第13話海は刺激的で 3
「パンは魚焼きグリルで焼くと美味しく焼けるのよ!」
「パンの上にシーチキンとマヨネーズとネギのみじん切りをのせて焼くと美味しいんだぞ。」
初瀬川兄妹は、二日目は朝からテンションが高かった。
「紅茶を入れる時のお湯の温度は、あ、蒸気が噴き出しそうだ、これがちょうどいい頃合い。」
「ミルクティーは、暖めた牛乳に紅茶を入れるのよ。」
二人のというか、
「うちの親父のこだわりなのよね。変なところが似ちゃって、もう~。」
真木は家の恥のように溜息を漏らした。それをよそに、二人の“快進撃”は続いた。後片づけが終わると姉を引っ張るように出て行って海で一泳ぎ、そして、皆が休んでいる中で、昼のバーベキューの肉や野菜の買い出しに。
「駄目だよ。野菜も肉も買いすぎは。誰かが食べるだろうからは、食品ロスの第一歩。自分が食べられる量で考えなきゃ。」
「野菜を取らなきゃ、なんて言って買うのに限って自分は食べないものさ。足りなかったら、夕食で調整すればいい。」
近くのスーパーでも、二人は五月蠅かった。ついてきた黒田と白瓜は、苦笑しながら、大人しく従ってはいたが、少し仕返ししてやろうと思っていた。
「昨日の夜のあの二人は誰だったのかな?」
「あなた方、手をつないで、あれからどうしたの?」
初瀬川兄妹は、ぐっと詰まった。
「何の話し?それに、…、黒田と白瓜さあ、お前達つきあっていたのか?」
やはりついてきた耳成が、二人の手を見て言った。二人は、はっとした。手を自然につないでいた。玉輝はなんか言ってやろうと思ったが、昨晩の自分達のことをぶり返されると困るので、やめることにした。
「しかし、あのカップルは大胆だったな。もしかしたら、見られるのを期待していたのかな?」
話題をそらせた。
「そうだったら、立ち去らなかった方がよかったかもな。」
「もう、兄さんは変態ね。」
「男なんかそんなものよ。」
「え?え?なんの話し?」
耳成が、4人の顔をキョロキョロと見まわして、好奇心炸裂しかけている状態になって尋ねた。初瀬川兄と黒田が、少し誇張して説明した。女二人は、わざと不機嫌そうな顔をして、じっと聴いていた。初瀬川兄妹は、その間もずっと手をつないだままの黒田と白瓜を初瀬川兄妹は、羨ましげな視線を、チラッと向けた。真っ赤になって興奮した耳成は、コテージに帰ると、そのことを皆に吹聴したそして、全員がそのことに夢中にになった。この中にいるんじゃないか、と言ってみんなに非難されるのもでる始末だった。それをよそに、バーベキューの下準備をする初瀬川兄妹は、“人前で手をつなぐのが、羨ましいと思うなんて、ぼくも露出症かな。“私も、お兄ちゃんと人前で手をつなぎたいな。みせびらかしたいの、私?嫌だ。”
お互いをチラチラと見つつ、忙しく手を動かしていた。
「お姉さんは、うちの姉て一緒に食器を並べて下さい、とりあえず!」
八重山弟が悲鳴をあげた。
「何か、とっても邪険というか、邪魔者扱いされたような。」
「本当!失礼しちゃうわね。後で、しっかりと説教してやるからね。」
そういって、刺激的な水着を着た、魅力的な後ろ姿をみせつけながら、食器を持って、上下を揺らしながら離れていった。初瀬川兄妹や香具達食事係は、大きなため息をつく八重山弟を見て、声を押し殺して笑っていた。
「お姉ちゃんも、八重山さんも、白瓜さんも魅力的よね!」
小さな声で、きつい視線を向けて、責めるような口調で言った。
「3人とも魅力的なのは確かだけど、鏡華は反則的に魅力がありすぎだよ。」
前半部分に目つきが、一段と厳しくなった鏡華だったが、後半には、だらしないというか、だら~とした目になりつつも、
「どうだか。鼻の下を伸ばして。」
とあくまで怒った風を保持していた。
「怒っている鏡華も、魅力的だよ。」
これに何か言おうとした時、
「何、こそこそやっているのかな?」
真木だった。二人のやり取りは中断した。
「あ、食べない分まで、タレに漬けない。」
「めったやたらに、焼かないの!自分が食べる分を考えて!他人の分だなんか言わないの!」
「あ!自分は食べないくせに、他人にすすめて、いっぱい焼かないの!残ったら、自己責任で食べてもらうぞ!」
初瀬川兄妹の小言に、皆は笑いながら聞き流しつつも、一応従っていた。初瀬川兄妹も、笑いながら、軽い調子で言っていた。その後は、初瀬川兄妹が中心に後片付け、午後の海岸での騒ぎとなった。初瀬川兄妹のハイテンションは更に続き、ビーチバレーで息の合ったプレーをし、遠泳し、イベントの準備も先頭にやり、夕食の支度も、昼間のバーベキューの残りを上手く使った料理を出して、皆を驚かせた。最後の夜の花火も支度から後片付けまで、二人は駆け回り、かつ、人一倍堪能していた。少なくとも、皆にはそう見えた。全ての喧噪が終わった後、二人はコテージのバルコニーの一つで、そこは人目がなかった、並んでたたずんでいた。
「お兄ちゃん。私の水着姿を余り見てくれなかった。」
ポツリと鏡華が、不満そうに口に出したのは、二人きりになってから少したってからだった。分かってはいるが、どうしても兄を困らせたい気持が出てしまった。彼女は少し後悔はした。しかし、兄が予想した反論を言わないどころか、無言なのに少し焦った。自分の胸を少し、兄の腕に擦りつけてみた。すると、玉輝が口をようやく開いた。そこから出てきたのは、やはり予想とは異なるものだった。
「鏡華。お前の水着姿を見ているとどうしようもない感情を我慢できなくなりそうで怖くなったんだよ。昨日、お前が絡まれているのを見た時、ビビりながら、お前への…なんだ…、性欲を感じてしまったんだよ。」
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