務室を訪ねた。
執務室に入ると、椅子に座って未だに書類の山が乗っている机に肘を立てて手を組み偉い人がよくするポーズで出迎えられた。
どことなく雰囲気が重い。
……いったい、なんの話をされるんだろう?
ビクビクしながら社長机の手前に用意されていた椅子に座る。
誰かと目を合わせることはできない僕は、椅子に座ると同時に俯く。
「ティアナさん」
「!?」
呼ばれただけなのに体が跳ねた。
「そ、そんなに緊張しなくても、べつにとって食いはしないですよ? 今回お呼び立てしたのは、私のことを知ってもらうためです」
えっ、この国の女王なんじゃないの?
それ以外ないでしょ?
「私の本名……というか、前世での名前は
「!?」
それを聞いた僕は思わず女王を見る。
「そう、あなたと同じ転生者。洞窟で最初会ったときビックリしたんだよ? アンナに下りた神託にあった吸血鬼が転生者で、しかも同じ元日本人だったんだから。あなたの前世での名前は?」
急にフレンドリーな話し方をされたことに戸惑いながらも答える。
「……
「えっ、さやまたいき? 本当に?」
「? ……うん」
佐山太輝だから頷く。
知り合いだったっけ?
「○△高校一年C組出席番号18番だった?」
えっ、なんで知ってるの? 怖い。
もしかして、
エスパーって超能力者って意味だったっけ?
……まぁ、いっか。
そんなことよりも、なんでこの人は僕の前世のプライバシーを言い当てられたかの方がよっぽど重要。
「……そ、そう、だけど……なんで?」
「! じゃあ、やっぱり佐山くんなんだ! でも、よく考えたらあなたの言動は佐山くんそっくりだった。んぁー、全然気づかなかった……!」
髪をくしゃくしゃと掻き回して悔しそうにする女王。
「……知り合い?」
「あっ、そっか、佐山くん、クラスではずっとひとりぼっちですごしてたもんね。一応、クラスメイトだったんだよ? そうそう、隣の席だったこともあったっけ」
「!? ……ご、ごめんなさい」
「う、ううん! 全然、謝る必要なんかないよ! でもそっか、佐山くんがティアナさんなんだね……。可愛すぎだし、破壊力半端ないし、佐山くんって、本当は女の子だったんじゃないの?」
「!?」
直球でそんなことを言われた僕は、驚きながらも全力で首を横に振って否定する。
僕は絶対に男だった!
「ハハハ、冗談だよ冗談。じゃあ、これからもよろしくね。ティアナさん」
そう言って手を差し出してきた。
握手かなと思って手を握ろうとしたその時、
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
と、叫びながら扉を勢いよく開けて入ってきた。
アンナが。
ずかずかと入ってきたアンナが女王から引き離すように僕を抱き上げる。
「ちょっとアンナ、なんで邪魔するの?」
「前世での繋がりがあったようですが、ティアナは私のティアナなので、たとえ元初恋の人だろうとあげませんよ?」
えっ、僕が?
「ちょっ、それは言わないで!? ティアナさん、いや、佐山くん、違うからね!? アンナの勘違いだから!」
「○△高校で同じクラスの出席番号18の佐山太輝くんのことが好きだったって言ってましたよね? コミュニケーションが苦手だけど、学校随一のイケメンだったとか掃除の時間は誰よりも真面目に掃除してるところがカッコよかったとか他にも色々……」
「うぎゃぁぁぁぁ!? や、やめてっ、もうやめてっ! 恥ずかしすぎるっ」
顔を真っ赤にしながら懇願する女王。
というか、掃除は確かに真面目にやってたけど、学校随一のイケメンは言い過ぎじゃないかな?
そんなことなかったと思うんだけど。
「はぁ、もうっ、そうだよ! 好きだったよ! 佐山くんのこと! だからなに? 好きになっちゃいけないの?」
開き直った上に逆ギレし始めた!?
「……アンナ、降ろして」
「ティアナ?」
「……降ろして」
「……わかった」
アンナに降ろしてもらい、座り込んでいる女王の前に立つ。
そして、女王の頭を撫でる。
「佐、山、くん?」
「……その、好きになってくれたことは、嬉しい、けど……今は女の子だから……友達として……仲良く、しよ?」
そう言うと、女王が抱きついてきた。
「佐山くん……いや、ティアナさん! あなたは天使……いや、女神だよ! こうなったら法律で同性婚を認めさせて……」
女王がそこまで言ったところで後ろから僕が引き抜かれた。
「ダメです。その法律は是非とも作ってほしいですが、ティアナは私のティアナだって言いましたよね? というか、陛下には世継ぎを産んでもらわないといけないんですから、いい加減伴侶を見つけてください」
「ぐぬぬ……それを言われると、反論できない……!」
変態なアンナが女王を説き伏せてる!?
真面目な会話もできるんだ……。
「て、ティアナ? なんでそんな子の成長を見る母親のような目をしてるの?」
「……アンナが、真面目な会話、してるから……」
「ブフッ!」
僕がそう言うと、女王が吹き出し、
「わ、私だって、真面目な会話くらいできるわよ……!」
アンナのツッコミが執務室に響いたのだった。
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