第5話 ツバサの幼い記憶

 第5話  ツバサの幼い記憶


 小さい子供は、外でよく遊ぶこと、よく寝ることが大事とされる。それは別に、日本一の財閥の娘でも借金がある家の子供でも変わらない。だから、小さい頃はよく外で遊んだ。麗華やアリスと3人で。アリスも麗華もそう考えたら、おままごとやお花遊びはあんまり好きではなかった気がする。どちらかといえば、3人で手を繋いで、近衛家の広いお屋敷を冒険していた。思えば、あの時からは3人とも大きく変わったものだ。


 小学校に入って、俺がサッカークラブに入ったあたりの時だったと思う。その時はまだまだ、3人一緒に楽しく遊ぶことも多かった。その日も確か、3人でお屋敷からそう遠く離れたところではないところで遊んでいた。いつも、俺らの様子を見てくれていた、執事のおじいちゃんがその日は、椅子に座って、熊みたいな外国人と話していたことを覚えている。でも、子供の俺たちにはそんなのはどっちでもよくて、それよりこの屋敷で行ったことのない場所は何処かと言うことや、屋敷の裏側にある小屋の中においてある沢山の銃の方が、大事だった。


 30分ほどした後、俺らの様子を見ていた熊のような外国人のおっさんは笑いながら、半ばふざけた口調で俺たちに命令した。


「お前ら、そこを走ってみろ。俺が才能があるかないか、見てやるよ。」


 そいつの顔にある縫合傷や丸太みたいな腕を見て、アリスは少し恐れたように俺の後ろに隠れて、俺もビビってないよと虚勢を張りながらも、貧乏ゆすりは止まらなかったし、体は完全にいつでも走り出せる体勢にしていた。


 だけど、麗華は違った。そいつは、自らの二倍以上の身長のあるそのハリスにトコトコと駆け寄っていくと言い放った。まるで、自分の方が偉いとでも言うように。


「おまえ、うざい。あっちいけよ。デブ。」


 俺ともう一人の幼馴染が震え上がったことは言うまでもない。アリスは顔に青筋を立てていたハリスに平謝りで謝り、俺は幼馴染の二人が自分を責めていることに唇をとんがらせて拗ねている麗華を説得した。それでも、こっちに向かってきたハリスから、逃げるために俺は麗華の手を引っ張って、二人して走った。


 とはいえ、小さい子が全力で走ったところで、たかが知れている。そこまで、距離は開かず、手を引っ張られて、走っていた麗華が道に躓いて転んだ。そして、明らかに、ハリスと麗華の距離が逃げられるものではないと悟った俺は麗華を背中で庇った。


 だけど、そいつは麗華を殴るわけでも、俺を食うわけでもなく、ただ楽しそうな顔をして、俺の頭に手を乗せると言ったのだ。


「おい、お前。これから毎日、俺の指導を受けろ。」


 そうして、俺は500両以上の戦車の破壊、300機以上の戦闘機の撃墜、そうして、8000人以上の撃破歴を持つ、世界最強の兵士ハリスの門下生になったのだった。

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