第2話学校外では険悪ではないが

「仲は悪くはなさそうには見えないわね。」

 その声に驚いて皆が振り向いた。

 「何で生徒会長がいるんだ。」

 ショートカットの髪で小柄ながらかなりの美少女がいたが、その隣に長身のガッチリてしたスポーツ刈りの男がいた。その彼が、

「全くどうして、生徒会長がいるんだよ?」

「あんたこそ、何でついてきてるのよ!」

“どっちもだ!”

 初瀬川兄妹の方はというと、

「相変わらず仲がいいわね、いつも一緒に買い物して。」

と商店街の肉屋のおばさんにからかわれても、苦笑して

「荷物係に使われているだけですよ。」

「今日は、両親が帰ってくるから、美味しいお肉にしたいの。」

と受け答えていた。

 スーパーでも、お互い口喧嘩などをすることもなく、あれを買わないといけないとか、これがお得だとか相談して買っていた。

「なんか素っ気なくないか?」

「実の兄妹なんてものは、あんなものだってば。」

「仲が悪くない、普通の兄妹よ。」

「そんなものか?」

「そうだよ!」

「そうよ!」

 畝傍兄妹がハモるよう強調した。それでいて照れる訳でもなく、不機嫌になるわけでもない二人の態度に、皆は少し納得した。

「やっぱりジャガイモがないと、お父さん、好きだから。」

「母さんは、赤ピーマン、いやパプリカか。」

 初瀬川兄妹は、ああでもない、こうでもないと食材や調味料を選んで、玉輝が持つカゴに入れていった。

「新婚さんみたい。」

と白瓜が呟くと、黒田が肯いた。

「気持ち悪いことを言わないでよね。」

「身の毛がよだつから、悪い冗談は止めてくれ、頼むから。」

 聞き漏らさず、二人は息を合わせて、小さい声で抗議した。

「おい!勝手にそんなもの、おれのカゴに入れるな。お前の小遣いから出せよ!」

「だって、もうピンチなんだもん。可愛い妹のために買ってあげようと思わないの?」

「お前こそ、敬愛するお兄様のために、自分の小遣いを使おうとは思わないのか。」

「べー、だ。お断りよ。」

「姉さん!自分で食べたいものは、自分で買ってくれよ!」

「いいじゃない、硬いことは言わない。綺麗なお姉様に貢いでいいのよ。」

「嫌だ!しっかり者の弟に、ご褒美をくれ!」

「そんなことを言っていると、あのことをばらしちゃうよ。」

「うう…、いいよ、その代わり、あのことをばらしてやるから。」

「ぐぐ…。そんなことをいう子に育てたつもりはありません!」

「育てて貰った積もりはありません!」

 畝傍兄妹と八重山姉弟が争っているのが聞こえてきた。

「あっちのほうが仲が悪く見えるわね。」

「あれが普通、なのかな?」

 そうこうして、買い物を終え、初瀬川家へ向かう。学校から、歩いて40分、二人は歩いて通っている。買い物での遠回り分等を含めると、その倍以上時間がかかっている。自転車通学派は自転車を押して続いているのでかなり疲労気味だが、他の面々も結構疲れていた。

「毎日よく歩けるな。」

「慣れているからな。」

「まさか、その間中、口喧嘩しているわけではないでしょうね?」 

「そんなことはしていない。ちゃんと自制しているよ。」

「口をきかないで、我慢しているわ。」

「それで、学校で爆発していると。」

 初瀬川兄妹は、顔を見合わせて、

「そう思ったことはないが、そうかもな。」

「きっとそうよ!クソ兄貴と並んで歩くなんて拷問を40分もだもの。」

「そりゃあ、悪かったね。」

「ふん!」

 二人はそっぽを向いた。

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