コミュ障吸血鬼、身の危険を感じる
あれから、僕の予想通り、アンナは8回同じ歌を唄った。
その間、僕の怒りゲージは上がりっぱなし。
無意識のうちに頬を膨らませるほど。
それに気づいたのは、リオナに心配されたからだった。
「どうしたんだ? そんなに頬を膨らませて」
言われて自分が頬を膨らませていることを自覚した途端、恥ずかしくなってソファーに顔をうずめる。
なんで!? こんなこと、前世では一回もなかったはずなのに! (※ほとんど人と接してなかったから)
恥ずかしすぎる……!
穴があったら入りたい!
比喩じゃなくて、本当に入りたいから、誰か掘って!
羞恥心で顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。
……もういい、アンナの罰、さっき2週間に延ばしたけど、3週間に延ばす。
「ティアナ! 服10着持ってきたわよ!」
アンナが戻ってきた。
妙にルンルンな感じだけど、その持ってる10着の服、僕着ないからね?
「見てティアナ! これ、私が昔着てた服なのよ!」
「……着ない」
僕が呟くと、アンナの動きがピタッと止まった。
「……えっ? ティアナ、今、なんて言ったの……?」
「運任せで、選んだ服なんて……着ないからね?」
「それは違うわ、ティアナ。運任せで選んだのはその通りだけれど、どの服もティアナに似合いそうで決めあぐねたから、取り敢えずの10着を決めようとして、その10着すら自分で決められなかったから、運任せになったの。決して適当に選んだわけではないわ」
一応筋は通ってるけど、言い訳に聞こえなくもない。
まぁ、僕が聞いたのは選んでるところだけだから、〝運任せで10着を適当に選んだ〟と決めつけるのがよくないってことはわかってる。
それでも疑わずにはいられない僕は、アンナのことをジーッと見詰める……ことはできないので、首を傾げて疑っていますアピールをする。
「可愛い……じゃなくて! 本当よ、本当に適当に選んだわけじゃないの! 信じて、ティアナ!」
そう言って僕の手を両手で包んできた。
思わずアンナの顔を見る。
真剣な顔つきで、真っ直ぐに僕を見詰めている。
それを見て、確信した。
アンナは嘘をついていない、と。
「……わかった。その服は、もらう……」
「本当!? よかっ……」
「でも……僕の心が、傷ついたから……お風呂、一緒に入れないの、二週間に延ばす」
「えぇ!? なんで!? どこがいけなかったの!?」
「そりゃあ、そんな選び方をすれば、自分のことそんなに大事に思ってないのかもって思うだろ」
リオナの言葉に、カミナリを撃たれたようによろめき、膝から崩れ落ちて四つん這いになるアンナ。
「そ、そんな、ティアナのためによかれと思ってしたのに……そんなことって……」
勘違いで犯行に及んだ犯人が、勘違いに気づいて後悔した時のような文言を呟くアンナ。
まぁ、アンナの言葉から察するに、勘違いじゃなくて僕に対する想いが強すぎて服を選ぶことができなかっただけってことなんだろうけど……。
そう思うと、なんだか自然と頬が緩む。
「ティアナ! 私、ティアナのことちゃんと大切だと思ってるわよ!? 本当よ!? 嘘だと思うなら私の体を好きにしてくれて構わないわ!」
「いや、それはお前がしてほしいだけだろ、変態が」
腕を広げ、受け入れ態勢は整ってますよアピールをしてくるアンナに対し、ツッコミを入れるリオナ。
いや、アンナを見る目が冷たいから、ツッコミというより、蔑んでるって言う方が正しいかな?
「なによ! じゃあ、あなたはティアナの可愛さに欲情しないって言うの!?」
「そもそもそれがおかしいだろ! 女同士なんだぞ!?」
「いいじゃない、女同士でも。こんなに可愛いのよ? 喘ぐ姿を見たいと思うのは普通のことでしょう?」
「いや、思う方が異常だろ! やっぱお前変態だわ」
リオナの言葉に、僕が〝うんうん〟と首を縦に振る。
「そんなっ、ティアナまで……!? 嘘よ……女同士でイチャつくのは普通だって、
アンナが変態になったのは女王のせいか。
女王も変わった性癖の持ち主みたいだ。
それにしても、今後アンナに襲われたりしない……よね?
寝ている間とかに襲われたら一巻の終わりなんだけど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます