第23の扉  ダンジョン攻略戦その5

※※※※


「フ、防御だけでは俺を倒すことなど、不可能!」

「くっそ!」


 『カッコイイ決めポーズ対決』に引き分けた俺たちは、実力で勝負することとなり今に至る。


 ひゅんっ、ひゅんっ!


 俺は敵の弓矢の嵐に苦戦していた。敵の矢は戦闘開始から一向に止む気配を見せない。鋭い攻撃達がずっと俺を襲う。

 しかもただの弓矢の攻撃じゃない。矢一本一本に魔力を乗せて攻撃してやがる。shieldシールドで何とか防いでいるけど、当たる一本一本がすさまじく重い。腕で支えているけどもう限界だ。


 なんなんだよ、こいつ。どれだけ魔力持っているんだよ。そろそろ威力が弱まるかと思ってたのに。

 どうすれば、いいんだ……


「我を包み込め、leaf domeリーフドーム!」


 俺は葉でドームを作り、自分の周りを360度包み込む。消費魔力はこっちの方が大きいけど、shieldシールドと違って腕で支えなくていいから楽だ。もう腕がジンジンしてたんだよ。


「……」


 さて、今は何とか防ぐことができているが、どうしたものか。あいつの言う通り、攻撃ができなければこの勝負に勝つことなんてできない。


 俺はちらりと葉のすき間から敵の様子をうかがう。カッコイイポーズを披露し、技を放っていた。

 くっそ、なんだよ、あのポーズ。めちゃくちゃカッコいいじゃないか!

 俺もたくさんポーズ考えたんだぞ! 披露したい!


 あ、そうじゃない、今はダメだ。ちゃんと考えねば……


 はっ! よく見たらあいつ、服もカッコイイではないかっ!

 なんかキラキラしているチェーンが腰についてるぅ!!!

 し、しかも、マントをひらひらとなびかせている、だ、と……


 ふむ、後ほど桜木に俺の服にもチェーンやマントをつけれないか交渉してみるか。






「……」


 あ、しまった、桜木だ。そうだ、今はあいつを助けるんだった。

 ふぅ、相手の罠にまんまとはまるところだったぜ。ああやって、かっこよく俺を惑わしているんだろう? お前の技、見切ったぜ、キラーン。


「コホン」


 俺は咳ばらいを一つして、心を落ち着ける。何とかこの状況を解決せねばならんのだ。

 だけど、この状況を打破できる秘策なんて……


『相手の呼吸をよんで』

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「塩酸か?」

「ソウ。オレノミズ、イタイヨ」


 敵が放った水が俺の服に当たり溶けた。相手は余裕の表情で不気味な雰囲気を纏ったまま。


 厄介だな、溶ける……

 それに加えて、服が解けた下の皮膚がひりひりと焼けるように痛い。流石塩酸。


「ハヤクシナイト、ゼンブトカス」


 敵は次々と俺に塩酸を投げつけてくる。その攻撃は一向に弱まらない。


「盾となれ、waterウォーター shieldシールド


 俺はそれを防ぐことで精一杯になっており反撃ができない。幸い相手の塩酸はshieldシールドで防ぐことができているが、これもいつまでもつか分からない。確実にあいつは俺よりも魔力の量が上だ。時間をかけすぎると、俺の魔力がなくなってしまう。

 今の俺ではshieldシールドを展開しながら他の技を繰り出すなんて器用な真似はできない。反撃するにはこれを消さなくてはいけない。そんなことをすれば確実に俺が溶ける……


 どうしたらいい……

 早くしないと桜木が大変なのに。


 俺の頭に桜木の顔が浮かんでくる。


『魔法は想像力だよ』

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「全然敵わない」

「強すぎる……」


 ウチと美羽は敵の攻撃に吹き飛ばされてしまっていた。さっきからどんどん攻撃しているのに、相手には全く効いている気配がない。


「君たちね、まずお互いの相性が悪いよ。熱と氷でしょ?」


 確かに敵の言うとおり。ウチと美羽だと属性が真逆。お互いの攻撃が邪魔をしてしまってるんだ。

 ウチと美羽の力単独だと到底こいつには敵わない。それほどに魔力の量、戦いの経験値が違いすぎる。だから連携攻撃で相手を倒そうと攻撃していたんだけど、それが裏目に出てしまった。

 どうしたらいいの……


「これは僕の圧勝かな」


 敵は余裕の表情を見せている。もう! なんか、腹が立ってきた。


 あー。ダメダメ、冷静にならないと


 ウチはぶんぶんと頭を振り、心を落ち着かせようとする。

 いつも剣道の時でもそうだ。自分のペースでやらなくちゃ負ける。相手のペースに持っていかれたらダメ。


 ウチはちらりと隣にいる美羽を見る。

 

 大丈夫、ウチは一人じゃない。隣に美羽もいてくれるんだ。早くしないと、風花が大変なんだから。こんなやつに構っている時間はない。


「……」


 美羽の目はまだ死んでない。ウチも絶対にあきらめない。風花を助けるんだから。


『油断しないで、最後まであきらめなかったら勝機はある』

 __________________



 キンキンと、剣の交わる音が響く。


「お前、やるな。俺と互角か……」

「光栄です……」


 私は目の前の番人に苦戦を強いられています。

 早く翼さんに追いつかなくてはいけないというのに。とても焦っています。姫の一大事なのです。時間がないのです。


 私は姫を何としてでもお守りしなければなりません。王様より授かった任務です。

 それに何より私が姫を失うのは嫌なのです。だから早く私にやられてほしいものです。


 しかし、相手もなかなかの強さです。さっきから私の剣を弾いてしまいます。どうしたらよいのでしょうか……



『焦らなくていいから、落ち着いて』


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「くそっ」


 僕は薬の部屋を目の前にして苦戦していた。


「ふふん、早くしないと後ろのお友だちが死んでしまうわね」

fire shotファイヤーショット!」


 敵は余裕の表情で僕の攻撃をあしらう。

 どうしたらいいんだ…… 薬の部屋は目の前なのに……

 やっぱり僕は弱い。さっきから精いっぱい技を発動しているのに全然敵わない。火練さんの力をうまく使いこなせていないんだ。


 悔しくて、情けなくて、杖を握る腕に力が入る。そんな僕の様子を見て、敵がにやりと微笑んだ。


「そろそろ終わりにしましょうか」

「え?」


 そう言うと、敵は一気に僕との距離を詰めてきた。僕の目の前までふわりとやってくると、首元を掴んで持ち上げる。


「ぐっ……」


 苦しくて声が漏れる。敵の手を振りほどこうともがくけど、軽くあしらわれてしまった。全く歯が立たない。力の差が大きすぎる。

 僕は後ろで木にもたれたままの桜木さんを見る。



 ダメだ、僕が勝たないと桜木さんが。みんなが託してくれたのに……



「さようなら」


 敵は僕にとどめをさそうと手を上げた。彼女の手はきらりと光るナイフが握られている。


(やられるっ!)


 僕はギュっと目を閉じた。












 翼の後ろでは風花が静かに目をあける。

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