コミュ障吸血鬼、呼び出しをくらう


 僕が不安がっているとも知らず、アンナは僕のところに戻ってくるなり、


「これであの人がティアナになにかしてくることはないわ。だから、安心してね?」


 と、そう言ってきた。

 思うべきではないのはわかってるんだけど、こうやってアンナに言われると安心してしまう。


「コホン。ともかく、吸血鬼の今後については決まったということにします。次に、勇者の末裔達についてです」


 女王がそう言うと、リオナを先頭に北村の人達が前に出た。


「なんと! それは、100年前に召喚された勇者様の子孫のことですか!」

「えぇ、そうです。その勇者の末裔達ですが、この国に住まわせようと思います」

『!?』


 聞いていたその場の全員が驚いた。

 だって、次の魔王になるかもしれないと噂されていた勇者の末裔を国に住まわせると言ったんだから。


「100年です。100年もの間、人々に知られることなく隠れて生きてきたのです。そろそろ変わってもいい頃でしょう」

「恐れながら!」


 そう言って前に出たのはリオナだった。


「恐れながら、私達はあの村が故郷なのです。その故郷で過ごすことが、私達の生きる道です。どうかこのまま、私達をあの村に住まわせてください」


 それを聞いた女王が北村の人達に視線を送る。

 それに対し、北村の人達は全員一致で首を縦に振った。

 ……待って?

 リオナは今、なんて言った……?

 確か、「私達を」って言ってたよね?

 もしかして、リオナ帰っちゃうの?

 そう思った僕は反射的にアンナのマントを引っ張っていた。


「ん? ティアナ、どうしたの?」

「……リオナ、帰っちゃうの?」

「一週間だけね。ティアナ、あの子に罰として一週間口利かないって言ったんでしょう? だから、その間だけ村の人達と過ごして別れを済ましてくるって言ってたわよ?」

「そう、なんだ……」

「もしかして、寂しいの?」

「全然」

「即答!? それはちょっと、可哀想じゃない?」

「た、だって……その……アンナがいるから……」


 ハッ!? 僕はいったいなにを言って……!?

 い、いや、でも、アンナがいると安心できるのは確かだし……。


「も、もうっ、ティアナったら! どうせ冗談なんでしょう? 私のこと変態としか思ってないんでしょう?」


 確かに変態だとは思ってるけど、それはそれ、これはこれ。

 これに関しては本当に咄嗟に出た言葉だから、僕の本心であることは間違いない。

 変態だけど……。


「もう、冗談に決まってるでしょう? そんな不機嫌そうな顔しないで? 私はティアナにどう思われようとティアナになにを言われようと、私はティアナのことを嫌いになったりしないから」


 そう言って僕の頭を撫でるアンナ。

 それがなんだか照れ臭くて、僕は俯いた。

 俯いた先には、ルルの顔があった。

 バッチリと目が合う。


「お姉様、照れてるんですか? 可愛いですね」

「えっ、ティアナ、照れてるの? ちょっと顔を見せて?」

「はいそこ、話の最中にどさくさに紛れてティアナさんに迫らないように」

「「あ"?」」

「凄んでもダメです。はぁ……まぁ、それはさておき、ティアナさん」


 ……えっ、僕?


「後でお話があります。お一人で私の執務室に来てください」


 ……………えっ?


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