第24の扉 ダンジョン攻略戦その6
※※※※
俺は葉の壁の中に潜りながら桜木の言葉を思い出し、相手の呼吸をよんでいた。
「フ、お前の盾も限界のようだな」
敵は相変わらずカッコいいポーズで攻撃をしてきている。マントをひらひらさせながら……
俺もそれやりたい! くっそ、マントカッコイイな。俺も欲しい!!!
あっと、そうじゃないんだ。もっと重大なことがあるんだ。
俺はついに見つけた、この状況を打破できるかもしれない一手を。ふふふふふ。
俺は満面の笑みを携えて、その時を待つ。
弓矢の攻撃で壁はもうボロボロだ。あまり時間は残されていないようだな。
俺は決意すると葉の影から飛び出し、杖を変化させる。
「貫け、
杖が弓矢に変化し、葉の弦から何本もの矢が飛び出していく。俺の放った攻撃は、敵の矢を打ち落としながらまっすぐ進んでいった。
「フ、そんな攻撃効かぬわ!」
「ふ、それはどうかな?」
ヒュン、と心地よい音が響き、俺の矢が敵を貫いた。
「……ぐはっ!」
苦しそうな声をと共に敵が倒れる。その顔は不思議そうに俺を見つめていた。何が起きたか分からないようだな。
ふ、仕方がない、説明してやるか。
俺は今までで一番カッコイイ決めポーズで、倒れている敵の元へ歩み寄る。
「ふ、貴様の攻撃は単調なんだ。観察したら分かる。葉の壁に当たる角度とか、強さでな。だからお前の攻撃を見切ることなど容易い」
キラーン
ふ、決まった。ドヤァァァ
「フ、見事な弓矢の裁きだった」
訳)あなたは強いですね。僕の負けです
「ふ、貴様こそ我がライバルとして相応しい」
訳)あなたも強かったですよ
俺たちは握手をかわす。ふ、良い戦いだった。
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「オマエ、オレニハカテナイ」
敵は俺に塩酸攻撃を続けている。一向に威力が落ちないし、余裕の雰囲気は崩せない。
くっそ、何か方法があるはずだ…… 考えるんだ、そうしないと桜木が……
塩酸、酸? そうか、酸か!
「
俺はこの劣勢を変えられるかもしれない方法を思いついた。
だけどできるのか…… さっき練習していたのと同じ感覚でやればいけるか
水の盾で攻撃を防ぎながら俺は考える。頭の中に桜木の笑顔が浮かんできて、俺は決意を固めた。
やるしかないな……
「ドウシタ? アキラメタ?」
俺は水の盾を消し、全神経を集中させる。敵はそんな俺の様子を不審に思い首を傾げているが、攻撃の手は緩めてくれない。
「コレデオワリ。バイバイ」
敵は大きな塩酸の塊を作り、俺をのみこんだ。
「トケタ、オワッタ」
敵が勝利を確信し喜んでいると、中からシュー、シューと音が聞こえる。相手が疑問を感じ、首を傾げているとバンと塩酸の塊が割れた。
「イキテル? ナニシタ?」
「水酸化ナトリウムだよ。中和したんだ」
水酸化ナトリウム。アルカリ性の物質として有名だ。そして塩酸は強酸だ。それを中和するためにはアルカリ性の液体を用意するしかない。
俺は水を水酸化ナトリウムに変えたんだ。ダンジョン攻略戦の前の練習でお湯に変えれるのは実験済だった。
できないかと思ったけど、できて良かったよ。『魔法は想像力』だろ?
「あの塩酸の攻撃を普通に食らってたら、今頃どろどろに溶けていただろうな」
「ハハハ。ハジメテ、イキテルヤツ」
敵は驚いてポテンと地面に座り込んでしまった。
「俺の勝ちだな」
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「何回やっても同じことだよ? 痛い目をみるだけだからもう止めたら?」
敵は余裕の表情でウチ達の攻撃を軽くあしらっていく。ご丁寧に眠たそうな欠伸を添えて。戦闘中に欠伸するなんて、どんだけウチ達のことなめてるんだろう。絶対に痛い目見せてやる!
でも、打開策が見つからない。
早く行かないと、時間がないのに……
ウチの焦りはどんどん大きくなっていく。
「一葉ちゃん」
「ん?」
「上手くいくか分からないけど、一つ試したいことがある」
美羽が小声でウチに話しかけてきた。美羽の作戦を聞くと、ウチはにんまりと笑顔を浮かべる。
この子は天才なのかなと思ったね。
二人で手を繋ぎ、杖の先を敵に向けて構える。
「作戦会議はもういいの? 待っていてあげるのに」
「もういいよ」
「待っていてくれてありがとう」
ほんとに、その余裕の表情腹が立つ! まぁ、今回はそのおかけで勝てるから許してあげるけど
「君たちさっきの僕の話聞いていた? 相性が悪いんだよ?」
「そうだね、でも私たちにはこれしかできないから」
ウチと美羽は杖の先端にそれぞれ魔法を貯め始める。
「
「
「二人同時に攻撃をしかけたらお互いの属性で消し合ってしまうって言ってるでしょ?」
敵は呆れたように私たちに言葉を投げる。
うん、何回も聞いたからね。知ってる。だから
余裕の表情を見せ続ける敵は、ウチたちの仕掛けには気がつかない。
「!? これは!?」
敵が気付いたときにはもう遅い。
ウチは杖の先端から出さず、杖の下から地面をつたわらせて魔法を発動させたの。ふん、足元を氷漬けにしてやった!
「美羽、後は頼んだよ」
「任せて」
美羽は先ほどの術を発射せずに、杖の先端に巨体な魔力を貯めていた。巨大な熱の塊が敵を襲う。
「
「わーーー!!」
「油断してくれて、ありがと」
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キン、キン!
私と敵の剣が交わる音が響き続けます。さっきから両者一歩もひきません。
これではいつまで経っても決着がつきませんね。あれを使いますか……
私はいつまでも時間があるわけではありませんのでね
「ふぅ」
私はゆっくりと目を閉じ、剣を構える。と、剣は白色の光と黒色の光を纏います。
「!? 一体、何をした?」
「さぁ、なんでしょうね」
敵はいきなり
「ぐはっ!」
敵はパタリと倒れます。大丈夫、急所は外していますので、死んだりはしませんよ。
しかし、私の身体の負担も大きいようですね。
「はぁ……ぐっ……」
呼吸が不規則に乱れて、額に汗が吹き出します。今後は使い時を考えなくてはいけません。それに姫にこの力を見せるわけにはいきませんし……
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「もう終わりね、ぼうや」
僕は首もとを捕まれ、身体を持ち上げられる。
苦しい…… もう少しで薬が手に入るのに。なんとかしないと、このままだと……
「残念だったわね」
敵は僕に向かってナイフを突き刺そうと上に掲げる。衝撃に備えてぎゅっと目をつむった。
(やられるっ!)
ボンッ
え、何が起こったんだろう?
僕を掴む手がさっきの攻撃で緩んだ。その隙をつくしかない!
僕は無我夢中で攻撃を繰り出した。
「
真っ赤な炎を纏った僕の拳が、敵に届いた。
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